RFC さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
これは妻であっても嫁ではない
放送当時から気になっていましたが、
放送当時は私のメンタルヤバ目だったため、
「ダークなのを見るとマジでヤバいかもしれん」と敬遠。
機会あってこの度視聴開始。
【作品概要】
両親に見捨てられ、親戚にも厄介者扱いされて
自分の存在価値を感じられなくなった日本の女子高生羽鳥チセ。
生きてる意味もなく、自殺しようとしていたところを
「死ぬくらいなら自身をオークションに出品しろ」と言われ、
英国に。
そこでとある異形の魔法使いがチセを
7億円で落札するところから物語は始まります。
【作品に対する感想】
人の価値観から外れた魔法使いと、
自分の価値を捨てた少女の物語。
タイトルとエリアスの絵的にてっきり中世くらいの話かと
思ってたら、思いっきり現代の話でした(^^;
いきなり人身売買から始まるという
なかなか衝撃的でダークな入り。
ただ作品全体としてはそこまで極端にダークなわけではなく、
程々に笑いや暖かい物語もはさまれ、どろどろの
ぐっちょんぐっちょんというわけではありません(語彙力)
ネガティブな心情や迷いを丁寧に描いているところが
私的に高評価でした。
主人公のチセはもちろん、アンジェリカ、リンデル達
サブキャラ、人の価値観を外れたエリアスもね。
2期も必ず視聴します。
1)物語
精霊や悪霊など見えざるものが見えることで
全てを失った・捨てたチセがいろんなもの(良くも悪くも)と
出会い、自分を見直していく良い物語だったと思います。
あと種族や立場や思想によっても、同じ事象が別物の意味になる。
そういった描写が好印象です。
双方の持ってる物差しが違いすぎて会話にならないって感じでした。
常識というのがどこまで通づるものか。
2)作画
幻想的な作画が多く、とても綺麗でした。
特にドラゴンの国がお気に入りです。
エリアスは淡々と、チセは口数が少なくローテンションな中、
ときどきエリアスがポンチ絵になるのが割と癒しでした。
ちょっとARIAのにおいを感じます。
作風がマットで重めなので、丁度良いバランスだったと思います。
あと癒し系の見えざるものがかなり可愛いのもバランサーでした。
3)声優
竹内良太(エリアス)
落ち着いた太い声で、これは惚れます。
種﨑敦美(羽鳥チセ)
「アーニャがんばる」の後にこれを聞いたら
とても同一人物とは思えません(^^;振り幅凄いですね。
4)音楽
まずは賢者的立ち位置のリンデルの歌ですね。
透き通った声で聞き惚れました。
ED 環-cycle-が作風にとてもあってて
お気に入りでした。
BGMはロケーションが英国の田舎なせいか
牧歌的な曲が多く、好きでした。
あとピンチのシーンでよく使われてた
ピアノを叩きつけたような曲…というかSE?
印象的です。
5)キャラ
これは妻であっても嫁ではない。
チセとエリアス…二人のキャラが凄く惹きつけられました。
どっちも共感できるんですよね。
二人の悪い部分をくっつけると私になりそうです。
{netabare}
エリアスが人の感覚が分からないこともあり、
彼の愛情は「悪意がないモノマネ」なんですけど、
それを分かった上で相手の輪郭を手探りで探していく…。
お互いが分からないなりに相手を理解しようとする。
そういうゆっくりとした描写が良かったです。
{/netabare}
➀羽鳥チセ
冒頭の死んだ目が印象的です。(逆に惹きつけられました)
この娘の諦め方、すごく共感できるんですよね。
ここまで自己肯定感が下がってしまった状態から
回復するのって、物凄く時間と労力がかかると思います。
他者からの優しい言葉も、頭で意味は理解できても
心に届かないんですよね。
ルツの言ったように、呪いが解けてほしいと私も思います。
➁エリアス
最初と中盤以降で印象がかなり変わる御仁。
全てを悟ったような淡々とした賢者のような雰囲気でしたが、
中盤からは常識から乖離気味で子供呼ばわりされる羽目に。
ただこの乖離は悪なのかと言われればそう割り切れません。
後半にその理由は語られますが、人間の物差しの正しさは
どこまで通用するのかと考えさせられます。
確かにこやつの言動を人間の物差しで測ると
おかしい所もあるんですけど、その物差しは
どこまで正しいのか?っていう印象です。
➂アンジェリカ、リンデル
淡々としたエリアスに変わってチセにとっての
賢者的立ち位置の二人。
この二人の安心感、すごく心地いいです。
6)印象深いシーン
{netabare}
➀顔が簡単に変わるエリアス
顔って割と人のアイデンティティに
直結するところと思うんですよ。
ポンポン変えられるエリアスを観てると、
人が他人を認識する要素って何なんだろうって
ちょっと複雑な気持ちになりました。
➁ドラゴンの生死感
死はあくまで輪廻の通過点という思いが
子ドラゴンまでいきわたってるのが鮮烈でした。
➂ドラゴンの国 ネヴィンの問いかけ
自分の価値を捨てたチセ。
チセは自己犠牲の選択をすることが多い
(そこまで深刻でなくても、自分だけで抱え込もうとする)。
彼女の自己犠牲は崇高なものというよりは、
自分の命が守るべきものに入っていないことで
簡単に自己犠牲の選択ができてしまう
歪んだもののように思えます。
彼女にどんなに「自分を大切にして」と言っても
届かないんだと思うんですよ。
ネヴィンはチセが大切と思えてる他者を貶めるという
言い方で問いかけました。
これでも人によっては届くかどうかは分かりませんが、
チセの場合少し心を動かされたようです。
こういう繊細なやり取りと機微がとても好印象でした。
➃ドラゴンの呪いとチセ
死にたくなくなったとたん、死ぬことに。
死にたい人が死にたくなくなくなるだけでも、
物凄くエネルギーって必要だったと思うんですよ。
それを慮ると、もう皮肉すぎて遣り切れない思いでした。
{/netabare}