101匹足利尊氏 さんの感想・評価
4.6
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
精神的にも物理的にも痛切な竜虎の純愛
原作ライトノベルは未読。
【物語 5.0点】
監督・長井 龍雪氏✕構成・岡田 麿里氏のタッグによる2クール連続アニメ化作品。
青春をこじらせたJKがガチで殴り合うことで有名な恋愛作品。
自分や相手の気持ちが分かっていたらモヤモヤしない。
この気持ちが恋なのか何なのか、どうして良いかぶつけ所が分からない。
自分のことならまだ我慢できる。けど私が想っているアイツが傷つくのは我慢ならない。
殴る蹴るに発展する修羅場が二戦ほどありますが、
心の痛みをオブラートに包まず描けるスタッフ陣の手腕もあって、
暴力に至る過程には非常に説得力があります。
ここまでならまだ物語4.5点。
満点に至ったのはこの痛切な青春劇を若気の至りだけで済まさなかったこと。
(※核心的ネタバレ){netabare} 竜児のシングルマザー・泰子の駆け落ちと実家の両親との絶縁。
駆け落ちを企てた竜児と大河が、泰子の二の轍を踏むのか?と思わせておいて踏みとどまった展開。{/netabare}
大河の父が体現した大人の身勝手ぶりなどとも合わせて、本作は家族愛をも内包した懐の深い作品。
ティーン世代に消費されるだけで終わらない、年を重ねても心に残り続ける名作だと感じました。
その観点から、私が一番泣けたのは、{netabare} 泰子が久しぶりに再会した母に竜児を元気にでっかく育てたねと労われるカット。{/netabare}
【作画 4.5点】
アニメーション制作・J.C.STAFF
作画カロリーだけで評価すれば、{netabare} 大河VSすみれ戦{/netabare} の迫力を勘案しても作画4.5点は過大でしょうか。
ですがキャラクターを捉えたアニメーションが素晴らしかったのでこの評点。
主題歌アニメーションでメインキャラたちが各々の歩き方で動く様が象徴的。
このキャラならこういう動きをするだろうという追求が半端ない。
前期OPアニメのニーハイを履いて睨みを効かせる大河や、
誤解を招く怖い目付きで嬉々としてアルミサッシ窓の溝の汚れをほじくり出す竜児など、
この上なくキャラクターが表現されていて毎回笑いますw
殺風景な大河の部屋が示唆する親の愛情の無さから来る冷たさ、寂しさ。
大河がつい転がり込みたくなる高須家の素朴だけど家族の温もりを感じる畳部屋。
背景、プロップデザインもキャラクターを好アシスト。
その他、歪み背景を用いた人物のクローズアップ。
桜の花びら二つ、すずめ二羽による番(つがい)の暗示。
長井監督らのコンテによる心情表現追求への意欲も伝わってくる上々の作画です。
【キャラ 5.0点】
主人公の高2男子・高須竜児……目付きが怖いので周囲からヤンキー?と警戒されがちだが根は優しい家事できるマン。櫛枝実乃梨に恋している。
ヒロイン・逢坂大河……小柄だがイライラがすぐに暴言や蹴りとなって出るため周囲から“手乗りタイガー”と恐れられているツンデレ美少女。北村祐作に恋している。
櫛枝実乃梨……大河の親友。愛称みのりん。{netabare} バケツでプリン{/netabare} など独特のノリで盛って来る。ソフト部キャプテンと多数のバイトを掛け持ちする元気娘。スケジュールを埋めて自分の本心の明確化を先送りしている一面も。右投左打。
北村祐作……竜児の親友。丸メガネのクラス委員長。真面目だが鬱憤が溜まった時の弾けぶりが危ない。よくやらかして、よく傷付く。あとやたら脱ぐw後の{netabare} 失恋大明神。{/netabare}
竜児と大河が互いの想い人攻略のための“共闘”から関係を始め、やがて進展の予感。
親友の気持ちを考えると、対応に難儀する絡まり合った人間関係。
このままだと膠着しますが、そこで投入され掻き乱すメインキャラ5人目。
川嶋亜美……転校美少女。モデルとして“大人の世界”も垣間見ており、上記4人の関係性を、定位置の自販機の隙間から斜に見て、ガキっぽいハッキリしないと見下しがち。
だからと言って自身が大人というわけじゃないのが厄介。4人が明言を憚る気持ちを毒舌で言語化する起爆剤ポジション。よって、みのりんとは非常に相性が悪い。
その他、生徒会長の狩野すみれ、北村君への恋慕で周囲を巻き込むギャル木原麻耶など、
脇も躍動し、淀みのない展開を支える。
こんな人間いるかよwとの強烈なラノベキャラで視聴者の胸ぐらを掴む。
そのキャラクター性が実は葛藤に根ざした深い人間心理の表現でしたで視聴者をぶん投げて悶絶させる。
良作ラノベアニメの黄金パターン。
【声優 4.5点】
ヒロイン大河役の釘宮 理恵さん。“Ti型釘宮病ウイルス”の感染源。
くぎゅのツンデレの中でも特に武闘派として名を馳せるヒロイン。
「うるさい!」「バカ!」の定番ツンボイスもやや低音でドスが効いていますw
ツンが凶暴なだけにデレも破壊力抜群♪
特に終盤(※核心的ネタバレ){netabare} 竜児に何度もキスをせがむカット。{/netabare}
“S型”感染者の私も含む、釘宮病患者たちの「くぎゅううううううう!」の断末魔が聞こえて来るようだw
さらには櫛枝実乃梨役の堀江 由衣さんが口調不定の“みのりん語”を流暢に操る。
川嶋亜美役の喜多村 英梨さんが高飛車ボイスで俯瞰した人間関係の解説を試みる。
当時、一線級の若手女性声優が、強力スリートップを形成。
高濃度のツンデレを受け止めるのが主人公・竜児役の間島 淳司さん。
一方的に「駄犬!」となじられる、ひ弱な少年役ではなく、
共闘関係にある大河とは、外れ者同士の共感性も醸す名コンビ。
ただ、いくら分かり合えたからと言って、夜の住宅街で、大河と一緒に{netabare} 電柱蹴る{/netabare} のはおよしなさいw
異様な存在感を放つのが後藤 沙緒里さん。
兼任したインコちゃん役で、今にも死にそうな奇声を上げ、
高須家の籠の中で、いつもブサ顔で痙攣している?生意気な怪ペットを熱演w
【音楽 4.0点】
主題歌は前期OP「プレパレード」と後期ED「オレンジ」をヒロインズ3人。
前期ED「silky heart」と後期OP「バニラソルト」を実乃梨役の堀江 由衣さんが歌唱。
電子サウンドで古の恋愛歌謡曲をリバイバルしたような独特な構成。
「プレパレード」などビビビビと、プロレスショーで披露された洗脳光線?までアレンジされる電波ぶりですがw
恋の進展と共に徐々に心に染みてくるのは、やはり洗脳でしょうかw
最終盤EDで「オレンジ」を2番に入れ替えて糖度アップさせてくる仕掛けも味でした。
劇伴担当は橋本 由香利氏。
平時は穏やかなミニマル・ミュージックに徹してキャラの掛け合いを下支え。
ですがここぞの場面ではピアノベースの心情曲「雨音ロンド」などで、
キャラ心理の奥深くへと視聴者をナビゲート。