nyaro さんの感想・評価
3.5
物語 : 3.0
作画 : 4.5
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
「甘木唯子のツノと愛」の作者作成のMV。作画も内容もいいです。
少女のおでこから突然ツノが生えてくるといえば、私は「ルリドラゴン(2020)」よりも久野遥子さん「甘木唯子のツノと愛(2017)」でして、本作はその久野さんのタマビの卒業制作みたいです。ですので、タマビ公式のものがユーチューブで見ることができます。Cuusheという方のMVとして制作されたようです。
個人製作のアニメやMV、CMなどにもたまに侮れない水準のものがあります。そして、この作品は相当なレベルだと思います。
さて、病院なのかターミナルケア、ホスピスのための場所なのかよくわかりません。天井の扇風機と設備の機械化がほとんどされていないところから言って、昭和も前半なのかなあという気がします。
少女の看護をする看護婦(古い時代が舞台の作品なので婦と表現したほうがいいでしょう)のストーリーです。
黄色地の背景に白の使い方が印象的で看護婦さんという存在が非常に浮きたってきます。看護婦さんの様子が感情を抑えながら看病しているような雰囲気がします。
真ん中あたりで、赤と緑のチューブを鼻に突っ込んだウサギがでてきます。頭の電球は恐らく命の灯でしょう。
少女は画面からは頭の他に腕にも包帯を巻いているのでひょっとしら事故かもしれません。冒頭が火事のシーンですから。ただ、事故だとホスピスには世話にはならないでしょうから、この辺は良くわかりません。
そのあと、看護婦はリンゴを割ろうとします。それを医者が止めます。内部がまるで内臓…肺あるいは腎臓みたいな感じです。少女の苦しみを見ている看護婦が、自分の臓器提供を提案している?
そして、これはアニメを見る際には覚えておいたほうがいいのは「蝶々=魂」ということです。しかも、死んだ人間が魂となって漂っている…という感じです。「喰霊ゼロ」「すずめの戸締り」などでもこのモチーフが使われています。それとリンゴは生命を表すことがあります(「銀河鉄道の夜」「輪るピングドラム」など)。
突然色がつきます。これでおそらく看病している子が死んだのだと想像がつきます。なぜかといえば蝶々になるからです。
もともと蝶々が漂っているのを見せていたので、病院という場所は生死の狭間だという解釈ができます。一方で蝶々の多さから言って、やっぱりホスピスな感じもします…どっちでしょう?整合性なら病院かなあ。
で、おそらくは断末魔に少女は苦しんだのでしょう。怪獣のように暴れるイメージが来て、看護婦が地下に逃げる=霊安室かもしれません。
最後に少女は穏やかな顔で蝶々になって看護婦にキスをします。看護婦は一人の部屋で、泣くわけでは無いですが、悲し気にあるいは脱力して横になっていました。
アニメ作品としては短い中にドラマがあり、生命と死、看護婦という職業を良く表していました。また、当然タマビの卒業制作ですから、アートとして評価できる作品です。残念ながらどれくらいの水準かを語る素養はないですが、アニメとしての芸術性は高いレベルにあると思います。
なお、音楽は私の好みではないですが、悪くはないです。
追記 そうそう、冒頭の色が白っぽい背景から黄色に移ります。黄色=黄泉だとすると、看護婦がいるのは死後の世界あるいは生と死の狭間とみることもできます。
火事のようなシーンから地下に一旦視線が潜ります。そして、少女がリンゴを食べて、吐き出してしまいます。事故で生命が維持できないアナロジーに見えなくはないです。
私としては看護婦がいる病院は現実の世界の病院だ、と取りたいですが、黄泉と読み取るのも十分自然な解釈かなあという気がします。
再追記 あらすじ見たら、実験体だそうで。なるほど。読み間違いました。それが脳の後ろのパイプの意味ですか。私は画面から読み取れませんでした。キメラかあ…となると詩ではなくて一種のSFですねえ。