チモクロ さんの感想・評価
2.9
物語 : 3.0
作画 : 2.5
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
ファンタジー医療ドラマ?
バリバリ働いている薬学研究科が異世界転生して薬師として頑張る話。チートといえばチートで魔力がめっちゃあることと、片目で見ると病気が目に見える、あと生まれつき持ってる水の魔法の応用?で、物質の構成を理解していればその薬品を生み出したり消したりすることができる能力を持っている。よくあるといえばよくある転生ものだし現代の医療の知識を活かして活躍するという展開上、前世における彼の薬学に対する知識や研究が活かされるため、人を治すといっても適切な対応と薬で治すというものなので、簡単な俺ᎢUEEEにはなっていないところは評価できる。
展開が早すぎると感じたが、よくある1クールじゃ足りなかったパターンなのだろうと思う。薬局を開店するまで、周りの人間に認めてもらうまで、外部の強大な力を持つ教会側に認めてもらうまで、どれも早すぎると感じる。心理描写がそこまで丁寧でない。ラストに立ちはだかる敵としてもそうなんだ悪いやつだねーという印象しかない。
あとファンタジーが活かされていないと感じる。一応魔法(ここでは神術と呼ばれるが魔法で良くない?)はあるし、この世界では守護神のようなものがつきその恩恵が得られる=魔法なので、主人公の能力の理解のされやすさに一役買ってはいるのだが、転生した主人公のチート能力にそこまでのファンタジー世界での整合性は必要なのだろうか。ついでに結局出てくる病気が現代のものと一緒なので、これはひどい風邪だな!よし抗生物質を生み出して飲んでもらおう!治りました!では、それ現代でも書けるドラマじゃない?なんというか、ファンタジー特有の病気や薬が出てこないのにその異世界である必要があるのか?という話。医療が遅れている世界に行けば普通に活躍できるわけなので、剣と魔法の世界である必要性を感じない。
その手のドラマで名作の「仁」があるが、あちらではその時代でできる地道な研究法などで頑張るし、医療器具が無いなかで工夫して奮闘する様が楽しいのだ。そこらへんの試行錯誤はすべてチート能力で片付けてしまうのがもったいないと感じる。原作ではあるのかもしれない。スライムの粉末からできる物質が魔王病に効く!とかそういうの。
それから俺ᎢUEEEものとは違うことは前述したのだが、それでも理解してくれず凝り固まってつっかかってくるその世界における腐敗した医療組織的なものが出て来てもそれらをぶっ壊すみたいなスッキリする展開も無かったのは残念。転生ファンタジーって散々鬱陶しがられているが、ここまで市民権を得るほど発展したのはそこらへんの痛快感が結局は美味しいからだと思う。
貴族と平民の差別と平等に関しても描いてはいるのだが、かなりさっくり民衆に理解されるのもよくわからない。その世界のスタンダードから逸脱したものとして教会にも目をつけられる展開はあるが中途半端に感じる。
あとはラスト付近の話になるが{netabare}あの取ってつけたような悪役はなんなんだ??かつての天才薬師とかそんなのはどうでもいい。悪に落ちる意味がわからない。人体実験を繰り返したから即悪とはならんと思うんだよね。医療においては。現代では流石にないが臨床とかもあるし動物実験は行われてる。それが研究のためであるならそこまで違和感は感じない。何度も言うようだが医療が遅れている時代なのである。悪逆非道の限りを云々とまでは思わない。実際ペストを流行らせて〜はひどいことするなとは思うよ。で、流行らせてその後は?なんか敵対する国がどうとかな話はあったけどそんな設定はちゃんと活かせ。病気をまいて乗り越えた人間は更に強くなっていて素晴らしい!的な理屈が何一つピンと来なかった。研究者が闇落ちするにしてももっとなんかあったろ。冒頭ででてきたすごい魔法でドカーン!解決!ほんとに????入れなきゃ行けなくて嫌々やったクライマックスなのかな?{/netabare}
良かったところとして、主人公の父親がかなりかっこよく描かれている点。そしてその父親との関係などは丁寧に書いているのも好印象。変わってしまったかつての息子に対しての寂しさや新しい薬の知見への興味、研究者同士として信頼しあう点はとても良かった。あと転生して得たチート能力をあくまでもこの世界では異端と映ってしまい…というのはリアリティがあるし、ファンタジーで医療ドラマをやろうという発想自体は評価したい。
感想としては辛めに書いてしまったが、主人公もいいやつだし研究熱心で応援でき、多少作画が荒いがおっさんなどのいいポジションをちゃんとかっこよく描いている点など良いところも多かった。すごく惜しい作品という印象