waon.n さんの感想・評価
4.8
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
最上級の賛辞を
【First】
京都アニメーションで一番好きな作品群は何だ? と聞かれたらもう迷わずユーフォです。 これまでであれば『ヴァイオレットエヴァーガーデン』『CLANNAD』あたりと悩むところでしたが、今回のを観て一つ頭抜けちゃった感じがしました。泣けるって意味ではこの2作品の方が泣けるんですが、ざっくり言うと表現力がしゅごいって話で、その辺りを中心にレビューしていきたいなって思っています。
とりま、これを観る前には必ず1~2期は必修で、『リズと青い鳥』っていう傑作も観ておくとより楽しめます。
【Staff】
原作 武田綾乃
監督 石原立也
脚本 花田十輝
キャラクターデザイン 池田晶子
音楽 松田彬人
このシリーズの原作者の武田綾乃さんこれまで読んでみようと思ってなかなか手を出していませんでしたが、来年にはアニメも3期が始まるそうなので、それまでには原作読み切れるようにしたいです。
監督は京都アニメーションといえば、って感じの石原さんですね。原作を活かすことに優れている監督さんでいらっしゃいます。原作の魅力を見抜いてアニメ二落とし込める方なんだなと思います。
脚本は花田十輝さんです。原作読んでないと、さてどうチューニングしたのか…不確かになりますが、それぞれのキャラの描写が見事でした。最高の作品へつないでくれたと思います。
キャラクターデザインは池田晶子さん。シリーズ通してデザインしていることでキャラの総数が半端じゃないですが、描き分けていてどのキャラも可愛く魅力的に描かれていると思います。。。
音楽には松田彬人さん。吹奏楽を題材にした作品である以上重要な役割で物語を盛り上げるだけでなく、説得力を加える事にも成功しているように思えます。私自身はそんなに音楽の事を詳しくないので、あれこれ言えませんが、ダメな演奏をさせなければならない時などの音楽も感覚的にダメっぽさが伝わったりして、これはスゴイなって唸ってしまいました。
【Review】
脚本において、キャラの魅力を引き出す事はストーリーを練る以上に大事な作品もありましょう。
これまでのレビューでもキャラモノって表現をしてきましたが、ストーリーよりもキャラの魅力で引っ張る系の作品ですね。
分かりやすい例だと『アイドルマスター』を筆頭にアイドルのシリーズ『ウマ娘』『ゾンビランドサガ』『まどマギ』『Free!』などなど。
一応言っておきますが、その上で面白く引き込まれるストーリーのある作品もありますし、例に挙げた作品はもちろんストーリーでも優れたものを持っていると思っています。
勝手な考えなので、それは違うよと思っていただいた方が良いのですが、物語の中心に置いている軸がキャラになっている作品群って言うことですね。
例えば、『Free!』であれば、水泳部の高校生男子の話。『ウマ娘』であれば、ウマ娘たちの熱い戦いの話です。
反対に違うものっていうのが例えば『PSYCHO-PASS』だと管理された未来の話。
また、異世界ものっていうのは、異世界に転生しちゃった人の話。これはキャラモノのとても限定された世界を描いたモノだったりしますね。
となると、この『ユーフォ』シリーズはもちろんキャラモノで間違いないです。ただのキャラモノではない所がこの作品の凄味でございますという話をしたいですね。
物語は
とある高校の吹奏楽部で中学からユーフォニアムを嗜んでいた少女が高校で本気出すみたいな話です。1年生の時に全国へ行ってその後2年生になりまして、新入生キター!で育成係みたいなポジションに任命され面倒をみながら、コンクールでまた全国を目指すって話です。(ざっくりだ)これが100分にまとめられています。(まぁ1~2期で流れは分かってますよね?みたいなところもありましたなので1~2期は必修です)
んで、これまでもキャラの造形が最高って作品でしたが、これまでは割と特徴的で分かりやすい(故に分かりにくい)人達が多かった表に隠された裏の顔みたいのを描いてきまして、本当にぶっ刺してきてました。とはいえ、終わっておさらいしてみると、物語をドラマティックに演出するために尖らせたキャラ達という印象になっていたりしています。
