てとてと さんの感想・評価
3.8
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
華麗なる変身怪盗と反戦メッセージ。1時間弱で綺麗に纏まっていて見やすい
児童文学のアニメ映画(後にOVA)。
気まぐれお茶目な怪盗クイーンと仲間たちが、宝石巡りサーカス団と警察と三つ巴の争奪戦。
【良い点】
怪盗クイーン中心にキャラが魅力的。
子供っぽく気まぐれで芝居掛かったお茶目な言動から、怪盗の美学で颯爽と活躍する。
生真面目なジョーカーや融通利かないAiのRDとのコミカルな掛け合いも楽しい。
警察組や間抜け部下、女性記者と男性記者コンビ、サーカス団長など各キャラの持ち味も十分良かった。
サーカス団の催眠使いの強キャラ感も(途中までは)良かった。
原作知らない視聴者にもキャラ関係が分かり易い配慮あり。
怪盗物としてはテンプレお約束だが、変装や催眠術を軸に、誰が正体か最後まで視聴者を欺く虚実が面白かった。
序盤にジョーカーが諺や慣用句に疎くクイーンにからかわれるコミカルを、後に(視聴者目線で)正体に気付かせる展開も上手い。
1時間弱で十分に楽しませる内容はある。
戦争批判、反戦のメッセージ。
女性記者がはっきりと反戦の信念訴えたり、終盤明かされる団長の過去と戦争憎む想いで、素直にテーマが伝わる。
また女性記者の情報を公正に伝えるマスコミの矜持も良かった。
対するクイーン自身は怪盗の美学にしか興味が無く飄々と盗みつつ、団長の想いを粋な計らいで返す。
ジャンル違うけれど「英雄王、武を極めるため転生す 〜そして、世界最強の見習い騎士♀〜」のイングリスがバトル以外興味0で、作中の生臭い思想対立と無縁だったのと相通じる。
主人公の中立的で飄々としたキャラのお陰で、思想的に生臭くならずすっきりと見られた。
諺や慣用句のやりとりで児童文学らしい教育要素も。
主要声優陣は本職ではないが、申し分なくキャラの魅力引き出していた。
クイーン役の大和悠河氏は宝塚のトップスターとのこと、流石。
クイーンはもし本職がやるならば斎賀みつき氏あたりのイメージ。
【悪い点】
怪盗物としてはお約束の域を出ず地味。
攻防がチート気味な催眠術中心で強引。頭脳戦要素は期待薄。
ハラハラ感も淡泊。
アクションもクイーンのサーカスシーンは良かったが、他は劇場アニメならではの外連味ある作画はあまり無い。
反戦は良いにせよ、政治社会批判臭が若干きつい。
日本の金満とか、女性記者のスマホ批判とか、間違っちゃいないが話としては面白くない。
この点はクイーンが我関せずなのは良かったが。
1時間弱の割には綺麗に纏まってはいるが、各キャラの交流掘り下げの余裕が無い。
団長の想いは良かったが、終盤明かされるだけではドラマとして弱かった。
もう少し団長と団員の交流エピの厚みがほしかった。
【総合評価】7点
1時間弱でクイーン他キャラや、作品の魅力は十分伝わった良作映画。
原作は知らないが、この内容ならばもしTVシリーズ化したら是非見てみたい。
評価はとても良いでもいい気もするが、やや物足りない「良い」