鬼戦車 t89 さんの感想・評価
3.5
物語 : 3.0
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:今観てる
江戸前エルフって、そういうことか!地雷を上手く回避したコメディの良作です。
12話(最終話)まで観ました。2023.06.24
作画も良く、安心感のあるコメディでした。ただ、皆様のレビューにあるように、薄味テイスト気味です。
エルフ以外の登場人物も、生病老死の四苦から解脱したような穏やかな人物しかいません。
人間ってもっと、ドロドロした業を背負った生き物だろ?リアルな人間だったら不老不死のエルフを放っておくはずもありません。
江戸時代のウンチクが、守貞漫稿の上澄みでしかないのは、ディープ江戸がヤバいからです。
江戸時代は基本平和で、人々の寿命も伸びましたが、医療はそれ程発達してないので、あらゆる病に苦しんだ時代でもありました。
縄文時代の発掘人骨は、健康そうな骨が多いですが、江戸時代人骨は、骨まで病理が及んでいるものが少なくありません。
縄文時代は、健康そうでも何かあるとすぐに死亡したけど、江戸時代はかなり病状が進むまで生きながらえたということです。特に、すぐには死なない、慢性疾患の性病が猛威を振るっていました。
そのため、少ない医療資源を求めて、人々が暗闘した時代でもありました。効くか不明な薬石、ご利益のある御札や縁起物なんかを皆とても欲しがりました。
淋病治療には女性の経血を男性器に塗ると良いなんていう怪しい民間療法を本気で信じる人もいました。
エルダの体液を求めて、江戸中の淋病患者に神社を包囲される位のエピソードはありそうです。
幕末になっても、薩長兵、幕府兵ともに戊辰戦争で討ち取った敵兵の肝を健康のために切り取って喰うような連中ですよ。不老不死のエルフなんて、問答無用で襲われそうです。
江戸っ子地雷や不老不死、信仰、出オチに対する地雷などを上手く回避した佳作でしたが、制約が多いので、大爆笑痛快コメディとはいかなかったのは、少し残念です。
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7話まで観ました。2032.05.22
非常に分をわきまえた作品です。あくまで江戸前であって、江戸っ子エルフではありません。
江戸っ子を詐称すると、江戸っ子コミュニティの地雷を踏みかねないですが、月島、豊洲、押上と微妙に江戸から外れた地域を描いて、地雷を回避しています。
都会は開放的と言われていますが、実際のコミュニティは閉鎖的です。神田浅草とか江戸っ子の誇りを持っている地域は特にそうです。
開放的に見えるのは、単に貨幣経済が発展していて、行政のパワーもあるので、コミュニティやら中間団体に属してなくても寄生虫的に生きていける環境だというだけです。
江戸っ子は、隅田川以東すら江戸だと認めていません。私の友人の江戸っ子は、深川に遊びに行って、店の店員の何気ない一言で、川向うの田舎者に地方人扱いされた!とガチギレするほどの狭量さです。
あくまで江戸前でやらしてもらってますという、謙虚さがコメディとして上手く機能している作品なので、私の友人も安心して観れる良作です。いや〜素晴らしい!
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3話まで観てのレビューです。2023.04.23
段々世界観が分かって来ました。どうも記紀神話→江戸時代→現代という世界線のようです。
古代の仏教伝来も無し、中世以降国家の庇護を無くして武装、自衛し、戦国時代に世俗権力と死闘を繰り返し(僧兵と同じで、武装神人は世俗権力の悩みの種)、江戸時代に権力側に取り込まれた経緯も無し、神仏習合も無し、明治維新や太平洋戦争の敗戦も無し…。
ヤバい歴史は無かったことにし、江戸時代の浅い歴史ウンチクのみが有効なようです。
まぁ、コメディだから…。エルダは生きた御神体ですが、モノ扱いなのか?宗教行事に近隣を巻き込むのは信教の自由に抵触するんじゃ?
キナ臭い話は気にしてはいけないようです。私の様な設定厨は、思考停止し、疑問を持つなということでしょう。
エルダが可愛いからそれで良いのだ!
