ひろたん さんの感想・評価
3.5
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
「2作品観たひとだけが分かる愛の結末とは・・・」
※『君愛』のレビューからの続きです。
『君愛』、『僕愛』の両方を観ました。
私は、正直、少し残念だったと言うのが率直な感想です。
この2作品の予告では、こう言っています。
「『僕愛』から観るとちょっと切ないラブストーリー。
『君愛』から観ると幸せなラブストーリー。
2作品観たひとだけが分かる愛の結末とは・・・。」
確かに観る順番によって感じ方が違うように思います。
しかし、問題なのは、「2作品観た」結果がちょっともやもやしていることなんです。
■たぶん、どちらの愛の結末も幸せではないです。
{netabare}
『君愛』では、最終的には、ヒロインと結ばれない結末が待っています。
一方、『僕愛』では、ヒロインと結ばれていますが、最後が少し残酷な気がします。
その理由は、『君愛』の並行世界からの干渉があるからです。
ヒロインが愛した主人公は、実は、他の人が好きだったと言わんばかりだからです。
つまり、その人を救うために分岐を起こして今のヒロインと添い遂げていると・・・。
そのため、『僕愛』は、並行世界と言いつつ、『君愛』からの干渉があるため、
あくまでも「プランB」に思えてしまいます。
つまり、この『僕愛』のヒロインは、次点の位置付けに思えてしまうのです。
しかもそれを、結婚して孫もできた人生の最期が近づいた段階で知らされる。
残酷じゃないですか?
つまり、どちらのヒロインにとっても、幸せとは思えないのです。
最初に『君愛』までを観た段階では、よい意味で高揚感がありました。
それは、ヒロインを助けられるのか!?ってところで、終わるからです。
しかし、『僕愛』までを観ると、・・・なのです。
確かに、結果的には『君愛』のヒロインは助かります。
一方、『僕愛』でも、ヒロインとは結ばれています。
でも、期待しているのはこれじゃない感があり、なんだかもやもやするのです。
そして、もう1つ問題点があります。
『君愛』、『僕愛』は、並行世界です。
なら、ヒロインに対する比重も同じであって欲しかったのです。
『君愛』では、思春期までが物語です。
そのため、ヒロインと恋愛関係に発展していく過程がとても丁寧に描かれています。
そして、感情移入もさせられます。
一方、『僕愛』は、大人になってからの家庭の話がメインになります。
恋愛関係に発展していく過程があまり描かれていません。
すると、ヒロインに対して、どうしても『君愛』>『僕愛』と言う構図になります。
できれば、もうどちらのヒロインかを選べないくらいの構図だとよかったと思います。
それなら、全体を観終わった後の感想がまた違ったものになっていたかもしれません。
{/netabare}
■まとめ
私は、『君愛』→『僕愛』の順番に観るべきだと思いました。
理由は、好みの問題と言うよりは、物語の構成的な問題です。
どちらも完全に独立していれば、どちらかを先に観てもいいと思いました。
でも、この作品は、どうしても時間軸も世界観もどちらも『君愛』が前提になります。
そのため『僕愛』から観た方は少し分かりにくかったのではないかと思うのです。
できれば、『僕愛』の方の描き方をもう少し工夫してほしかったです。
ただ、コンセプトは、非常に面白い作品だと思いました。
並行世界とラブストーリーの組み合わせは、よくあるテーマです。
ですが、それらの作品は、過去改変をして、分岐を切り替えるといった感じです。
しかし、この作品は、分岐による並行世界を是としていることです。
そして、その並行世界が干渉しながらもそれぞれのラブストーリーが進んでいきます。
これは、とても興味を持つことができました。
また、その並行世界を、文字通り2作品に分けて、独立したものとして描いてみせる。
しかし、それと同時に、お互いが影響しあう部分を物語に織り込んでいる。
なかなか面白い試みだと思います。
そして、この2作品を象徴するそれぞれのタイトルもとても良かったです。
『僕が愛したすべての君へ』と『君を愛したひとりの僕へ』です。
これは、並行世界、つまり、分岐した先にいる「すべての君」のことを愛しているし、
そんな「君」を愛したのは、「ひとりの僕」なんだと。
とてもこの物語の本質をついたタイトルだったと思います。
ただ、それだけにこの2作品は、バランスがものを言います。
つまり、どちらかに比重があっては、だめだと思うのです。
PVやキャッチコピーからは、どちらも比重は同じ印象を受けます。
しかし、実際に2作品を観ると感情移入的な比重は偏っているなと感じてしまいます。
そこが、残念でした。