青龍 さんの感想・評価
4.6
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
「人は二度死ぬ。一度目は自分が死んだ時。二度目はその名がもはや口にされなくなった時」
私が本作を見て真っ先に思い出したことは、大学を卒業した数年後に、大学時代の部活の一学年上の先輩が交通事故で亡くなったときの話だった。
先輩とは、体育会系の厳しい部活で3年間苦楽を共にし、長期休みには一緒に1ヶ月弱の長期海外研修もしていたので、様々な思い出があった。
大学卒業後は、互いに多忙で連絡を取ることもなかったが、先輩の訃報を同期の友人から聞いた時に、私の携帯電話に残された先輩の連絡先を消すかどうかで悩んだ。
当たり前だが、その連絡先から連絡が来ることはもう二度とない。また、鬼籍に入った人間の連絡先を残すことに抵抗がある人もいるだろう。
しかし、このとき、私は先輩の連絡先を消さなかった。なぜなら、今までも卒業後に連絡を取っていなかったけれど、こっちから連絡したらひっこり返答が来るんじゃないかとか、もしかしたらこの連絡先から連絡が来るんじゃないかと思ったからだ。
今思えば、連絡先まで消してしまうと先輩を完全にこの世から消滅させることになるような気がして、それが怖かったからだと思う。
別の言い方をすれば、私は先輩のことを忘れたくなかったし、私が忘れさえしなければ、少なくとも私の中で先輩は生きていると思ったからだ。
「人は二度死ぬ。一度目は自分が死んだ時。二度目はその名がもはや口にされなくなった時」という言葉を思い出した。
(以下、結末に関するネタバレありの感想)
{netabare} さて、本作の主人公シンは、私なんかよりずっと辛い経験をしてきたのであり、私と同列に語るべきでないことはわかっている(しかし、きっと幸福なことなのだろうけれど、私はシンのような過酷な境遇にない中で、彼に共感できる出来事が上の話だった。)。
まして、シンは、辛い思い出の方が多いのだから、自分も死んで楽になりたいという気持ちはよくわかる。加えて、死んだ者たちから、なんでお前だけ生き残ったんだと思われるかもしれないという恐怖もあるだろう。
しかし、ある意味、シンが生き残るために彼らは犠牲になったのだろうし、シンが生き残って彼らのことを「忘れない」ことも「アンダーテイカー」(葬儀屋)として、死んだ者たちがシンに期待した彼の役割なのだろう。 {/netabare}