かがみ さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
セカイから日常への折り返し
ある面で本作は「セカイ系」から「日常系」にいたるゼロ年代における想像力の変遷を物語として内在化させた作品とみることができる。この点、ゼロ年代初頭のオタク系文化においてはポスト・エヴァンゲリオン的潮流に属する「セカイ系」と呼ばれる想像力が一世を風靡しましたが、やがてゼロ年代中葉以降のオタク系文化において「セカイ系」の限界を乗り越える形で台頭し始めたのが「日常系」と呼ばれる想像力であった。極めてざっくりといえば、無力な少年と無垢な少女のイノセントな交流を描く「セカイ系」が主人公の実存不安をヒロインの母性的承認で救済する想像力であったとすれば、同世代女子同士のゆるやかな交歓を描く「日常系」は同性間の相互承認の中で瑞やかな日常を再発見していく想像力であるといえる。この点、引きこもり時代のまひろはその実存不安を二次元美少女の人工母性で埋め合わせるセカイ系的な生活を送っていたといえる。けれども中学生女子の姿になったまひろはやがて、みはりの友人の穂月かえでの妹である穂月もみじをはじめ、桜花朝日や室崎美夜といった同世代女子たちと日常系的な日常を送るようになる。すなわち、ここにはセカイ系的な実存不安が日常系的な相互承認によって解除されるという、いわば「セカイから日常への折り返し」を見出すことができるのである。