nyaro さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
読者への挑戦?ジャンプ漫画…大衆作品への痛烈な皮肉に感じました
この作品の存在自体を知りませんでした。西尾維新氏が原作とのことで、GWでユーチューブで無料公開されていたので見ました。仕掛けがあるのでネタバレすると面白くないかもしれません。
ですので、先にアニメの出来です。いいですね。クオリティは高いです。女子は可愛いし?作画水準も高いです。西尾維新氏ワールド的な表現としての演出や場面転換も上手にできていると思います。
本作の意図として、ジャンプ連載みたいですが、ジャンプ漫画に対する痛烈な皮肉を感じます。また、それをお前等読み取れるか?という読者への挑戦も感じるほどハチャメチャです。それこそがネタバレになる部分です。
{netabare} 主人公だと思っていた冒頭の登場人物がすぐに死亡し、それ以降どんどん視点が移って行きます。マンガ的主人公の成長・成功物語の作劇法の否定です。
強いと思っていたものがすぐに死ぬ。1人称で語る自分の強さや想いと3人称の視点の違いもあると感じました。それぞれのドラマがありますが、死んでしまえばそれで終わりという虚しさもあります。
生き返り=ドラゴンボール的な部分もネクロマンサーを使うことで屍者がよみがえることの不気味さを表現しています。
人間の善悪の相対化…それぞれの事情と方法論を個々の登場人物に割り振ることで、正しい答えがないことを表しています。そして、絶対的な強さ自体を否定していました。
タイムリープ、あるいは多元宇宙(パラレルワールド)ものの、虚しさ、ですね。100の並行世界があるとすれば、99の世界では失敗し死亡しているという部分です。1の成功例に着目すればハッピーエンドですが、その他はすべてバッドエンドだ、ということです。
その他、親子関係のドラマのいびつさというか虚しさ、平和主義の独りよがりなどなどキリがないです。サブタイトルがその辺を読み取るための材料になっていると思います。干支で描いている以上12の視点は最低あると思った方がいいでしょう。
そもそもこのデスゲーム自体が何のためだよ?というデスゲームもの…ひいてはバトル物全体に対する皮肉もあります。(一応掛けみたいですけど、望みが何でもかなうってなんでしょう?屍者も生き返るとか。
それと後付けの設定で物語が進展してそれをセリフで解説される虚しさのようなものも感じます。
そうそう、過酷な12大戦を勝ち抜いた優勝者が司会のおじさんにビビるというのも面白いですね。
そして結末です。何もなかったことにする。願いが無いのが幸せ。これについては最大の創作物あるいは我々に対する皮肉でもあり、真実でもあり、問いかけなんでしょう。
{/netabare}
言葉遊びそれ自体が西尾維新氏にしてはキレがありません。それがまたミスディレクションな感じで作者の人の悪さを感じる作品でした。
これらの批判というよりシニカルな視点・皮肉は対象を探すのは難しくありません。超人気作を紐解けばすべて当てはまる感じです。
意味がない、ひどいストーリーに見えますが、氏の作品ですから一筋縄にはいかないですね。あの色だけついて観戦していた人々を見ると、ひょっとしたらこうやってレビュー書いている匿名の我々すら皮肉にしている感じです。
なお、女子たちがみんななかなか可愛いのが救いですね。私は酉派かなあ。声優陣もひと昔前の超豪華な感じがありました。
そうそう結果的にですけど、飽きずに一気見できます。面白かったです。