nyaro さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
2作品の意味は薄い。ラブストーリーとSFは本作の方がいい。
2つの作品で1つの話というSFです。原作は本屋で2冊一緒にならんでいて、当然それを見ただけで仕掛けがあるSFでおそらくはパラレルワールドものかタイムリープものなんだろうということは分かり、購入。若干原作のほうが分かりやすい気もしますが、ほぼ変わりません。
で、君を愛した→僕が愛したの順で読みました。正直言うと2作はつながっているように見えますが、しかし、2作をくっつける意味は希薄だったと思います。
そのうち、和音がヒロインの本作のほうがSFとしても、ラブストーリーとしても圧倒的にレベルが高いと思います。
本作は、並行世界における、アイデンティティ問題が中心に描かれます。その問題と絡んで、愛しているのは誰か?という問題をストーリーと絡んで丁寧に描写されます。
主人公と和音の出会いがまた、甘酸っぱくて結構可愛い感じで、そのとき和音がやった工夫がラストで活きてくるような感じです。
主人公が和音を好きになるプロセス、和音が主人公に関心を抱いたプロセスなどがなかなかいい感じでした。
で、まあ2つの作品の意味ですが、「君を」の方で書きますが、じゃあ栞の世界とのつながりで、なにが描けたんだろう?と思います。むしろ主人公を変えて、2人の研究者が同じ世界で起こした2つのラブストーリーの方が良かった気がします。一応、交差点での再会など2作を絡めようとしていますが、意味性が薄い気がします。
それとSFとしての専門的あるいは専門的っぽい単語ですが、これが下手です。SFとしてのうまさとは専門性があるように見せながら、どういう事象・現象が起こるのか?が読者・視聴者が理解できて話が理解できることが大事です。そこが上手く行ってません。要するに説明も用語の頻度もくどいです。そのくせ言っていることは泡状のパラレルワールドにおける作者が考えたルールを説明しているだけです。難解な用語より分かりやすさを優先させればいいのに、と思いました。
単独のSFとしてみれば、本作「僕が愛したすべての君へ」の方が圧倒的に面白いです。題名も内容と絡んでちゃんと回収されます。必ずしもハッピーエンドでないところがいいです。本作のモヤモヤがこの作品の味わう部分であり、世の中のパラレルワールド、タイムリープもの読みとく視点になります。
なお、原作と本作は重要な事件がちょっと省略されていますので、結論の味わいはもうちょっとマイルドになります。
アニメのレベルはちょっと出来がいいTV作品くらいかなあ。
どちらか試しに見るなら本作がいいです。本作すら受け付けないなら「君を」はもっと駄目でしょう。
本作の評価は連作の1つとして、評価します。単独なら4.1。ただし、お金を出して2作見た以上は、ストーリー・キャラとも減点をします。