チモクロ さんの感想・評価
3.5
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
悪役令嬢ものかと思いきや?
乙女ゲームの悪役令嬢のキャラが好きな小林さんに誘われてゲームを一緒に遊んでいたらこっちの声が乙女ゲームの中の王子に聞こえている?!という転生系や悪役令嬢系をちょっとひねったストーリー。
全体的なアニメとしてのクオリティがちょっと残念ではあるのだが、ここはキメ顔!とかのあたりは丁寧に描いているなどの努力が見られた。声優さん達も合っていてとても良かった。
現実側のプレイヤー小林さんの推しである悪役令嬢リーゼロッテはツンデレなのでうまく王子(皇太子?だがここでは簡略)に気持ちを伝えられず誤解されやすいが根はいい子という設定。そこで王子には声が届くのを利用してアドバイスを送り二人の恋を応援するという流れ。
バットエンド回避系の悪役令嬢ものは数あれど、そんなにひねった設定にしちゃって大丈夫かな?と最初のうちは思っていたが、なかなかどうしてちゃんと物語としては良くできてる作品。この手の作品で令嬢と王子とくっつけよう!ってのもなるほど正しいハピエンという気がする。ご都合主義と言われると何も反論出来ないが、ご都合主義だろうとなんだろうと推しは無理やり幸せになってほしいし、好きあってる男女は強引でもくっつけ!という視聴者読者がわの気持ちがよくわかるのでそこは嫌ではなかった。そもそも応援するということしか出来ないわけで、ここのリーゼロッテちゃんは王子が好きすぎて嫉妬してて辛く当たっちゃうんだよ、と聞かされたところでツンデレを正しく愛せる王子でなければ恋愛は成り立たない。私はツンデレが好きだからそんな事実を聞いてしまったらキュンとくる王子に理解が及ぶが、そうでない人から見ればなんでこんなにときめくのか?と意味不明になる。そのあたりが受け付けないという人も出てきそう。
サブのカップル達もちゃんと意識し合うところから理解し合うところまでを丁寧に書いていて、どのカップルも応援できる。完成度という点では及ばないが月刊少女野崎くんを思い出した。ちゃんと現実側の小林さんと遠藤くんも丁寧に描いていて、いわゆるとっととくっつけタイプのカップルになっているのも良い。特に好きなのはジーク。王子だから歯の浮くセリフもなんのその、ツンデレだから素直になれないリーゼロッテをどこまでも受け入れてすごく好きなんだなという描写が良かった。ゲームにおけるメインヒロインの扱いもかなり重要な役どころに置いたまま別に復讐したり見返す展開などは無いが、ちゃんといい相手を作れて幸せに持っていこうとしている。悪役令嬢を幸せにしたいからといってメインヒロインを置いてけぼりにはしてないところも好印象。
少し難点を言うと、現実側の二人のアドバイスがゲーム側のでのハッピーエンドを大きく揺るがせてはいない点がある。なんというか、恋の相談をする友人レベルの進行しかしていないというか。よく恋愛漫画でありがちな、あの子が冷たい嫌われちゃったのかな?に対してのあの子を信じてやれよと言う友人。あれくらいなのだ。それでくっつくんならほっといてもくっつくだろとも思うし、最終的なラスボスに対してもみんなに頑張ってねくらい言っとくレベルになってしまってるのは残念な点。この手のゲーム世界に介入できるものに求めるのはそんな手があったか!というアイデアでピタゴラ的にハッピーエンドに持っていってもらいたいというこちら側の勝手な願望が出てしまうが、それに関してはそこまで満たされない。声が聞こえるのは王子だけでゲーム的にはメインヒロイン視点で進むのでその場にヒロインがいないと何が起きてるか現実側からはわからないという制約はとても面白いのだが生かされていない。
作画や動きに関しての完成度的なマイナスとアドバイスの生かされ方に不満は残るが、それでも推しが幸せならなんでもいいや!という気持ちはすごく伝わってくるし、可愛いカップル良いよね?!というメッセージ性も感じる。細かいことはいいんだよ!ととても清々しくて良かった。