エイ8 さんの感想・評価
4.3
物語 : 3.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
2023年4月よりBlu-ray BOXの[ファイナル・カット]版で再放送!
『RWBY 氷雪帝国』(ルビー ひょうせつていこく)のタイトルで2022年7月から9月までTOKYO MXほかにて放送された。「Team RWBY Project」の一環で日本のスタッフが中心となって製作されるシリーズとなる。時系列としてはVolume1とVolume2の間にあたる(wikipedia)
ちなみに『RWBY』(ルビー)とは、アメリカのルースター・ティース・プロダクションが制作したWEBアニメシリーズで、本作はそこから派生したスピンオフ的な扱いになると思います。
wikipediaにもある通り本作はオリジナル「RWBY」のVolume1とVolume2の間にあたります。展開として、ほぼVolume1の流れに沿い、そこに本作「氷雪帝国」の独自展開が挿入されているといった形です。なのでオリジナルにおいてジョーンやワイスがあのようにナイトメアによって昏睡状態となる、といったことはありません。
冒頭に出てきた帽子の男や飛行機を操縦するドレス姿の女、何やらテカテカした質感の少女に関してはオリジナル「RWBY」の世界では大きな役割を持つキャラ達ですが、本作「氷雪帝国」から見始めた人達からすれば意味不明だったことだろうと思います。少しネタバレになりますが、ドレス姿の女はオリジナルVolume1のエピローグでその容貌が明らかになります。なので本作でもてっきりラストにそのシーンを持ってくると思ったのですが……結局Volume2の見せ場の一つである食べ物粗末合戦、それに加えてブレイクとオズピンの面談に尺を費やす形で彼女に触れることもなく終わってしまいました。食べ物粗末合戦はともかく、ブレイクの面談シーンを無理に挿入する必要があったのか正直疑問です。ドレス姿の女に触れたくないのなら初めから登場させなければ良かったのにと思わずにはいられません。
余談ですが日本語で「オリジナル作品」と表現されたものってちょっとどう捉えて良いのか迷う事ってありません?通常オリジナルというと「原典」と解釈すると思うのですが、同時にまさに本作のようなアニメ独自の展開があるものについてもオリジナルと表現されることがありますしね。ですがやはりオリジナルとは原典の方を指し、派生した本作のようなもの関しては「オリジナル・アニメ」ではなく「アニメ・オリジナル」と表現するのが適切なのでしょう。
本作には「アニメ・オリジナル・キャラ」としてシオン・ザイデン(Shion Zaiden)というキャラが登場します。これは「オリジナル」作品である「RWBY」には登場しないキャラですが、それがあたかも普通に存在していたかのように振舞います。ちなみにこのシオンさん、日本版では男性扱いだそうですが公式であるRooster Teeth はシオンをノンバイナリー(自分の性認識に男性か女性かという枠組みをあてはめようとしない考え方を指す)として扱っているそうです。
もう一つ余談ですが、このShionという名前は「RWBY」本来の世界に村の名前として存在します。そんな既にある名称を何故使ったのかという疑問がありますが、ひょっとしたら何か関係があるのかないのか。尚FANDOMでの情報によると、ここでのShionは日本語の「紫苑("Aster tataricus")」のローマ字表記で花の名前が由来だそうです。シオン・ザイデンも紫色を基調としているためおそらく同様のものに由来しています。日本の花言葉では「あなたを忘れません」「追憶」を意味するそうですが、村の方は(物語上)わかりますが、彼の方にまでこの名前をつけた理由が少し謎です。所詮はアニメオリジナルキャラだからこそ、その名を忘れないと言ったぐらいのものでしょうか。(ちなみに「RWBY」の世界での名前には色縛りがあります。何らかの色に関連する名前を付けるという原則があるのです。)
さて本作は主にチームRWBYの一人であるワイス・シュニー(Weiss Schnee)に焦点があてられた内容となっています。ワイスは白雪姫をモチーフにしていると言われています。彼女の名前はドイツ語で「白」と「雪」を指しているようです(但し、直訳ではない様子)。
ワイス(Weiss)はその頭文字からも「W」を担当、同時にそれは(Weissとしてだけではなく)Whiteの「W]も意味していると考えられます。実際「オリジナル・アニメ」である「RWBY」に先駆けて公開されたトレーラー「RWBY "White" Trailer 」においてはワイスのキャラ紹介トレーラーとなっています。尚、このトレーラーの内容に概ね沿う形で本作「氷雪帝国」でもワイスの登場シーンとなっていました。
