「ツルネ ―つながりの一射―(TVアニメ動画)」

総合得点
70.8
感想・評価
81
棚に入れた
337
ランキング
1480
★★★★☆ 3.7 (81)
物語
3.6
作画
4.1
声優
3.7
音楽
3.6
キャラ
3.5

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ネタバレ

蒼い✨️ さんの感想・評価

★★★★★ 4.4
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

人と交わること。

【概要】

アニメーション制作:京都アニメーション
2023年1月5日 - 3月30日に放映された、全13話のTVアニメ。
原作は、KAエスマ文庫から刊行されている綾野ことこによる小説。

監督は、山村卓也。

【あらすじ】

休部状態だった風舞高校弓道部が再始動して一年目。
森岡顧問(トミー先生)が老齢による腰痛の自分の代わりにと、
実務的な指導者として滝川雅貴(マサさん)をコーチとして招き、
入部から部活に残った男子5人女子3人で日々、弓の鍛錬に励み、
長野県大会で男子は、名門の桐先高校を破り優勝を果たして全国大会へと駒を進めた。

とはいえ、桐先高校が実力的には格上の強豪であることには変わりなく、
因縁が有りげな二階堂永亮が率いる辻峰高校が主人公の鳴宮湊らの前に立ち塞がろうとしたり、
それぞれの弓の道の技と心のぶつかり合うライバル関係があったりするのだが、
同じ弓引き同士、それぞれの信じる弓道や心が重なり合ったりする。

これは、青春を弓道にかける高校生の物語である。

【感想】

京都アニメーションの始まりは、1981年。仕上げ(色塗り)の下請け業者であり、
虫プロで仕事をしていた八田陽子さん(現・社長夫人)が創業者。
初期は、京都のパートのおばちゃんたちがセル画に色を塗る、
寄り集まりだったそうですね。

何故、そんな話をしたかというと、このアニメは色が鮮やかで美しいのですよ。
京アニに限ったことじゃないですが、ハルヒをやっていた2006年と比較すると、
機材の進歩でデジタル彩色で同時に使える色数が格段に増えていますので、
当時とは技術力が全く違う。同じハードウェア・ソフトウェアでも、
使いこなしている会社とそうでない会社には格段に差がありますね。

このアニメにしても振り返って1期と比較して色の陰影の表現がパワーアップしています。
弓道場に光が差して影ができるなどメリハリのある画作り。

映像に社の長所である仕上げの職能を最大限に活かしているのは勿論のこと、

なめらかなフルアニメーションを得意としているのは同社の他作品と変わりなく、
1期でも描きましたが、キャラの洗練された姿勢や所作の凛とした美しさのアニメーションに、
ウケ狙いの奇抜な演出よりは地味な仕事を大事にして決して手を抜かない。

静から動に入るひとりひとりの射の段階的動作や、矢が刺さる音に個人差をつけるこだわり等で、
臨場感のある弓を引いて矢を放ち的に当てるまでの一連の動作に魅入ってしまう。

3Dを駆使した回り込みや、矢を射る瞬間にカメラの手ブレを用いたりで、風を映像から感じさせたり、
動きの緩急がダイナミックであったりの卓越した写実さだけではなくて、それに加えて、
感情をイメージとして、絵の具が滲んだような絵の抽象的演出表現も加わっている。

今回は全13話のうち8話を山村卓也監督が絵コンテを作っていて、本当は全話やりたかったそうですが、
映像表現のやり方において、例えば『リズと青い鳥』を一部参考にしているところがあったりと、
京アニの過去作品をデータベースとしながら、自分で構想した映像の世界を構築している。

技術を修めたアニメーター出身でないと演出家になれないのが今の京アニですが、
人材育成の環境としては非常に優れているのでしょうね。

イノベーター的な歌舞伎俳優である18代目中村勘三郎の言葉にありますが、

『型があるから型破りが出来る』『型が無ければ単なる形無し』

新しいこと・自分のやりたいことをやるにも基本的な部分の土台がないと、
単なる軽率な思いつきにすぎない。
天才と言われる演出家でも、大抵が基本があるからそこから先の表現に進めるのです。

山村監督の1期からの演出家としての5年間の学びと進化を映像から強く感じた2期ではありましたね。

内容の話をしますと、乃愛、梨可、ゆうなと3人の女子部員が1期と違って存在感があったり、
弓道をする高校生たちの家族が描かれていたりで、キャラクターの表面的な部分だけでなくて、
くどくならない程度の描写で各キャラの掘り下げが試みられていましたね。

主人公の湊は早気(はやけ)…イップスを克服をして弓道を楽しんで、
周りに影響を与える側になってますし、ライバル校の愁の家庭環境が描かれていて、
可愛らしい妹の沙絵をきっかけとして、湊の仲間の遼平と友だちになったりした彼自身の変化が、
1期では嫌われ役だった千一と万次の双子にも精神的変化をいい意味でもたらしていたり、
みなが“つながり”で連鎖的に成長していく。
人は一人で立って勝手に育っていくのではなくて、集団の中で課題を持って取り組み練磨し、
先人から受け継いだ“つながり”を大事にしながら、そのうえで自分のやりたいことを接ぎ木していく。
思い悩んでいることがあっても人と関わって相談することで解決の糸口が見つかるのではないか?
人は一人ではないという話。

勝手ながら、京アニの思想みたいなものを代弁しているように思えて、楽しめましたね。

Free!の3期やツルネ1期で首を傾げた、
男同士の感情の捻くれたヤンホモっぽさも今回は目立たなかったですし、
より純然たる部活アニメへと方向性が変わっていって、
滞ることなく次へ次へと話を楽しめたのが良かったですね。

新たなライバル校の辻峰高校弓道部も正式な指導者のいない野武士集団的なキャラ付けで、
彼らの信念とやり方を全否定しない上で、やんわりと直すべき点は直すべきだみたいな扱いであったり、
風舞・桐先・辻峰のいろんなキャラクターの尊重された立場と思いを視聴者として汲み取り、
彼らの一生懸命さを応援したくなる。
1期と比較すると入り込みやすい良いアニメであったと思いました。
キャラクターを粗略に扱わないのは、場合によってはべったりしすぎる可能性もありますが、
京アニの品性みたいなものが作風に見られましたね。
1期はそれほど楽しめなかった自分としても今回は充分でした。


これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。

投稿 : 2024/06/24
閲覧 : 190
サンキュー:

27

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