エイ8 さんの感想・評価
3.3
物語 : 3.5
作画 : 3.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
結局いつもの「なろう」になるのか
『黒の召喚士』(くろのしょうかんし)は、迷井豆腐のライトノベル。2014年10月6日より小説投稿サイト「小説家になろう」で連載されていた『古今東西召喚士』という名の作品で、2015年5月16日に『黒の召喚士 〜戦闘狂の成り上がり〜』にタイトルが変更になった。
2022年7月から9月にかけてTOKYO MXほかにて放送された(wikipedia)
お馴染みの転生作品、ステータスオープン系ナレーション付き無双系ハーレムもの。このナレーターがハーレム要員としてパーティーに参入するところが本作の特色といえば特色であるものの、ほぼほぼMMORPG的世界が舞台であるという点自体は多くの作品と変わらない。
原作が2014年発とそこそこ古い作品であるせいか、全体的に牧歌的な印象が強く素朴ではあるが逆に言うと安心できる作風であるともいえる。一番近い所で言うと『ログ・ホライズン』だろうか。あれは確か地上派ではEテレで放送されていたと思うが、逆に言うとそこで放送できるような内容に近いということでもある。
悪人は登場し、また彼らは結構な悪行を犯してはいるものの基本的にそれは言葉の上でしかなく実際のそういった悪行を行うことは無いか、行おうとしたところを主人公ケルヴィンらに止められるためそういった嫌悪感を伴うシーンを目撃することはあまりない。
主人公のケルヴィンは一応初めからチートスキルを持っているわけではない。だが結局さっさとレベルアップしてしまうため成長を見守るという楽しみ方はあまり出来ない。しかも本人だけでなく安全圏にいる仲間にも経験値が入るというまさにゲームの世界そのまんまの設定。この作品に限ったことではないが、例えば「二刀流」が勇者にのみ与えられたスキルだとして普通に剣を二本持って戦う特訓をしたらどうなるのだろうか?全く成長できないとか、そもそも持てない等という制約がかかるのだろうか?
おそらくある程度普通の倫理観に基づいて作られた作品であるとは思われるが、その一方で奴隷少女エフィルを買ったりだとか、そのエフィルが男に買われたにもかかわらず喜ぶとかその辺の感覚はやや下衆い。もっともケルヴィンは主人公らしく紳士であるため乱暴を働くことはないが、仲間である漆黒の騎士の亡霊ジェラールが冗談であっても奴隷少女を性的に扱うことを前提とした発言をするなど、ちょっとまあ何というか……という気がしなくもない。もっともこれは本作が良く言えば安心、悪く言えば無難な作風であるため余計にそう思えてしまう面があるのだろうが。
無難といってもそれは必ずしもマイナス要素であるとは言えない。「なろう」系はどうしても残虐描写が多く、特に悪人を猛烈に悪くすることで天誅的処罰すらも正当化する傾向があるのだが、それが無い本作はむしろ気楽に視聴に臨めたのでむしろこれは個人的にはプラス要素だった。
先述した奴隷少女に対する反応はともかくとして仲間のスライムであるクロトは可愛いし、中盤で登場した勇者一行も実に古典的な「勇者像」でありとても懐かしい気持ちになった。ケルヴィンは「重度のバトルジャンキー」などと称されているもののこれは結局のところ「俺より強い奴に会いに行く」や「オラわくわくしてきたぞ」の系統でありようするに少年漫画の王道タイプのため嫌悪感じみたものは特になく、どちらかというとその姿にため息をつく仲間達までがワンセットの伝統芸でしかない(それが好きかどうかは好みによるだろうが)。
ただ、この流れも結局最終話で崩れた。ここでの敵クライヴ・テラーゼはケルヴィンと同じ転生者であるものの能力を悪用しエフィルまでもを魅了しようとした。挙句自分の仲間は捨て駒としか見ていないという性向もあってケルヴィンは彼の両脚を切断、さらにとどめまで刺そうとした。結果それ自体は敵のトリスタン・ファーゼにより阻止されたものの、今度はそのトリスタンがクライヴを拷問にかけるという流れ。どうしても「なろう」はこういう展開やらんとおれんのですかね?クライヴも悪人ではあるが、それまで捕まえてきた悪人とそんなに変わらんだろうに何故彼だけは殺そうとしたのか?「俺の女」に手を出そうとしたから?
結局最後の最後で本当にただの「なろう」に成り下がってしまった。こういうのがやりたいなら最初からやればよかったし、正直中途半端だしがっかりという感想。
ところでエフィルちゃん、物心ついた時から奴隷やってるとのことでしたが何で家事手伝いできるの?スキルも手付かずだったんじゃないの?