たわし(爆豪) さんの感想・評価
3.6
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
人間社会の問題を短絡的に捉えているのが残念
以前の劇場版で、人間が生きる規範とする「法律」の根本概念である「主知主義」と「主意主義」の話が出てきたので綺麗にまとまって完結したと思いましたが、まさかの続編の劇場版が出ました。しかも、この作品の後に恐らくもう1篇制作されるでしょう。
今回はシビュラシステムの生みの親たちが残したある書物を巡る争奪戦という感じでしたが、サスペンス要素が加われるかと冒頭数分は思いましたが、そんなことはなく案外普通の刑事ものでした。
シビュラシステムを日本国内だけでなく世界まで広げてAIによる人類の完全統治を目論む組織が敵でしたが、敵の目的がかなり短絡的な「凡庸な悪」とでしか定義できていなかったため、非常に説得力の薄い映画だと感じました。
「主知主義」や「主意主義」といった概念は「人間主体」としての行動原則の問題なので、非常に観る側に考えさせる余地がありましたが、このシステムを単に「神」の代行者である「AI」に任せる。とアクロバティックに纏めてしまったがために、問題が「人間論」から「神論」に挿げ替えられて、議論の余地がなくなってしまった気がします。
これはもともとフィリップKディックなどのSF小説家が定義する「完全なる管理社会が真の人間の幸せなのか」がテーマではありますが、そこに人間として「個体の不完全さ」がそもそもあるからこそヒューマニズム(人間論)として成り立ってた訳であり、そこには「道徳」や「倫理」勿論、「法律」といった我々自身の問題が出てくるわけです。
しかし、今回出てきたAIという「神」が、概念として出てきてしまったがために、まるで勧善懲悪モノのように非常に問題が矮小化していると思われます。
ラストの結末も含めて賛否両論がありそうですが、次の作品で「そもそもが不完全な社会をどう生き抜くのか。」という問いに真摯に答えて欲しいと思います。
追記:後もう20年前の作品になりますが、構成や美術が押井守の「ゴーストインザシェル2」こと「イノセンス」のオマージュが多かったのは流石冲方丁さんの脚本ということで、「神山健治」さんと同じく直系の弟子筋なんだろうなと思いました。