フリ-クス さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 4.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
青春の光とヒカリとひかり
高校時代ってどうだった? ということを聞かれたとき
① すっごい楽しくって、まさにセイシュンって感じだった。
② え……まあ、フツーかな。それなりってカンジ。
③ サイアク。毎朝ガッコ-に行くのが苦痛で仕方なかったわ。
というふうに、人の反応が分かれると思います。
(かなりざっくりした分け方ですが)
本作『スキップとローファー』は、
原作読んでないんですが、けっこう①寄りの②、みたいな感じですね。
(10話まで見た段階での印象です)
といっても、ウェイウェイしたバカ高校生を描いているわけじゃありません。
友だちや仲間とのコミュニケーションを通じ、
雪が降り積もるようにジブンというものの厚みが静かに増していく。
そういう多感で貴重な(そして二度とない)年代を、
ヘンに飾りたてず素朴に、
そして愛情をこめて丁寧に描いた作品ではあるまいかと。
一般的なカテゴリーとしては『ラブコメ』に入るのでしょうが、
ラブ成分はけっこう少なめで、
楽しくも精緻に描かれた青春群像劇、の方がしっくりくるかもです。
秀作がけっこう多い今期の中でも、
拙的にはしっかりベストスリーに食い込んでくる感じ。
とにもかくにも『見心地のいい』作品です。
おハナシは、
石川県のど田舎(同郷の方、ごめん)で育った素朴な女の子(美津未)が、
志高く、都内の高偏差値高校に入学したところから始まります。
で、それなりに屈折したり悩みを抱えたりしていたクラスメートたちが、
美津未の純朴さ・まっすぐさに触れ合ううち、
少しずつ顔をあげて、他人とのかかわり方を見直し始めます。
もちろん美津未自身も、
都会の生き方・考え方に刺激を受けて、いろんなことを考えます。
ただし、美津未は特に『規格外』というわけじゃないんですよね。
地元じゃ、ふつうに『いい子』なだけ。
もちろんクラスメートたちも、どこにでもいる『都会っこ』。
ほんと『都会のねずみさん』と『田舎のねずみさん』が出会い、
おっかなびっくりで適切な距離を模索するうち、
いつの間にか一緒にいること自体が心地よくなっていく、みたいな感じかと。
もちろん、お話自体は、そこまでふわふわしたものではありません。
女性作家さんの原作モノだけあって、
嫉妬だのコンプレックスだの自意識だの横並び感覚だのという、
リアルオンナのいやらしさ(←差別発言)的なものも、
深刻にならない程度、
リアリティを出すためのスパイスとしてうまくふりかけられています。
で、そういう気持ちを押し殺してなかよくするうち、
いつの間にかなんでも本音で言い合える友だちになっている、みたいな、
われら愚鈍男子にはうまく理解できない
『女子の友情のなりたち』
みたいなものがさらっと描かれているところもよきです。
ストーリーには、何か『核』になるものが存在するわけではありません。
ふつうに始業式から始まって、
自己紹介、休み時間、テス勉、球技大会、夏休み、文化祭など、
いわゆるフツーの高校生活が時系列で描かれていきます。
こういう『なにもトクベツじゃない』毎日だからこそ、
逆に親近感・リアリティを感じてしまうのは僕だけなのかしら。
すごく素直に、すうっとおハナシに入り込んでいけます。
だからといって『日常系』というわけじゃないんですよね。
そういう毎日を通じて個々のキャラが少しずつ変化していくさまが、
すごく自然に、そして繊細に描かれていてステキです。
キャラクターも、みんな血肉が通っていてよきです。
一番のキャラ立ちは、
ヒロインかつみんなのインフルエンサー、美津未ですね。
ほんと『性格のいい・努力家で・素朴なイナカの』女の子なんですが、
その素朴さ・まっすぐさが、
周りのココロを少しずつ揺り動かしていくところが実によき。
ヒロインって『ジミだけど実は美形』設定が多いものなんですが、
