蒼い✨️ さんの感想・評価
3.6
物語 : 3.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
ずっと俯瞰の状態で少年の気持ちになれず。
【概要】
アニメーション制作:MADHOUSE
2022年2月18日に公開された95分間の劇場版アニメ。
監督は、いしづかあつこ。
【あらすじ】
関東の田舎町で農家の両親の農作業の手伝いをしている一人息子のロウマ(鴨川朗真)は、
学校でもクラスに溶け込むことが出来ずに、仲間はずれやバカにされたりで浮いている存在。
似たような扱いの幼馴染の秀才メガネくんのトト(御手洗北斗)だけが友達で、
トトとふたりでドン・グリーズを結成して、秘密基地で遊んでいたのだが、
そのトトが、親の病院を継ぐために東京の高校へ進学して、
ひとりぼっちになってしまったロウマ。
夏休みに入ってトトが帰郷、同い年だが見た目が幼い少年・ドロップ(佐久間雫)を加え、
トリオでドン・グリーズを再結成。
毎年、隣町で夏の花火大会が行われていて、
学校のみんながつるんで行くのだがロウマとトトは誘われたことが一度もなくて、
自分で買った花火での二人だけの花火大会が恒例で、
今年は大量の打ち上げ花火と、それを空撮しようとドローンを購入して準備。
三人で同級生らにちょっとした仕返しをして、そのまま花火大会を始めたが、
なかなか着火せずに花火の打ち上げに失敗。ドローンも操縦失敗で行方不明に。
しかも当日に起こった大規模な山火事がロウマたちの仕業だと決めつけられて、
同級生らの手で現場に残されていた市販の花火の写真を掲載されてSNSに書き込まれてしまう。
自分たちの無実の証拠として、ドローンで当夜に撮影した映像の回収のために、
位置情報でおよその位置が判明しているドローン探しに三人で山中まで冒険しに行くことに。
十五歳の三人は様々なハプニングに見舞われながら、自分たちの心を見つめ直していく。
【感想】
「宇宙よりも遠い場所」のスタッフ(脚本家の花田十輝氏はいない)による、
少年たちの小さな冒険と友情と物語。ネタバレになりますが死を取り扱っているあたり、
ちょい、「スタンド・バイ・ミー」のスティーブン・キングを意識しているですか?
自分のやりたいことが特に無い、ただぼんやりクラスの日陰者を生きているロウマが、
現実の嫌な人間だらけのつまらない日常から、
数少ない友人との山中の自然での冒険と語らいで一時的に解放されることで、
目線を変えれば世界は広くて知らないことだらけで素敵に溢れているんだぜ?
との視聴者へのメッセージ。自然の中で三人が小気味よくコミカルに動き回ったりするのですが、
ボンクラ寄りの彼らのこと。ドローン探しは順風満帆とは行かず、口喧嘩が始まったりもする。
各々の十五年間なりの人生が抱えている葛藤や閉塞感を吐露したりで、
三人の絆が深まったりする。割りと山歩きを舐めていて失敗だらけの彼らなのですが、
その泣いたり笑ったりする青春を受け止めて楽しめば良い作品なのかもしれません。
三者三様に心に靄がかかっているドン・グリーズが次のステップに進むためのひと夏の経験。
地味なテーマである作品ながらも、演技・演出・カメラの動き・美術・花火の映像などは、
よりもいのスタッフらしいクオリティでしたが、ただ話自体は無茶苦茶面白いわけでもなく、
例えば田舎の陰湿さの表現なのでしょうけど、女子はそこまで悪くは描かれてないのですが、
同級生のモブ男子どもがキャラデザも表情も、ドン・グリーズに悪意を持ったノータリンそのもので、
よりもいでも感じられた主人公たちだけの世界と、主人公たちをあざ笑う人たちの世界との温度差が、
アニメスタッフによって露骨に強調されてるなと。そこは、各々の制作のポリシーの違いですが、
よりもいと同じく花田十輝氏がシリーズ脚本を担当していた「響け!ユーフォニアム」では、
既に卒業して回想にしか登場しない、吹奏楽部のやる気のある後輩と対立した頑張らない先輩たちが、
見た目自体はマトモだったのを思うと、こちらの作品ではバカばっかりのクソガキどもの世界で、
ドン・グリーズだけはきちんと悩んでマトモなんだぞって見せようという色分けが微妙ですかね?
リアルのイジメでは、一部の積極的な加害者とイジメに関わりたくない大多数の傍観者がいて、
イジメをする人は根絶しないものの年齢が上がっていくにつれてイジメが減っていくのを見てると、
脚本を書いた、いしづかあつこ監督の考えている思春期男子ってあんなもんかと?
私がリアルに過ごした高校時代と比較すると、幼稚なガキだらけの世界にすごい違和感。
あれが性に目覚めたてかつイジメ全盛期の小5~中2の世界ならともかく、
十五歳の世界にしては子供っぽすぎやしないか?と思ってしまいました。
学校によっては空気が違うのかもしれませんが。
ロウマが家の農作業の手伝いで牛糞をリアカーで運んで言えるのをバカにされていて、
肥やしどんぐりとアダ名をつけられてからかわれているのを見てると、
いやいや?イジメてる連中も随分な田舎者丸出しだろうと突っ込みたくなるものですが、
そういう理不尽な閉鎖的な人間関係を強調することで、序盤は面白くはなかったかな。
各々の深刻な問題を抱えていて真剣に悩んでいるトトやドロップと、
ぼっちなだけのロウマを近い序列で並べるには、
そこまで周りをぞんざいに扱わないといけない話の都合ですなと。
普通の人は高校生になったらわかりやすいイジメをしませんからね。
まあ、いしづか監督がドングリーズトリオに萌え萌えきゅんするためのおじゃま虫としての必要悪。
それが、だらしない表情をした田舎っぺ丸出しな心無い同級生たちなのでしょうね。
子供から大人になる前段階で悩める主人公たちのエモな部分が主成分であるのは悪くはないですし、
花江夏樹、梶裕貴、村瀬歩と、人気男性声優を揃えたドングリーズ役の芝居は良かったですが、
ARIA並のセリフ量で説明的に喋らされている感が強くて、感情いっぱいに表情を見せていて、
キラキラや手ブレなどと多用した画作りであるはずが、キャラへの共感も没入感も薄くて、
ドタバタコメディな部分はともかく、人生上手く行かないことだらけだけど心に“宝物”があれば、
生きているみたいな話とは思うのですが、青春ストーリーとしての感動はイマイチだったかな?
序盤から散々に匂わせがあったドロップのアレをきっかけとした、
95分間のアニメ映画で本編ラスト15分ぐらいでアイスランドに行く展開が拙速かつ強引であったりで、
よりもいとドン・グリーズを比較すると、
話の尺の整理と花田十輝氏との脚本の構成力の違いが見られたでしょうか?
よりもいに他の人ほどハマってない自分としては、
よりもいに似た画作りで感動を呼ぶ試みで作られた作品のはずが、
技術の流用はあってもシナリオ面では足りない部分だらけのアニメだと思いました。
スタッフが少年の世界を描きたいので、
よりもいに出てきそうなキャラデザのヒロイン?のチボリの出番が殆どないですし、
主人公トリオに女子を入れたほうが売れただろうアニメなのですが、
男子のみで構成されてないと作れない距離感であったり、
女性が描く少年像にありがちな友情以上の過剰な依存関係などが存在しないなど、
ドン・グリーズの描き方は悪くはなかったですけどね。
思春期に見たら良い話だったかもしれませんが、
そこまで心が若くはないためか自分はそれほどは刺さらずに楽しめなかったです。
これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。