「Re:CREATORS(レクリエイターズ)(TVアニメ動画)」

総合得点
85.2
感想・評価
1070
棚に入れた
5281
ランキング
252
★★★★☆ 3.7 (1070)
物語
3.6
作画
3.9
声優
3.7
音楽
3.8
キャラ
3.7

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ネタバレ

薄雪草 さんの感想・評価

★★★★★ 4.8
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

双方向に輻輳する真ん中で

初めて本作を視聴した時、「これはイシューから始める必要がありそう。」と感じました。
というのも、本作のような多主人公タイプの作品は、時として大コケすることが多いからです。
そんなリスキーな作品のストレングスってなんだろう。どうすればそこにフォーカスできるだろう。
ずっと、そう思っていたんです。


本作は、ざっくり言って「みんな集まれ!ア●ン●ャーズ! 的な作風」です。
それは、得てして総花的な印象を持たせるし、いかにもお子様ランチ的な大味になりがち。
実際、あにこれのレビューに「調理法を間違えた。」というコメントが散見される作品に該当していることも、その顕(あらわ)れのように思います。

その理由や背景は、レビュアーさんのバイアスだったり、作品へのギャップ感なのかもと思います。
ただ、本作においては、そのトリガーを引きやすい要素がてんこ盛りになっているのは、まず間違いないと思います。

そもそも、オールスターラインナップというアイディアは、物語の構成上、誰が主人公?主題は何?結論はどれ?と、求心力それ自体が見えにくくなる傾向があり、それだけにいささか安直な悪手に感じてしまいます。

しかも、ア●ン●ャーズ的にするなら、最低でもそれぞれの主人公のバックボーンをしっかり見せることは必須なはず。
なのに、本作は小出しにしてこそすれ、大方は視聴者の想像力に委ねるという丸投げ手法です。

この点が、視聴者に、要らぬ構え、余分なエネルギーを消費させてしまう、かなり挑戦的な手合いになっています。
一方で、初回の絵がヌルヌル動くとか、劇伴や声優さんはすごく頑張っているのにね、となればなるほど、「もったいないシナリオ」と受け取られるんですね。

だから「イシューから始める」となります。
ここで言うイシューとは「論じ、考えるべきテーマ」のこと。
「イシューに取り組む」、「イシューを特定する」などは、ビジネスシーンでよく使われる文言。

その視点でアプローチできれば、と思います。


~    ~    ~


本作は、アニメ、漫画、ラノベ、ゲーム、ネットなどのメディア群と、メインを張るキャラ属性、勇者、賢者、魔法少女。ラスボス、騎士、元刑事。サイコパス、ロボットパイロット、学園美少女らがコラボするマルチ仕様です。

神をも恐れぬ面々を総ざらえしたようなキャスティング。
強烈な個性をぶつけあいながら、大立ち回りをやらかすシナリオ。
なかなかに、卒なく素気のない塩梅になっている微妙さです。

その上で、生一本的な隠し味が、ぬかりなくブレンドされています。
本来なら、媒体の向こう側にいる制作サイドの人たちをリンクさせるという着想はちょっと目新しい。
キャラ=被造物、創作者=創造主と呼称し、双方向に輻輳する群像ドラマに仕立てあげているのです。

加えて、その一端に手をのばす高校生を二人あつらえ、良くも悪くも異彩を放たせます。
純朴な内面性はデリケートな超薄味。そこにサブカル界隈の特濃味を強迫させるという、得も言われぬ食感です。
物語の蓋然性の果てに、それぞれの作家性へと昇華・覚醒させるエンディングは、評価の落としどころがホント難しい。


本作の結語は、いつだって、どこだって、物語の主人公は自分だということ。
その道すじは、ときに重なり、また離れても、同じ志を持ち続ける限り、その意気を戦わせていくというルートです。

狙っているアピールは、キャラと作者との相互愛、ファンとサブカル業界のウインウイン。
昨今に著しくある自己承認欲求を、 "推し" に被せる煽り風潮に乗せながら、そこに生じる情動をさらに交錯・加速させ、新たなムーブメントをうねらせたいという業界の思わくも見え隠れするんです。

とにもかくにも、奇天烈なアイディアですし、込み入った構造でもあるので、ともすれば空中分解しそうなリスクを持ち合わせています。
なので、批判的なご意見が散見されるのは仕方のないことなのかもしれません。

でも、あえて申し上げれば、それさえも業界スジの職人ワザを効かせた調理法ということ。
22話と中途半端な話数も、しっかり計算に入れての構成・演出ですので、いい意味で緊張感をもって視聴できる稀有な作品になりました。

なぜって、お話のクリエイティビティーを究めるなら、バトル恋バナ浪花節、奇想天外どんでん返し、予定調和の大団円は欠かせない要素。
シンデレラフィットする逸品認定を獲るなら、「やっぱりそうこなくっちゃ。」なんですね。


