てとてと さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
平安から時を超えての家族愛ファンタジー。Key作品の代表的名作だがやや分かり辛い面もあり
Keyの恋愛ゲーム原作、過去から続くフシギ要素ありの悲劇的親子ストーリー。
※作品データベース様より転載
【良い点】
京都アニメーションの芸術的な作画の美しさ。2023年から振り返っても色褪せていない。
名曲と名高い主題歌「鳥の詩」など楽曲も素晴らしく、名作な印象強めている。
キャラデザは癖はあるものの、可愛いというよりは美しい。こういう浮世離れした美少女絵こそ、二次元の萌えの醍醐味だと思う。
三部構成のストーリーも初見では戸惑うが、分かり難くはない。終盤畳みかけるような母娘愛は圧倒的にお涙頂戴。
初見ではピンと来なくても、繰り返しの視聴で理解と感動が深まるタイプ。
凡百のアニメでは苦しい点だが、本作は繰り返し視聴してみてもいいかな、と思わせる圧倒的クオリティーにより、欠点を覆している。
全編通して家族愛で一貫したテーマ性。
佳乃と聖の霧島姉妹が、妹を溺愛しながらも姉妹関係に葛藤抱えていたり、観鈴と叔母の晴子も実の母娘じゃない壁を乗り越えたり。
過去編の神奈と柳也と裏葉の関係も、家族といえる絆がちゃんとある。血の繋がりだけが家族じゃない。
共通して、家族の絆で大切なものは何か?が分かり易く描かれ、一見無関係な各ストーリーがちゃんと繋がっている構成は見事。
主人公の往人とカラス?は傍観者にしかなれない描かれ方も、寂しくはあるが、切ないストーリーに没頭させる巧妙な視点だった。
個別ストーリーでは過去編(正式にはSUMMER編)が一番好き。終盤の観鈴編より断然良かった。
多分平安時代と思われる、籠の鳥の孤独な姫君と、衛者の青年とのラブロマンス。
時代背景とシチュエーションが珍しく、和風ファンタジーロマンスな作風が非常に好みだった。
神奈ちゃんも非常に可愛い。余口調や、悲劇的宿命や母への思慕、次第に柳也に心開いていく、稀有なヒロイン。
柳也も平安の戦士で強く頼もしく、傍観者の域を出られない往人とカラスよりも、彼の方が主人公ぼかった。
声優陣は久川綾氏の熱演は涙腺強引に攻めてくる。
川上とも子氏は御本人も亡くなられているので、この点も終盤内容に重ねてしまう。感想としては不謹慎かもしれないが。
【悪い点】
詰め込み気味でストーリーに余裕が無い。
特に前半は説明不足のまま複数ヒロインとの交流が展開、クセの強いヒロインたちの魅力十全に感じるには明らかに尺不足。
結果、観鈴以外のヒロインの掘り下げが物足りず、印象が思いのほか弱い。
翼人伝説や往人やカラス、現代ヒロインたちとの因縁など、何となくは推測可能なんだけど、説明不足が否めず。
往人、柳也、カラスの関係辺りは、もう少し明確に描写してほしかった。
主人公(往人?カラス?)が傍観者なのも、良さである反面、共感しづらい要因。
平安時代編を除き、主人公との交流でヒロインが輝く、王道な作劇からズレている。
良くも悪くも異質な作品であり、その異質さに順応できるかで評価が割れる気がする。
終盤、余命いくばくも無い娘への母の愛、というのはあざといんだけど、悲劇の為の悲劇に思えて若干刺さらなかった。
持ち味十全に受け止めるのに繰り返しの視聴が求められる、構造的な欠陥を抱えている。
良い点で欠点覆していると書いたが、やはり同じタイトル何度も見てられん、な普通の視聴者に厳しい面あり、手放しで絶賛できない。
【総合評価】8~9点
稀有な名作なのは間違いないが、同時に敷居が高い(誤用らしいけど)作品でもある。
理屈抜きに感覚的に刺さる視聴者も多いかもしれないが、少なくとも自分は感覚的には刺さらなかった。
そこを能動的に深掘りしてやはり名作!と認識させられる辺りが本作の非凡さである。
評価は最高に値するが、自分の基準だと難ありで「とても良い」