てとてと さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
野崎まど脚本のハードSF。竜頭蛇尾な感はあれど、2017年度でもかなり面白かった
CG作画で描かれる、高次元存在とのコンタクトを題材にしたハードSFアニメ。
※作品データベース様より転載
【良い点】
SFとしての圧倒的スケール、驚きの設定や展開の数々。
それを高クオリティーなCG作画で描けている事。
「カド」のビジュアル自体に、よく分からんが凄い事が起きている!感がヒシヒシ伝わってくる。
CG作画のキャラデザ含めたぎこちなさも、本作の高次元存在の理解不能な異質さにマッチしている。
(シドニアの騎士、蒼き鋼のアルペシオ、ゴジラ怪獣惑星などなど、ハードSFとこの手の作画は噛み合っている)
こういう作品は、実写や手描きアニメでは中々できないだろうし、本作はアニメ作品として成功している。
「シンゴジラ」めいた日本政府や国際社会その他勢力の対応。
SFを絡めて社会がどう反応するか、な思考実験タイプの作劇。アニメでは中々珍しく、本作はハイレベル。
総理大臣など政府首脳が有能で、SFドラマに水を差さない。
国際社会がやたら日本に厳しいのも、まあこの手のドラマのお約束なので。
ここら辺を丁寧にやってたら尺がいくらあっても足りない、テンポ良くストレスフリーで流したのは正解。
キャラクターの魅力が高い。
若き外交官・真道の聡明さと情熱を秘めた人物像や、異方存在のヤハクイザシュニナも異質ながら交流してみれば結構おもしれー男だったり、ヒロインのエリート官僚・沙羅花さんも中々可愛かったり。
真道を慕う後輩の花森も可愛げのある奴で、主要キャラの交流劇な側面からも飽きさせない。
真道を中心に、沙羅花とのラブコメ要素もあったり、ザシュニナも少しホモっぽかったり。
キャラクターが良いのは大事、本筋はSFといっても、所詮はキャラドラマなのだから。
思考実験を迫られる高いテーマ性。
「ワム」という無尽蔵のエネルギーリソースを得てしまった事による、人類社会への影響、更にそこから人類がどう「変容」していくか?いかないのか?変容せざるをえないのか?等々。
真道とザシュニナとの交流や問答、社会の慌ただしい動きなどでダイナミックに描かれていて非常に面白い。
作中では明確な答えは出せてはいないが、それは仕方がない。(出せてたら作者超天才だし、無理なのは当然)
そこは、視聴者一人一人が考えていく、そのための題材としての本作という事なのだろう。
そして、それを考えさせられること自体が本作の魅力になっている。
終盤にかけての超展開。
かなり強引でザシュニナも視聴者も戸惑ったであろうが、本作のもう一つのテーマ(と思われる)「人間の生き方や在り方といった哲学的な問い」に一応は結論が出せている。
序盤からのキャラドラマの積み重ねもあり、それなりに妥当な回答だとは思う。
【悪い点】
竜頭蛇尾。
終盤に向かう流れでザシュニナの本性が現れるとホモもとい小物感が否めず。
また、人はどう生きるべきかなテーマについても、妥当ではあるが、はっきり言って陳腐。
正解ではあるのだろうが、模範解答でつまらん。
序盤からのワクワク感、高次元存在による人類の変貌とは!?と期待して見ていくと、肩透かしを食う。
1クールでは明らかに不足な内容だった。
2クールかけてじっくり描けばかなり違った気がする。
【総合評価】8~7点
8話くらいまでは2017年作品でも「けものフレンズ」に迫るくらいのトップクラスな面白味があったが、最終的には竜頭蛇尾だった感が拭えない。
本作のテーマを主に2つに分けるとすれば、前半の社会思考実験編は驚きとワクワク感あり、されど答えは視聴者に丸投げ。
後半の人の生き方編は王道ではあるのだが、陳腐。
評価は難しいところだけど「とても良い」
前半は抜群の面白味があったし、最終的な結論も陳腐とはいえ正解ではあるので、大きく減点したくない。
制作者の力量をオーバーしてしまった感はあれど、これ程のハードSFアニメは稀有なのも確か。