~    ~    ~


初めの一歩は、例えるとこう。

一人あなたが部屋で寛いでいると、突然、ドアをノックする音が。
何事かとドアスコープを覗いたら、なんと推しのキャラクターがそこに居た、みたいな。

翌日は、さっそくデートと決め込んで、腕を組んだり、写真を撮ってはしゃいだり。
まぶしすぎる笑顔と尽きない会話にすっかり中てられちゃうんですね。

そんなあり得ないことに、妄想をたくましくできる人!
そんなシチュエーションなら、課金もヘッチャラな人!!
そんな人なら、本作の面白さに没入できるはず?!なのですけれど。

ということは、多ジャンルに推しキャラを揃えていない人には、箸にも棒にも掛からぬ心境になること請け合いです。


~    ~    ~


次のステップは、こんな感じです。

もしも自分の知る世界のすべてが虚構で、真実は妄想に造られたものと聞かされたら。
自分が、別の世界の住人の娯楽のため、単なる消費のために創られたに過ぎない存在と知り得たら。
そんな彼らが、創作者に会いたがり、直談判したいと言いだしたら。

人には言えない本心を、どこかの誰かにバレバレなんてどうですか?
作られた正義と努力への裏切りを、どうやって納得すればいいのでしょうか?
主人公のアイデンティティーが、土台から崩れるような緊急事態です。

でもごめんなさい。
それが本作のクオリティーを担保する核になっています。
なぜなら、筋金入りの彼ら(被造物と創造主)に、そう誘導させるのが黒幕の狙いなのですから。

その黒幕というのが、軍服の姫君、 {netabare} アルタイル {/netabare}。
本作の主人公の一人で、同人誌レベルのアマチュアが造作した女性キャラクターです。
彼女は、ネットに生み落とされ、ネチズンに育てられます。
望みもしない超絶能力を、得手勝手に付与される被虐のモンスターなのです。

アルタイルは、彼女の創造主・セツナを自死に追い込んだ "全て" を憎悪し、復讐し、滅ぼそうとすることで、魂の救済を果たそうとします。
でも、そうだからと言って、世界随一の主人公になりたいわけではありません。

たった一人のための鎮魂譚を "再創造" し、自爆し、消滅したいとする哀しき Re:クリエイターなのです。


Re:クリエイターズとは、創造性・創作性に潜む自己承認への "反射・反動" と、私はまず捉えました。
キャラたちは、自分の物語世界に、絶対的なプライドで関わっています。
なぜなら、皆、気づいた時には、すでに主人公として設定されているのですから。
疑うことも、ほかを選択することもなく、運命への責任を全うする意志の塊なのですから。

創作者は、ヒットを意図して、キャラにあらぬ期待値を盛りこみます。
歓びも悲しみも、失敗も成功も、全部を宿命と設定するのが至極当然です。
となれば、それを背負わされたキャラが、作者に痛烈な苦言・反論をぶつけるのも仕方のないことかなぁと思います。

でも、散々悪態をついた後は、彼らは己が出自を内省し、高く掲げたいと思うのですね。
主人公として、生きてきた証と、向き合っていく標にするために。


キャラクターは、創作者の血肉から生まれます。
読者や視聴者の認識や共感に育てられることで、いつか独立する個性としての輝きを放ち出します。
だからこそ、両者がその熱量で議論するシーンはとてもユニークでシュール。
被造物が神さまを問い質し、けり飛ばすなんて、まるっきり立場逆転のファンタジーです。

創作なのですからそれは形而上学的なものとして割り切れます。
そんな設定は、倫理すら茶番にすり替える可笑しさです。
でも、眼前の生者として対面するのであれば、創造主はどんな面もちで接し、キャラクターはいかな心もちで対すればいいのでしょう。
あるいは、創造主と被造物が、目前の死者として受け入れるには、その後のシナリオにどんな未来を書き起こせばいいのでしょう。

そんな未知のシチュエーションを楽しめるなら、本当にめっけもんのシナリオです。


~    ~    ~


さて、ジャンプです。

俯瞰すると、もっとも弱々しい主人公キャラが、高校生のソウタとセツナ。
マクロ視点では、どこの馬の骨とも知れぬ未熟者設定なので、ほぼほぼ共感ゼロなアンチヒーロー&ヒロインです。
彼らの存在がもとで、一部の視聴者からは、残念アニメみたいな酷評を受ける羽目になりました。

本作をミクロ視点で見ると、"二人がそれぞれに犯した罪に、どう向き合い、償い、歩みだそうとするか" を描いています。
にわかイラストレーターの彼は、ネットに知り合ったセツナとの交歓で、受けがたい無体に直面することになります。
やがて、彼の選択は最悪の結末を迎え、自己愛の欠乏に彷徨うことになるのです。

再確認(Reconfirm)しますが、本作の方向性は、Re:CREATORSです。
ソウタを高い次元へと引き上げたのは、プロフェッショナルの掛け合う丁々発止であり、絶対にへこたれない彼らのスピリットに直触れしたことなんですね。

