tinzei さんの感想・評価
3.1
物語 : 3.0
作画 : 3.5
声優 : 3.0
音楽 : 3.5
キャラ : 2.5
状態:観終わった
最後にそのオチを付けるなら藤若との関係も描いて欲しかった
湯浅監督作品、『きみと波に乗れたら』以来の劇場版。
室町時代に実在した犬王という能楽師を、琵琶法師の架空キャラクターを入れて描く。
簡単に言えば「時代はそのままに、当時の能楽と琵琶を、それぞれ現代のダンスと歌にアレンジした話」。
万人向けだった前作と前々作は、比較的親しみやすい作画(特にキャラデザ)だったけど、今作は『マインドゲーム』とか『ケモノヅメ』みたいな初期の作品に近いキャラデザだから、苦手な人には少しきついかもしれない。ただ背景とか建物は時代に合った描き方をしてたから、観やすかった。
前作はファンタジーありの正統派恋愛作品だから観やすかったけど、今回は少し難解だった。
いや物語の大筋は分かりやすいんだけど、細かいところ…特に能楽や平家に関わることは、前知識が必要だと思う。例えば、途中犬王が顔以外人間になる歌の話は、平宗盛を知らないと理解できないし、そもそも平家と足利の関係を理解してないと、何で足利が平家に拘るのかも分からない。
海外での評判も良いみたいだけど、物語の評価というよりはアニメーションと描き方の評価だと思う。
元々時代劇は嫌いじゃないし、現代音楽とマッチングさせてミュージカルっぽくするのも良かった(個人的にはビートたけしが作った『座頭市』のダンスを思い出す)。
ただ物語としては消化不良。あれだけ友有に拘ってた犬王が、あっさり見捨てたことも気がかりだし、何より当時もう一方の人気者だった藤若についてのシーンが少なすぎる。友有を描く上では必要ないキャラだけど、最後に「犬王の語り継がれたものはなく、藤若のが語り継がれた」ってオチを付けたのなら、藤若と犬王の関係についても詳しく描いて欲しかった。
それと今までの湯浅監督作品全般に言えることだけど、ダンスシーンがあると必ずと言っていいほどタップダンス(シャッフルって言うのかな?)があるのは何?湯浅監督が好きなの?それともアニメだと描きやすいとか?物語には関係ないどうでもいいことだけど、凄い気になった。
声優のキャスティングも悪くないし、一部に本物の琵琶法師や能楽師を入れて本家のリスペクトも欠いてないから、総じてみれば良い作品だったけど、悪い点としては上で挙げた藤若の件と、歌のシーンが長すぎて少しだけ退屈だったこと。まあこれはその人の感性によるのかもしれないけど、物語を聞くときは歌じゃなくて、普通の言葉で聞いた方が頭に入りやすい。だから正直、犬王が呪いを解いていくときの歌は、話し言葉で描かれたこと(犬王出生の秘密とか)以外よく理解できなかった。