青龍 さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
ミュージカルは苦手だけど、かげきしょうじょは大好きです。
ついでにいうと、恋愛ものの少女漫画も苦手である(本作は少女漫画が原作)。
そんな私でも続きが気になる作品であり、あっという間に視聴完了。
本作は、現実世界でいうところの「宝塚歌劇団」の団員を育成するための養成学校のお話である。
もっとも、当然というべきか…話がミュージカルで構成されているわけではなく、恋愛要素も薄めで、十代後半の女性たちが華やかなショービジネスの世界を一生懸命に目指すところが話のメインとなる。
したがって、上記のような属性を持つ私にとっても、とっつきやすい作品であった。
本作のおすすめポイントは、キャラの魅力とそれを引き立たせる物語の巧さにある。
主人公のさらさは、身長178センチ、手足は長く、屈強な体幹は常に安定した姿勢をもたらし、立ち居振る舞いの華麗さを現出させる(例えば、フィギュアスケートでジャンプ後に体がブレるときれいに見えない)。加えて、機転の良さというスター性も兼ね備えている。
誰から見ても、男役のトップスターになれるほどの天賦の才を有している。
サブヒロインのあいは、幼い頃から可愛いといわれるのが挨拶代わり、ほとんどファンに笑顔を振りまくことなく日本のトップアイドルグループの人気選挙で13位になるほどの美貌の持ち主である。
誰から見ても、娘役のトップスターになれるほどの天賦の才を有している。
しかし、才能があってもそれを自覚して磨かないことには輝かない。
(以下、若干のネタバレを含む本作の紹介)
{netabare} まず、さらさは、性格が祖父譲りの下町気質で天真爛漫なのだが、幼少期に歌舞伎役者を目指し女人禁制であるがゆえに挫折せざるをえなかったという心の闇を抱えている(なお、出生に梨園との関わりがあるようだ)。
次に、あいは、性格が暗く、ファンに気持ち悪いといってグループを辞めさせられた過去を持つ(ただ、そうなってしまってもやむを得ない事情がある。美人が常に得をするわけではない)。
また、自分の居場所を確保することが入学の目的だったため、自分の才能を磨いて歌劇団の上を目指す必死さはなかった。
本作は、両者の対照的な性格が互いに影響を与えつつ、様々な問題を抱えるダイヤの原石をどう磨いていくかという成長ストーリーにあくまで主眼を置きながら、彼女たちを取り巻く人たちの背景を丁寧に描くことで話に厚みを持たせている。
さらさとあいが持つ圧倒的な才能を前にして、それに引け目を感じる子、歌劇団OGを祖母と母に持つ娘の苦悩、いつも一緒だった双子が一緒になれなかった苦悩、僅差で役を貰えなかった苦悩…
歌劇団という配役の重要性の差に天と地ほどもあるヒエラルキー社会(シビア)で、自我やアイデンティティを確立し、大人の階段を駆けあがっていく、若いっていいね! {/netabare}
(おまけ)
最近観たYouTubeの動画で、津田健次郎さん(本作には出ていない…)が、演技とは、自分が過去に経験した感情をどれだけリアルに再現できるかだというようなことを言っていた。
要するに、自分が経験したことのない作った感情にリアリティは感じられないということらしい。
これを知っていたので、本作では、恋したことがない、人を○したことがない、自らが経験したことがないことをどう表現するのかという過程にリアリティを感じられた。津田さんありがとう。
なお、花澤香菜さんが、生き生きと意地悪な先輩役を演じられていたが、あの声でその役ってある意味ホラーなので声優ってすごいと思った(一般論として、普段演じることの少ない悪役を演じるのは楽しいものらしい)。