Witch さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
タツノコプロらしい魅力的なヒロインと「未来を担保にお金を融資」という着眼点はよかった
【レビューNo.60】(初回登録:2023/5/20)
オリジナルアニメで2011年作品。全11話
(ストーリー)
近未来の日本。末期的な危機が叫ばれていた日本経済であったが、密かに混じる「ミダス
マネー」によって回復しつつあった。
大学生・余賀公麿の夢は平凡に暮らすこと。公務員を目指しながらアルバイトを掛け持ち
する日々。
そんな彼の元に突然現れた金融街の使者・真坂木。
「未来を担保に、ご融資させていただきます」
と言われ、多額の金が銀行口座に振り込まれる。公麿はその金に何気なく手をつけるが、
そこで公麿を待っていたのは金融街にて自身と周りの人々の未来を代償にした、ミダス
マネーの奪い合い「ディール」を強制される「アントレ」への道だった。
(評 価)
・ありがちな使い魔のバトルモノに金融要素を掛け合わせたもの
ネタバレ的な説明になるが
・「アントレ」と呼ばれるプレイヤーは「アセット」という使い魔のようなものと協力
し、ミダスマネーの奪い合い「ディール」を毎週行う義務がある。
(ディールが行われるのは、「金融街」と呼ばれる謎の異世界で、世界に9個所存在)
→ ミダスマネーはミダス銀行が発行する黒い紙幣で、すでに現実世界に混入し経済
の一翼を担っている。アントレには見分けがつくが、一般人には区別できない。
{netabare}・バトルは資金力が密接に関係している。基本ルールは
「攻撃を受けたら資金が減り、コストをかけて攻撃を当てれば資金が増える」
なので資金か多いほど戦いは有利。
(ただし勝利条件は総資本増加率(%)の高い方なので、小資金でも勝利可能)
・ミダスマネーは「自分の未来を担保に融資」されているので、ディールに敗北すると、
その負け方に応じ、現実世界の未来に影響が出る。
(なので有力者が大敗すると現実世界への影響が大きいため、わざと僅差の勝利で影
響力を最小限に留めようとするアントレも存在する){/netabare}
要約すると、物語の大筋は
「自分の未来を担保にミダスマネーを調達し、それを元手にアセットと協力し資金を増
やしていく」って感じですかね。
まあゲームのライフや攻撃力等をお金で表しているイメージで、そのバトル結果が現実
世界に影響を及ぼすところが、本作の特徴といえます。
バトルモノとしては、普通に楽しめるという感じでしょうか。バトルシーンはスピード
感等ありいい出来なんですが、ただアセットの能力頼みという面が強く、特筆すべき点
がないのが難点ですかね。あと
・作中ではディール中アントレが負傷すると、流血するようにミダスマネーが溢れ出し、
損失を出しているような描写がある。
・隠しアイテム的にアセットが株を持っていて、それをバトルの最中に売りに出して、
一時的に資金を調達してパワーアップが図れる。
等なんとか「金融」の色を出そうという、スタッフの努力が伺えますね。
・バトル以外にも哲学的な示唆に富み面白い
ディールの目的は上述通り「資金を増やす」ことですが、では稼いだお金を何に使うの
か。{netabare}ある者は自分や家族のために、またある者は「今」の弱者を救うためボランティア
に携わったり、また「国の借金を一人で背負う男」→ 国債を稼いだミダスマネーで買
い取り日本経済を支えてる強者なんかもいます。彼らは彼らなりの信念を持っており、
そんな彼らと交わった公麿は何を思うのか・・・。
公麿自身もディールで打ち負かした相手を訪ねたりと「金融街でどう生きていくのか」
を彼なりに模索しています。
・「可能性が失われた未来しか残らないなら、現在がある意味がない!」
・「それは強いものの論理だ。遠くを見る余裕のある者の理屈だ。本当に弱い者は、
その日、その日をもっと切実に生きている!」{/netabare}
スタッフ的には単なるバトルモノだけでなく、こういう哲学的な内容もバランスよくや
りたかったのかなっというのが伺えますね。
・タイトル「C」の意味
これもネタバレ要素が強いですが
「Calamity、Catastrophe、Chaos、Clash、Crisis、Collapse等」の頭文字からきており
どこからもミダスマネーが調達できなくなる「市場閉鎖」を意味するようです。この状
態に陥ると、
{netabare}→ 金融街と共に影響範囲内にある人間や土地が「存在しなかった」ことになり消滅
→ それにより現実世界の国も消滅 → その影響が他国にもおよぶ
(まあ早い話が「世界大恐慌」をイメージしたもの)
ということで、これが「『C』の連鎖」と呼ばれ、終盤はこの事態に対処するために、
「国の未来を担保に「現在」を救うために資金を調達するのか、「未来」を守るために
それを阻止するのか((担保として失った)未来を買い戻す)」
の選択を迫られるという展開になります。
物語として前半は個人戦が続きますが、だんだん上述金融危機の回避やインフレ、通貨
の信用といった国家レベルのマクロ的な話にシフトしていく感じですね。{/netabare}
・タツノコプロらしいキャラデザがかわいいヒロイン
公麿のアセットは「真朱(ましゅ)」と呼ばれ、頭から弧を描いた角を生やした美少女
の姿をしていて、タツノコプロらしさが出ていて、個人的にはストライクでしたね。
・緑色の瞳に茶色のツインテールで、敢えて「スレンダー」と言っておこうw
・ツンとした感じが絶妙だが、結構表情も豊かで仕草等もかわいい
・好奇心旺盛な性格で、カップメンが好物になったり、キスに興味を持ったりする
・新人のアセットらしいが、かなりの実力者で必殺技も持っている
初めは訳が分からずパニックに陥ってる公麿を叱咤することも多かったが、次第に理解
しあっていく過程は微笑ましいです。
個人的には「『真朱』を愛でる作品」として観ていたところがありますね。
タツノコプロも(見た目だけでなく、ツンで快活な)魅力的なヒロイン作れるじゃんw
それに「未来を担保に融資」という着眼点はかなり面白く、未来のために今何をすべきな
なのかといった、哲学的な示唆に富むシナリオ構成はなかなか見応えがあったと思います。
ただバトルの中に「金融要素」を組み込もうとした努力は評価したいですが、それが作品
独自の面白さに繋がっていない点が・・・小難しさに難色を示した方もおられるのでは。
しかし金融的な要素として「通貨の価値とは一体何なのか」を今一度問うようなテーマで
あったり、「未来を担保に資金を調達」というのは、今の赤字国債を発行し続ける日本政
府を暗揄しているのかなとも受け取れますし、「単純なバトルモノ」で終わらず、
「『お金』をテーマに、結構いろいろ考えられて作られてるな」
というのは随所に感じられたので、個人的には「良作認定」ってことで。
OP「 NICO Touches the Walls/マトリョーシカ」はOP映像と合わせ、ホント秀逸でした。
マトリョーシカの構造で「生きるために着込んだ鎧」とか「さらにちっぽけな俺の殻」とか
絶妙に歌詞で表現しているのは天才かよっとw曲もロックでバトルの高揚感を煽る感じだし。