てとてと さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
サイカノに匹敵する。2010年代で泣かせる度トップクラス
命(記憶、人格)が残り少ない女の子が終末的世界で戦い愛し愛される、悲劇的ファンタジーラブコメ全12話。
ライトノベル原作で通称「すかすか」
【良い点】
「ガンスリンガーガール」を彷彿とする使い捨ての戦う女の子の悲劇的ラブコメという、あざとく泣かせるストーリー。
主人公は数百年前の戦いを生き残った勇者で、ヒロインは設定上前世の記憶に人格汚染されていて余命幾許も無い。
「最終兵器彼女」を彷彿とする悲劇性あり。
当初は死を覚悟というか生きる意味を知らなかったクトリちゃんが主人公のお陰で生きて愛する悲しみと最高の喜びを知る…
両者は滅び行く終末世界で共に戦い共に生き、共に葛藤し、最期に愛が成就する。儚く大変美しいラブストーリーだった。
こういうあざとさは尊い。お涙頂戴はエンタメ作品の華、ありがちを真摯に描き切った作品は素晴らしい。
セリフ回しというか、物事に対する解釈のセンスが良い。
特に脇役の男性のセリフが悲劇的ファンタジーのアクセントになっている。
世界観も非常に良い。
空に浮かぶ群島は珍しくないが、「ソマリと森の神様」めいて人間種が滅んでいる、獣と呼ばれる世界滅ぼした敵、
無垢な子供の魂を転生させた妖精兵器レプラカーン(なんとなく「シャドーハウス」要素も?)などの諸設定が練られている。
主人公ヴィレムが500年前の生き残りであり、500年前の出来事含めて本作独自の神話形成していて
物語のバックボーンがしっかりしている。
主人公以外滅びた人間とは?世界の脅威たる獣とは?などの謎が世界観を形成しており、物語の魅力に繋がっていた。
過去と現在を交差させた滅びゆく物語を丁寧に構築出来ている。
日常のさりげない一幕や街の生活感、モブも含めた会話劇など、これらの世界観を自然に伝える工夫が随所にある。
また5話のテロ集団による内ゲバ回をコミカルに流したのも上手い。
人(滅んだ人間も現在の獣人も)の愚かしさや正義の在り方などを提示しつつ、そこは本命ではない。
主人公ヒロイン以外のキャラクターも厚みがある。
妖精兵たちは皆可愛く、各々方向性は違うが境遇故の達観した性格で見せ場と魅力発揮。
井上喜久子ボイスのお姉さんナイグラートの包容力と涙も泣かせる。
また男性陣も渋い良キャラ多い。人生経験豊富なベテラン冒険者グリックの存在は危うい妖精兵たちにとって大きかったり、
凡百の作品ではカマセであろう一位技官殿が絶望的状況で名指揮官ぷりを見せるなど。
名も無きモブ獣人たちもセリフの一つ一つにキャラクターの心情やバックボーン感じられる。
嫌味なモブが少なく、地に足の付いた良キャラ多い。
モブを魅力的に描けている作品は良作。
作画はキャラデザも世界観構築の描写も戦闘シーンも申し分ない。
挿入歌やBGMも含めて楽曲が素晴らしい。
OP・ED共にクトリちゃんの切なる想いの丈を真っ直ぐに伝わる良主題歌、特にOPはクトリちゃん本人が歌うのも大事。
2017年で泣かせる度トップレベルのあざとい主題歌。
悲壮だけど能動的に勝ち取るんだ的な強さを感じるのが良い。
【悪い点】
タイトルで損している感。
通して見ればクトリちゃんの切実な想い反映していると好意的に取れるんだけど、初見だと冗長な印象。
主題歌が力強い分、「救ってもらっていいですか?」は違和感。(意地悪な見方だけど)
良し悪しだけど、日常回の割合が多く、純粋に悲劇性で押す作劇としてはやや散漫。
妖精兵たちやナイグラート、そして過去に最愛の人を守れなかったヴィレムら各々のドラマが良い反面、
良キャラの層の厚さでクトリちゃんのドラマが若干手薄だった印象も。
全体的に非常に練られた作品なんだけど、やや要素が多く、純粋に悲劇的ラブストーリーを堪能しづらかった面がある。
逆説的だけど、世界観構築や物語としての完成度が高いのが若干裏目に出ていた。
良し悪しだけど、街や日常は平穏で、差し迫った終末感があまり感じない。
最終戦も存亡掛けた決戦ではない遭遇戦に過ぎないのがやや残念。
主人公を兄貴分と慕う、ショタのまま老いたような老賢者が重要キャラぽかった割に物足りず。
ラストも未解決の要素が多々あり気になる。
【総合評価】9点
2017年で一番泣かせるアニメ。こういうのに弱い…。
好み的に最高付けたいくらいだけどやや惜しい「とても良い」
【余談】
レプラカーンといえば「聖戦士ダンバイン」を真っ先に想起してしまうスパロボファン…