エイ8 さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
誰もがうらやむ理想の家庭(裏稼業除く)
『SPY×FAMILY』(スパイファミリー)は、遠藤達哉による日本の漫画。『少年ジャンプ+』(集英社、以下『J+』)にて2019年3月25日より隔週月曜更新で連載中。
Season 1はテレビ東京系列ほかにて分割2クールで、第1クールは2022年4月から6月まで放送され、第2クールは2022年10月から12月まで放送された。 ナレーションは松田健一郎。(wikipedia)
分割2クール分まとめてレビュー。
何やらちょっとした社会現象になったとか何とかいう本作。アーニャ・フォージャー(Anya Forger)が可愛いという声をちょくちょく耳にしてたんで古典的ヲタ要素の「萌え」が散りばめられていると思ってたんですがそんな感じでも無かったですね。本作は生粋のアニヲタに向けた作品というよりはどちらかというとライトなアニメ好きの若い夫婦向けである気がしました。
個人的に驚いたのが小学校のお受験面接のシーンがあったところ。父役でもありスパイでもある“黄昏(たそがれ)” ロイド・フォージャー(Loid Forger)のミッションと言えばそれまでなんですが、ぶっちゃけどういうわけか見てるこっちまでドキドキしてきましたよどういうわけか。
まあ特にこの辺なんて実際にそんな年頃のお子様がおられるご家族にさぞやささったんじゃないでしょうかね。あんな煌びやかな私学に子供を入学させたいご家庭は多いと思いますし。
見始めた当初は男性向きの作品かと思ってたんですが、どちらかというと女性向きなのかもしれません。先述した主人公のロイド・フォージャーは非の打ちどころのない完璧な若い男性、裏稼業であるスパイ業もむしろ彼の魅力を上げる要素でしょう。フィクションならば。
一方の妻役であるヨル・フォージャー(Yor Forger)の方はというと表向きは同僚らに軽くいじめられる真面目陰キャキャラ。その実態は超フィジカル暗殺者ではあるものの、容姿が良いという点を除けばこれといって長所がない「行き遅れ」お姉さん。
昭和の頃の作品なんかだとハイスペ或いは情熱的な男性キャラがポンコツヒロインを支えるみたいな話は多かったと思うのですが、昨今では何の特徴もない男性キャラをハイスペなヒロインがどういうわけか好きになるという作品が多いと思います。勿論「なろう」系に代表されるようなチートものならばその限りではありませんし、そういう視点で観れば本作のロイドもチート系に該当するかもしれませんが、彼はどちらかというと王子様キャラだと見ています。この作品をあえてヨル視点で見るとすれば「行き遅れた女暗殺者の私に完璧な夫と可愛い娘が出来ました」みたいなタイトルになったんじゃないでしょうか。
彼女の設定年齢は27歳とのことで、現代的視点で見ればまだまだ全然独身でいてもおかしくない年齢ですが、本作の舞台はおそらく旧東西ドイツ辺りでしょうか。少なくとも東側は民主主義ではない様子です。まあそんな事情を汲まなくとも、現代日本でも田舎だと年齢による「人の目」なんてのがありますしようするにそういう空気の延長系でしょう。
ともあれそんなヨルさん、少なくともアニメではそこまでまだ目立った存在ではないんですよね。彼女の暗殺業が何か本編に絡んでくることは特になく、あくまでチートレベルのフィジカルを持つ理由ぐらいにしかなってません。しかも大体はそんな力に振り回されてむしろ「また私何かやっちゃいました?」的に場を乱すこともしばしば。
ただその一方で(少なくとも表向きには)ロイドはそんな彼女をとても大事にしています。彼女が超ハイスペの女スパイである“夜帷(とばり)” フィオナ・フロストと比べて自己嫌悪に陥った際にも優しく接し、自己肯定感を向上させました。本当にロイドさんは素敵な夫です。正直言って、この辺がただの男性向き作品で終わらなかった所以だと思います。アーニャの顔芸だけではここまでの人気を博すことは無かったんじゃないでしょうか。
レビュータイトルにも書きましたが、本当に理想の家庭像の一つだと思います。若くて有能な夫、(少しおっちょこちょいながらも)美人で気立ての良い妻、名門校に合格した可愛い娘、そして白い大きな犬。自宅は質素ながらも決して貧しくはない。ご近所は口うるさいものの、逆に言えばちゃんと家族サービスをしなければ後ろ指を指されるアッパーミドルクラス辺りに属していることを意味しているのだと思います。
多分まだ学生の方が本作を観れば、面倒くさく思えたり意味が分からなく映るところも多いんじゃないでしょうか特に男子は。逆に女子からするとどうなんでしょうね。正直本作では今のところお受験面接以外で妻として大変なシーンは少ないように思えます。スパイ云々除いても夫のロイドさんはすんごい働きまわる上に食事もつくるのにヨルさんは割と悠々自適。勿論彼女も彼女で夜勤の本職があるんでしょうが、残念ながらこれはほぼ描写されていないので彼女の大変さが伝わってこないんですよね。これはこれで本作が単なる女性向き作品でもないと見るべきかもしれません。現状彼女は物語上とんでもない裏の顔を持つおっちょこちょいほんわか美人さんでしか無いわけです。
さて本作は描写に関しては結構細かく取材しているように感じました。特にイーデン校の時間割とか、どこでこんなん調べてくるんだと感心しました。
一方でキャラ能力の設定に関しては実に曖昧というか適当、ロイドやフィオナがスパイだからと言って元プロのテニスプレイヤーやドーピングしまくりの選手に勝てる理由がわかりません。しかもそれらを圧倒したフィオナですらヨルには全く歯が立たないとか、キャラものとしては悪くはありませんが彼女達が何故そんなにすごいのか本当にさっぱりわかりません。
難癖のようになりますが、ヨルの格闘時の動きって男なんですよね。アニメに骨格の話をするのもどうかと思いますが、パンチにしろキックにしろ男性格闘家の動きをトレースしているんだと思います。逆に言うと女性の動きを意識したんじゃないと思います(一部の開脚などは女性っぽかったですが)。
ちなみにひそかに彼女の元ネタになってるんじゃないかと思ってる某ヨルハなアンドロイドさんの方は女性が担当しているようですが。まああっちはゲームということを差し置いても骨盤が完全に女性のものですしね。