ナルユキ さんの感想・評価
3.4
物語 : 3.0
作画 : 4.0
声優 : 3.0
音楽 : 4.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
4話で3頭が主役は無理があったかもね
全4話のWebアニメ。3期(キタサンブラック&サトノダイヤモンド主役)放映までの繋ぎと称せるだろう。
こう書くと本作の主役であるナリタトップロード・アドマイヤベガ・テイエムオペラオーのファンが怒るかも知れないが、良くも悪くも3頭?のウマ娘のドラマが4話程度で収まっているし無理に収めてしまった感もある。明らかに2期と出来栄えが違いすぎてな……
競馬ミリしらによる本作の評価です。短くも具体的に書いたつもりなのでお手隙の方は一読をば。
【総評】
作画にはこれといった問題は無い。アニメ制作会社がスタジオKAI(以下:櫂)からCygamesPictures(以下:サイゲ)に変更────いや、櫂は今年11月までにTVアニメ『ウマ娘 プリティーダービー Season 3』の制作・納品を始めなければならないので変更というよりは“代打”とでも書くべきか。櫂の高クオリティーから別会社に変わったことによる違和感は抱くものの、サイゲームスはゲーム『ウマ娘プリティーダービー』の生みの親でもあるため、その子会社もまたレースの疾走感を引き出す演出やカメラワークなど、ウマ娘ならではのツボをきっちり押さえて良好な作画を提供している。
個人的には加速時の大地の踏みしめ方に力強さを感じられない、またはそういったフラグを廃していつの間にか後続から追い上げてくるウマ娘がいたりと物足りなかったのだが、そこを指摘するレビュアーさんがおらず作画に関しては絶賛の嵐なのでまあ、自分が変わった感性を持っているということにしておこう。
問題があるとすれば脚本だ。恐らくトプロたちの元ネタとなる競走馬の生涯は「帯に短し襷に長し」。1クールにできる長さでないからこそ公式YouTubeチャンネル『ぱかチューブっ!』などの配信で4話という形態にしたのだろうが、やや尺不足を感じる。
{netabare}トプロの行き詰まりを早く解消すべきだと考えているのに自主性に任せて手をこまねくトレーナー、アヤベ対策の走りを練習していたのに菊花賞直前で「自分の走りで挑みたい」と直談判するトプロなど、短い尺の中で脚本に緩急をつけた歪みか、物語やキャラクターに大きなブレが見られた。{/netabare}
掘り下げも浅く、3頭?の主役のことは元ネタの馬のこともよく知っておかないと感情移入が難しい。
{netabare}とくに双子で生まれ、片方を潰して競走馬となったアドマイヤベガを元ネタとするアヤベの闇に触れる登場人物がおらず、彼女自身がクラシックレースを経る中で自己完結。“生まれ落ちなかった妹”が元のアドマイヤベガの運命(6着で敗退の上、左前脚繋靭帯炎で引退)をあの世に持っていき、ウマ娘であるアヤベには3着でウイニングライブに参加という奇跡が起きる。史実を理想にねじ曲げる手法こそ1期のサイレンススズカと同じだが、競馬の“黄金時代”とやらに所縁のある視聴者でないとその感動は半減以下になるようだ。{/netabare}
何よりもコミカルな描写が不足気味である。アヤベは「フワフワした物が好き」という設定があるのだが、それはどうしたのだろうか。そういった「日常」を感じさせる部分が本作は非常に少なく、馬の力を持った女の子がただひたすらにレースで競い、勝って喜び負けて悔し涙を流すという単純なスポ根物語になってしまっている。ご丁寧に全話後半に重要レースをぶちこんでいるため変わり種なトレーニングをするなどの「溜め回」が一切なく、ミリしら勢にとってはカタルシスも少ない。
声優陣もパッとしていない。トプロ役の中村カンナは18年デビューの新人声優ということで大目に見る(といっても5年ではまり役無しというのはそろそろキツいが……)が、テイレムオペラオー役の徳井青空さんは女性声優なら誰でも出せそうな無難なハスキー声を吹き込んでおり彼女らしさを感じられない。やはり『探偵オペラ ミルキィホームズ』の譲崎ネロや『ラブライブ!』の矢澤にこのようなウザ可愛い少女キャラでないと彼女の声質の持ち味を活かすことは出来ないか。
「配信アニメとしては上々」という評価も多く、そういう形態だからこそ競馬に詳しい人なら楽しく感動的に観れるディープな作品に仕上がっているようだが、個人的には周囲の熱狂には疎外感を抱き、冷静に悪いところを挙げられるレビューの方に共感できるような微妙な作品だと評する。従来のTVアニメシリーズのように競走馬を知らない人とよく知っている人が各々違った観方を交えつつ、両者が楽しみ感動に涙できるような作品には至らなかった。