【高坂 麗奈】 【田中 あすか】 【滝 昇】の三人は特にキャラが特質系ですね。 天才って奴は大別してこういうモノなのかもしれません。
下敷きができている分今回新しく入ってきたキャラの特殊性は弱めで本当に分かりづらいんです。悪い意味ではなく、レッテルを貼れると考える余地を少なくできるので、観ていて疲れないんです。テンプレキャラとも言いますかね。これは恐らく書き手も楽なんだろうけれど、実は見る方も楽だったりするので良い事もあります。ちなみに、髪の毛を赤とか青とか黄色とかピンクにするのは、キャラのテンプレに合わせてイメージカラーを割り振って同じような効果を発揮してくれませすよね。
髪の色ではないですが、イメージカラーをキャラに取り入れてアニメで印象的に演出していたのは、『セーラームーン』とかが私の中では一番古い記憶ですかね。戦隊ものなんかはばっちりこれですけれど(笑)
閑話休題
今回の作品で登場する新入生がですね。このレッテルを貼るという事ができない。敢えてつけるなら【普通の高校生】ですね。
実は主人公も【普通の高校生】ってカテゴリーの主人公ですね。
昨今では、多くの人が共感できるって事が重要視されている傾向で(これを無視してるのがジャンプマンガの正統)何なら割と考えがあっさりとしていて、男性でも分かるわーってシーンがあったりするので本当にフォローしやすい造形なんですよね。
追加すると新入生なので、主人公の後輩って属性が自然とついてきます。
これは、これまでは後輩でしかなかった立場から先輩と呼ばれる立場への視点の切り替わりにより新しい物語として見えるっていうとても変化が分かりやすく、この先輩になった悩みだったり先輩に対する後輩の悩みだったりにフォーカスしてキャラを描いていて追っかけやすいのもナイス脚本ってな感じです。
んで、この描写がマジでスゴイスゴイスゴイ!大事な事なので三回!
まず心理の描写ですね。恐らく文字に落とし込んでも「うわああああ、それなぁ!」ってなるやつで、これを映像にするためにキャラの表情を書いたり動きを描けていてまた「うわああああ」ってなりつつ、撮影の演出でまた「うわああああ」ってなる訳ですよね。さらに音で「うおおおお」ってなる訳です。
本当に揺さぶってくるんですよね。
演出面でいくと光と影ってやつを上手く使う手法で良い方向へ向かう時は明るくなっていく、その反対もしかりみたいな事とか、ネガティブな方向は画面下手側に行くとかその反対もしかりみたいな事はやっぱりやっています。また走りに対するカメラの追いかけを一瞬ずらしてみたりと、ちょっと引っ掛かりを作る事でわざとスムーズにしないみたいん事もしていたり…。
扉の建付けが悪くて出入りが多い部員は開きづらいのを上手くやっているけれど、そこまで出入りが多くない先生は少し戸惑うみたいな事もあって、なんていうか、別に普通に入っても問題ないところに一瞬の?を関連付ける事で物語のリアルさとか奥行き感が出ています。(何回も観ればそれだけ発見がありそうな作品ってこういうのですよね)
女子高生の人間関係の機微を細かい描写とディティールで描き、演出でスッと物語に入れてくれる。最高に贅沢な作品でございました。
まだ未視聴の方には是非にこの贅沢を満喫してもらいたいと思っています。
【おわりに】
夏には劇場版今度はちゃんと観に行きます!絶対に!
んで来年には3期がスタート!恐らく3年生編スタートでしょう。
待ち遠しい限りです。
ちなみに、時を置かずして、『ギルティクラウン』という作品を観ました。これもまぁレビューするとは思いますので、特段ここでする話でもないんですが、今回キャラが描けているかを書いたレビューは恐らくこの2作品の対比があったからこそかなと思っています。
世界を描くストーリーは良かったんですが、圧倒的にキャラの造形が弱かったんですよね。絵はメチャクチャ上手くて総作画監督の矢萩利幸さんの回は本当にカッコ良かったし、可愛かった。
絵だけじゃないっていうのが分かりやすかったってなーって事です。
って事で、もう一回『リズと青い鳥』を観たいなって思います。
アマプラに1期と2期のそれぞれまとめて映画にしたものもあるので、まだ未視の方で13話×2はちょっと重いって思ったら映画にしてまとめて見ちゃうのもオススメです。
では、よしなに。