nyaro さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
非常に珍しい日本産フルアニメ。物語性もあり出来のいい悲劇。
日本ではあまり見ないフルアニメーション(1秒24コマ)の作品です。動きも色彩も素晴らしい出来です。特に手書きアニメでの炎と波の表現においては、その映像技術は日本のアニメ史に残る作品の一つだと思います。
(なお、AKIRAは2コマ落ち、つまり1秒12コマでした。通常作品は3コマ落ち1秒8コマです)
サンリオのアニメですね。本作と「星のオルフェウス」「ユニコ」などが有名…と言いたいですが、私の中ではメジャー作品なんですけど、ネット記事含めてこの作品名を単語として聞いたことがあるのはユニコくらいです。
炎と波を火と海の神の世界観に落とし込み、ギリシア神話そのものではないですが、神話的世界観とロミオとジュリエット的な悲恋の物語です。シリウスの伝説という架空の伝説が非常に効果的に使われています。プロット、構成、演出が非常によくできていて、物語そのものの出来も高い水準で仕上がっています。大人が鑑賞しても十分以上に楽しめます。
バッドエンドはあっても悲劇が最近少ない気がするので、その点で新鮮だと思います。「ウィンダリア」というOVA作品とちょっと似た感じがあります。
ディズニーアニメの「リトルマーメイド」は近い構造の話ですが、物語性においては2段も3段も本作の方が上の水準だと思います。
そう…本作はおそらくはディズニーへの挑戦という意図があったのでしょう。色彩は60年代以前のディズニーフルアニメーションの感覚に近いです。
ディズニーはモーションキャプチャ(というよりモーショントレース)を使い、人物に演技をさせてそれをアニメ化する手法でしたが、本作はそこまではやっていないです。ファンタジーなのでそもそも無理でしょう。そこの違いはありますが、日本アニメに慣れているせいか、本作の方が自然な演技だった気がします。
背景美術やキャラデザの魅力、それと画面上でのキャラの動きの量においてはやはりディズニーには負けているかなあ、という気がします。金のかけ方がそのまま質の差になっている気がします。
ということで、作品性もアニメの水準も非常に高い作品です。ただ、1981年作品ということで、アニメは子どもが見る時代。誰向けの作品か?という点では中途半端だったのでしょう。
ただ、未だにdアニで見られるので、やはりそれなりに評価をされているのでしょうか?
なお音楽のコーラスが非常に美しいのでそちらも高水準でした。