かがみ さんの感想・評価
4.2
物語 : 3.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
かがやきを結ぶということ
2010年代のサブカルチャーを代表する作品の一つであり社会現象にまでなった初代の「ラブライブ!」はゼロ年代的「つながり」の想像力から出発しつつも、いち早くその限界性を描き出し「つながり過剰」を解体するオルタナティブとしての想像力として「みんなで叶える物語」を掲げていた。次に「ラブライブ!サンシャイン!!」においては「つながり過剰」に回収されない差異が「かがやき」という言葉で名指され、同作劇場版において「かがやき」は「虹」というモチーフとして現れた。そして、このような「虹=かがやきの複数化」というテーマを全面的に展開したのが「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会(通称アニガサキ)」である。同作は言うなれば「ラブライブ!を目指さないラブライブ!」である。しかしそもそもラブライブ!が称揚する「みんなで叶える物語」とは「つながり過剰」を解体する想像力であった。そういった意味で同作はラブライブ!それ自体を放棄することで、逆説的にラブライブ!の臨界点を極めた恐るべき作品となった。
そしてラブライブ!4番目のシリーズとなる本作は再びラブライブ!の頂きへと向かっていく。本作の主人公、澁谷かのんが通う結ヶ丘女子高等学校はかつて同じ地にあった神宮音楽学校の伝統を引き継いだ新設校で普通科よりも音楽科を重んじる雰囲気があり、これが校内の分断を生み出し、かのんたちのスクールアイドル活動の障害ともなっていた。このような分断を乗り越えて、かのんたちはやがて全校を巻き込みながらラブライブ!を目指していく。
本作のグループ名「Liella!」とは主人公たちの通う学校名に因んでフランス語の「lier(結ぶ)」とスペイン語の「brillante(かがやき)」に由来する。トラウマを克服し再び皆の前で歌えるようになりたいかのん、スクールアイドルに純粋に憧れる可可、かのんの横に立ちたい千砂都、主役を取ることにこだわりを持つすみれ、そして亡母の創立した学校を救いたい恋。本作ではこうした複数の「かがやき」たちが「Liella!」の名の下で結ばれていくのである。
こうしてみるとアニガサキのさらにその先に行こうとする本作のコンセプトは同時代的でもあり決して悪くはないと思う。しかしながら、そのストーリーテリングにおいて最大の山場を迎えた第7話「決戦!生徒会長選」と第8話「結ばれる想い」の出来が最後まで足を引っ張ったという印象は何度観返してもどうしても拭えない。歴代シリーズのお約束(「廃校」とか「認められない系生徒会長」)をどうにか取り込もうとした結果、ああいうよくわからない展開になったのかもしれないけれどアニガサキを通過した本作において、むしろそういうお約束にあまり拘らなくても良かったのではないか。前半の出来が結構良かっただけにやはり惜しいと思わざるを得ない作品である。