Lilac さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
能力バトルの皮を被った傑作ヒューマンドラマ。
能力バトルの皮を被った傑作ヒューマンドラマ。
『契約者』は、雷、重力、氷、入れ替わりといった特殊な『能力』と引き換えに『対価』を支払う義務が課せられる。
中二病のツボをこれ以上ないくらいに突きまくるこういった設定を軸に繰り広げられるのは、殺した殺されたの単純なバトルとは全く異なる、様々な過去、葛藤、迷いが入り乱れる人情噺めいたドラマだった。
このギャップと、癖と魅力に溢れたキャラクター(様々な角度から掘り下げが可能と思われるにもかかわらず、少なくない人数があっさりと死んでいく。そこがいい)、抑制された演出(一見地味だが『契約者』のいる世界と現実世界を地続きのものとして錯覚させるという効果があった)、洗練された脚本が作品を貫き、全話あっという間に見ることができてしまう。
個人的に忘れることができないのは、『契約者』ではないへっぽこ探偵・久良沢凱が登場する回。メインで登場するのは、第7・8話の『五月雨にクチナシは香りを放ち⋯』と第13・14話の『銀色の夜、心は水面に揺れることなく⋯』(基本的に二話で一つのエピソードが完結するようになっている。このように時間的余裕を持たせることによっても、物語に深みを持たせることに成功している)。助手ともども、コミカルな狂言回しとして極めて優秀であるだけでなく、『契約者』という異常な存在が当然のように存在する作品世界で、ニュートラルな良識を違和感なく振り回すことが可能な存在になっていることによって、登場人物から共感を引き出すこともできるし、視聴者に共感を与えることに成功している。加えて、彼自身の魅力ではないものの、各回に登場する『契約者』・各話のテーマ自体視聴後に強い余韻を残すものであり、13・14話に至っては、クールの折り返しにもかかわらず、演出上の強い必要性から第1クールのEDが例外的に続投するという優れた演出も合わせて楽しむことができるので、未見であってもこの4話だけは是非観ていただきたい。