美津未は見た目もほんとにふつう。てか、けっこうダサい。
それなのに、男目線でも応援してあげたくなる魅力があるんですよね。
美津未のクラスメートたちも、
美形・ジミ子・普通の子といろいろ取り揃えておりますが、
みんな、いいところも悪いトコロも含めて等身大。
この年代らしい悩みを抱えていて、
それぞれをそれぞれに、応援してあげたくなります(←なにさま発言)。
クラスメート以外、いわゆるサブキャラも丁寧に創られています。
美津未の叔母(叔父?)でLGBTのナオちゃん。
石川県に残っている、美津未の親友、遠山文乃(フミ)。
男性主役である志摩くんの、子役時代からの親友、玖里寿(クリス)くん。
この三人が、ほんと『いいひと』なんだわ。
高校時代って、なんだかんだ言っても不安定で、
やっぱ『見守ってくれるひと』『支えてくれるひと』が必要な時期。
そこのところのツボ、しっかり押さえたキャラ構成ですよね。
おかげで物語に安心感と奥行き、
さらには暖かみまでもがしっかり出ておりまして、
実によき、なのであります。
(ナオちゃんが美津未の友だちに、フツーに受け入れられるのも好き♪)
お話全体の評価は、まだ完結してないのでムリなんですが、
いまのところ、すごく、すごくいい感じです。
学園青春ものが好きな方なら、ぜひに、とおすすめしたいクオリティ。
いじめだのスクールカーストだのという陰湿要素はなく、
そのくせ見ごたえのある『ささやかな青春ドラマ』が詰め込まれていて、
流行りすたりに迎合しない、
キャッチーなモチーフに依存しない、
いたずらに売れ線を模索しない、
つまりは『普遍的な青春の価値』なんてのを再認識させられる作品かと。
もちろん、人によって好き嫌いはあるだろうけれど、
僕は大好きです、こういうモノづくり。
あと『響け!ユ-フォニアム』のファンで、
黄前久美子を演じていた黒沢ともよさんに注目した方にも、
ぜひ、ご視聴いただきたいかもです。
黒沢さんって、もともとは演劇・舞台畑のご出身でして、
基本、声色を変えず、
地声で勝負するタイプの役者さんなんですよね。
それがゆえに、役が声質にぴったりハマらないと、
芝居そのものは高品質なのに、
キャラが埋没しちゃうことがちょこちょこあるんです。
その点、本作の岩倉美津未役と、
あと『アークナイツ』のアーミャ役は出色のでき。
そうか、この声にはこういう使い方があったのか、
と、目からウロコのキャスティングかと。
音監さんってスゲー、と思わされるドンピシャさなのであります。
ちなみに、こういうテイストの作品を見た方の反応も、
① あ~、高校ってこんなんだった、こんなんだった。
② ん~、こんなんだったらよかったんだけど、マジなんもなかった。
③ けっ、こんなエソラゴト高校、あってたまっかよ。
というふうに、ざっくり分かれるかと思います。
ちなみに僕の高校は、ほとんど①に近い感じでした。
もうちょっと正確に言うと、
中学~高校~大学とエスカレーター式の、
いわゆる『ぼんぼん・お嬢ちゃん』学校だったので、
大学受験を考える必要がなく、
本作よりも『あほ満載』な感じでした(京都だったし、運動部だったし)。
そういう学校のスゲーところって、
本作に出てくる志摩くんみたいなヤツがごろごろいるんですよね。
家がお金持ちで、イケメンで、性格良くて、スポーツできて。
そういう『王子サマ』みたいのがどのクラスにも四、五人いて、
平民のワタクシごとき、はりあう気にすらなれなかったです。
(てか、ふつうに一緒になってアホやってましたが)
ですから、本作の志摩くん見てても、
ん~~、こういうヤツ、けっこういるよね
みたいに感じてしまうところがあり。
僕がこの作品を気に入っているのは、
もちろん女の子それぞれが魅力的なことが大きいんですが、
ひょっとしたら、
志摩くんや玖里寿くんなど男子の造形に、
ある種のノスタルジーを感じちゃってるところあるかもです。
とは言っても、まだお話は完結していないので、
最終話まで完走したうえで、
もう少し深く考察してみようかな、などと考えております。
みなさまは、どんな高校生活お過ごしになられましたか?