ともすればお山の大将になり兼ねない寄せ集めの集団ですが、主張・議論を繰り返し(Repeat)、自分の役割を振り返り(Review)、お互いの強みを認め合い(Respect)、世界の崩壊を修復する(Repaire)、国家的プロジェクトに突き進む矜恃は一流です。

彼らに感化され、協働したソウタは、結果的に、双方の世界を救ったヒーローと評価されます。
創作者のタマゴとしてセツナへの再帰性(Recursione)を得て、自己愛の再生(Reproductione)も手にできた彼です。
メゾ視点でアプローチするとこんな感じでしょうか。

もしもリアルにと妄想すれば、ビギナーがチャンスを掴もうとするなら、その熱意、実直さ、優先順位の取捨選択に(ミクロ)、どうにかして良き出会いと(メゾ)、その王道を歩んでほしい(マクロ)と願う私です。


~    ~    ~


ホップはミクロ(個別性)、ステップはメゾ(集団性)、ジャンプはマクロ(社会性)。
この三段論法みたいなものを、本作は持ち合わせている印象です。
イシューから始めるのであれば、本作に通底しているものが何かを見つける必要があります。

作者とキャラの魂は、常に緊張しあう信頼で繋がり、プライドをぶつけ合わせています。
それは、つかず離れずの相棒でありながら、時には不干渉の立場を貫くのです。

クリエイターは、キャラクターを引き立てる世界観を創造し、世界線をまたにかける筆致を奮う神さま。
キャラクターは、熱烈なファンの支持を得て、クリエイターに生きざまを投げ返そうとする神なる存在。
創造神と造化神とが火花する一瞬を、食い入り食いつくファンもまた、カタルシスを求めるわがままな神さまなのです。

これらの三重構造は、本作のファンタジックな設定、バラエティーに富んだ人格、生きる世界線の多様性と相まって、なおかつ作者とキャラとのコラボにシナリオを加除したり、あるいは貫いていく気概が描かれているのですね。
ファンの方々は、そこに惹かれ、感動に痺れ、感激の余韻に浸りたいのですね。

たぶんそれが、物語の本質。
喜怒哀楽も、三段論法も、三重構造も、全部ひっくるめての人生の楽しみ方。
きっとそれが、本作のイシュー。
現世に現界した意味と課題であり、今世に主人公を張る理由と宿題なのかもと思います。


〜    〜    〜


思うに、想像と創造の狭間には、端から境界線など無いのかもしれません。
思うままに、CREATORになる自由があり、何度でも、Re:CREATORに還る自分を創れるものなのでしょう。

松原ら創造主が、被造物たちの新たなお話を作ろうと再起回天し、それを失ったメテオラや真鍳が、新しい創造主へと踏み出すのも頷けます。


そんなことを思い起こさせるソウタとセツナの柔らかな笑顔に。

物語に引き込んでくれた創造主たちの意気地と自由闊達に。

お話を賑やかに盛り上げてくれた被造物たちの魅力に。

なにより、打てば響くと応酬し、大伊達役に振り切った築城院真鍳(ちくじょういんまがね)に。


私の心は深く共鳴していくのです。



おまけ。

{netabare} 18話で、ソウタと真鍳が交わした台詞の一つひとつを、"嘘" と捉えるか、それとも "真実" と見なすかで "その後の文脈が全く違ってきます" 。

と言うのも、本来、真鍳は、 "嘘しかつきません" 。
だって、もともとそういう設定でしたから。
でも、彼女は、まみかとの約束で、"本当のことしか話さないという経験" をしています。
つまり、"設定を超えた能力を、現界した世界で身につけた" ということなんですね。

そして、ソウタは "その逆" で、また "真なり" なんです。

言葉を嘘にも本当にも自在に扱えるようになった真鍳に、『打てば響く。いいもんだねぇ!』とまで言わしめたのは、ソウタが嘘八百を自在に扱えるツワモノの領域に達していることを "認めたから" なんですね。

理屈で言うと、だいたいこんな感じです。
ですから、もうお分かりかと思います。
二人が掛けあう台詞が、真っ赤な嘘をついているのか、真実を赤裸々に語っているのか、はたしてどちらなのか。

このシーンが、正真正銘、"セツナの現界を理解するための伏線" なんです。
というワケですので、二人のやり取りを読み解いてみる(自らが調理する)のが、本作最大にして最難関の RECREAT(楽しいひと時・面白さの活性)なのかなって思います。


"嘘の嘘、それはクルリと裏返る。"
それは世界を丸ごとひっくり返す。(Revolutionize・レヴォルーショナイズ)

CREATORSに、Re:が冠されている "本当の理由" がコレ、かもです。
(・・・いやいや・・・たぶんウソ、です・・・。)


ややこしいですけれど、チャレンジのしがいはあるかと思います。
{/netabare}

投稿 : 2023/05/20
閲覧 : 392
サンキュー:

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