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前回、神社や世襲巫女が胡散臭い存在だとレビューに書きましたが、本作品はそんな現実が気にならない程の魅力があるなぁと、1話を見返して思いました。2023.04.16
月島が舞台なところが良いです。月島は空襲の被害も無く、江戸情緒が残っている上に、タワマンが林立するハイパー現代的な街でもあります。
上手いこと、伝統と現代を使い分けできる便利な環境と言えます。
都会は、どんどん人が入れ替わるので、自分がイノセントな住民だと思いんで生きることができます。
先祖代々住んでいると、どこどこの誰とは昔から仲が悪いとか、地域がピンチな時期に協力しなかったとか、澱のように怨念が溜まっていきます。
私の地元も、農村地域から都市化したために、農家が土地を売ったり、共同住宅にしたりしてウハウハ地主になっています。
ただ、農家の土地は敗戦後にGHQの土地改革で旧地主から取り上げて分配されたものです。
なので、今だに古い住民同士が喧嘩すると、小作あがりが生意気だとか、水呑百姓が上手くやりやがってとかの怒号が飛び交います。
農地改革から何年経ってるんだか…。
何が言いたいかと言うと、400年も地元にいるエルダは変わらなさを体現する存在では無く、地域のトラウマとスティグマを蒸し返しかねない化物だということです。
エルダに好感を抱いている地域住民は、江戸の伝統を引継いでいると言いつつ、新住民なのでしょう。
エルダが先祖代々の記憶を持っていたら、ヤバい話の一つや二つはあるでしょう。覚えていなくても、可能性があるというだけである種の住人には脅威です。
また、エルダが引きこもりのオタク的ニートで、あまり人に興味が無いのも良いです。
エルダがネチネチ色々細かいことを記憶していたら、世襲巫女が何か言っても、400年分の知識でいちいち過去の話を蒸し返され、ウィキが元ネタのひろゆきさんの比じゃないほど論破され、15の小娘の人格なんて簡単に崩壊します。
住人の移動の少ない田舎にエルダがいたら、〇〇村シリーズのラスボスです。
口を開くたびに、因習と怨念を吐き、人々の思考と行動を支配することでしょう。よくネットに上がっている「自治会に入らなかったら苛められた件」なんて生易しいです。
すげぇ化物とのハートフルコメディがどんな風に展開するのか、早く2話が観たいです。
東京の街を見て回る展開になりそうですが、エルダの記憶が炸裂すると、単なるダークツーリズムになってしまうので、知能低めでお願いします。
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1話を観てのレビューです。
400年前に月島の神社に神様として召喚されたエルフと新米巫女のお話。
巫女の態度が悪いです。600年以上生きている知的生命体に対するリスペクトが無いのは酷いです。
原作者は本地垂迹説を知らないのでしょうか。教典や教条の無い神道は、長らく仏教の傘下にあり、神仏習合で神は仏の別の姿とされていました。
仏教を敵視した明治政府が維新後の仏教弾圧政策で神仏分離を行い、神社も今の形になっています。現在の多くの神社が説明している、仏教の影響を排した縁起は、ほぼ嘘と捏造です。
エルフも最初は、仏教系の信徒に召喚されたのかもしれません。寺も神社も流行により宗派や神様が変わる事は珍しくありません。
あの外見では太平洋戦争中も弾圧されてそうです。400年間ずっと信仰対象になっていたといのは珍しい事です。
現代の平和な感じの神社組織がずっと続いて来たわけではありません。
かなりハードな世界を400年生きてきたエルフ(神)をギャグキャラ扱いする本作は、神社が現在も信仰の対象であることもあり、どこかで地雷を踏みそうで、とても不穏なものを感じてしまいます。
ただ、宗教史に興味のある私には、これからどう描かれていくのかが気になります。
巫女のエルフに対する酷い態度も、前提として日本の寺社が抱える矛盾が背景としてありそうです。
寺も神社も、本来は信仰心を持つ檀家や氏子が支えるものなのに、坊主や神主は家業として相続しています。
これは、明治維新や戦後の国家神道解体の結果、ドサクサに紛れて、たまたまそうなっただけで、寺社の本来の在り方ではありません。
伝統的宗教法人の運営者が信仰心に基づいていないため、本作のように世襲で家業の手伝い的にやっている女子高生巫女がキャラクターとして成立してしまうのです。
本作品は、面白さとは別次元で日本の宗教・民俗学的興味から、視聴継続しようと思います。