てとてと さんの感想・評価
4.2
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
ありがとうは高知の言葉。良質な本格ファンタジーの親子ドラマで名作の風格だが、徹底した人間批判が好みじゃない
web漫画原作のハイファンタジー。人間が絶滅に瀕し迫害される世界で、人間の少女とゴーレムの疑似親子が旅をする。
ハートフル路線だが残酷な気配も。
※作品データベース様より転載
【良い点】
ライト文芸ではない古典的なハイファンタジー(っぽい)世界観・雰囲気の魅力。
作画水準やBGMなどの演出が良好、往年の名作系ファンタジーを彷彿、更に絵的な魅力で2020年台アニメらしい洗練がある。
目的のあるロードムービーで見やすい。
無邪気にお父さんに懐くソマリちゃんの可愛らしさ。演者の水瀬いのり氏はやはり絶品。
危なっかしく純粋無垢な幼さも、後々重いバックボーンが語られて説得力がある。
機械生命体?で感情の機微に疎いゴーレムの不器用な父性愛が尊い。(いや、絶対感情あるだろ…)
疑似親子ドラマとしては王道で、どちらかというとゴーレムが父親として成長していく側面が良かった。
人間が絶滅寸前、それ以前に人間と他種族の確執などの不穏な気配が終始陰を落とし、ハートフル一辺倒ではない重みあり。
人間とバレたらヤバいという緊張感を終始生じさせていたり、過去の経緯が少しずつ明かされる興味深さなど、飽きさせない構成。
人間と他種族の確執は、ソマリとゴーレムそして関わる善良な他種族たちとのハートフルな交流の尊さを強調していた。
中盤の他種族の少女と人間の男性とのもう一組の疑似親子の悲劇的ドラマが壮絶、種として相容れぬ確執を超えた愛は強い印象を残した。
差別や排斥をアンチテーゼに据えて、疑似家族ドラマと不穏な展開両面で深み出している。
「直太朗じゃねーか!」「ありがとうは高知の言葉」などのネタを輩出したOPも良曲だが、水瀬いのり氏によるEDが特に素晴らしかった。
ソマリちゃんとゴーレムの尊いドラマが歌詞や曲調に凝縮、本編以上に涙腺に来る。曲が良くて名作感がある。
この他、ローザおばさんの柴田理恵氏の作中歌や語りも圧巻だった。
【悪い点】
世界観が陰鬱過ぎる。
終始、人間を一方的に悪と決め付けるのも、人間の自分としては納得いかん。
まあそこは勝者の歴史だったり、良い点で述べた通りソマリ&ゴーレム、ウゾイ&ハイトラ組の尊さを際立たせる効果はあるかもだけど、
魔女編の回想エピソードで完全に人間ってダメじゃねぇか評価が確定、終盤のローザおばさんの憎悪に正当性与えてしまっている。
(「ゼノンザード」の1話でも見た展開)
これらの視点が、ソマリとゴーレムのドラマにあんまり関係なくね?と思ってしまうのも釈然としない理由。
話に緊張感出したり、相対的に疑似親子の尊さ出す狙いなら良いんじゃないかと思うんだけど、
その効果以上に余計な不快要素を感じてしまう。特に魔女編の館長の回想エピは余計。
もう少し留飲が下がるというか、分かり易くポジティブな展望を示してほしかった。
物語が中途半端に終了。良質な作品なだけに、2クールは欲しかった。
【総合評価】7~8点
名作っぽい雰囲気やソマリちゃんとゴーレムの親子ドラマは非常に良かった一方で、世界観の不快さが引っ掛かった。
評価はとても良いには超惜しい「良い」