当初のワイスはかなり高慢で高飛車なところがあり、彼女に声をかけてくるルビー・ローズ (Ruby Rose)やジョーン・アーク (Jaune Arc)よりも既に実力者として名声を博していたピュラ・ニコス (Pyrrha Nikos)とチームを組みたいと考えていました。結果としては彼女はルビーの他に彼女の姉でもあるヤン・シャオロン (Yang Xiao Long)、そして実はファウナスと呼ばれる獣人であるブレイク・ベラドンナ(Blake Belladonna)とチームRWBYを結成することになります。ちなみにそれぞれがRed(ルビー),White(ワイス),Black(ブレイク),Yellow(ヤン)でRWBYとなります。
チームを組んで尚もルビーがリーダーであることに納得いかないワイスは、最終的には教師であるピーター・ポート(Peter Port)に諭される形でリーダーとしてのルビーを補佐することに活路を見出すようになります。
オリジナルではそれですんなり話が進んでいくのですが、本作に関しては既に最初のチーム分け時に取りついていたグリム「ナイトメア」が悪さを始めます。ちなみにグリム(Grimm)とは本作「RWBY」の舞台であるレムナントのいたる所に生息している人類の敵のことであり「ナイトメア」は氷雪帝国オリジナルのグリムです。
氷雪帝国のオフィシャルホームページの説明によるとこの「ナイトメア」とは――
一般的なグリムと比較して特殊な存在であり、植物的な見た目をしている。
特筆すべき点は、人に取りつきオーラを吸って成長すること。
ナイトメアに取りつかれた者は悪夢に囚われ、眠りながらナイトメアの苗床となる。
取りついた者のオーラが強ければナイトメア自身も強く成長するが、逆に、とりついた者のオーラが弱ければ大きな脅威にはならない。
倒されると一般的なグリムとは異なり、種子のような姿で休眠状態となる。
――とのことです。
ナイトメアはまずチームJNPRのリーダーでもあるジョーンに取りついていたことが発覚。しかしながらジョーンはつい先日ようやくピュラの力によってオーラが目覚めたばかりということもあり大した脅威にならずに済みました。彼はチームJNPRのメンバー、ピュラの他にもノーラ・ヴァルキリー(Nora Valkyrie)とライ・レン(Lie Ren)の助力により事なきを得ます。
ところが次いでナイトメアの悪夢に囚われたワイスはそうはいきませんでした。彼女のために今度はチームRWBYがワイスの夢の中に入り奮闘するというのが全体の流れです。
物語としてはこの展開は序盤で始まり、それからほぼ最後までこのエピソードで費やされたことが不評の一因となっている気がします。オリジナル「RWBY」を未視聴の方からすればさもありなんと言った感じですが、どうやら原作ファンからしても同様の評価が多いように見受けられます。
個人的にはアナザーストーリーとして大変好ましく拝見したのですが、確かに結果的に「RWBY」の魅力を広く伝えられなかったという意味では(少なくとも日本市場としては)失敗だったといえるのかもしれません。
とはいえこれはオフィシャルである「Rooster Teeth」からすると
本編のifストーリー(alternate universe)やリメイクなどではなく、あくまで本編と同じ世界での話とのこと。彼等は本作を"canon adjacent"(正史と隣接するもの)と表現している。
(FANDOM)
とのことなので、脚本自体は日本の冲方丁氏が担当しているものの、タイトルからも推測できるようにおそらく初めからワイスの内面に主眼を置いた作品にすることが決定路線だったのでしょう。特にワイスとブレイクの因縁に焦点が当てられてましたが、これはオリジナル本編において二人の関係性にそれほど触れられていなかったことも要因としてあったのかもしれません。
当初は「本作の1話目と2話目は本編のVolume 1と2をまとめた内容になり、その後、新たなキャラクターやグリムが登場するオリジナルストーリーに移行していくとのこと(FANDOM)」のようでしたが、この辺は1クールアニメになるのか2クールになるのかの問題も絡んでくるでしょうし、結果としてこのような形となったのでしょう。
さてシナリオはともかくとして、日本のアニメとしてのRWBYは本家とはまた違った魅力が満載でした。最初キャラデザを見た印象としては「あまりにも瞳が大きすぎやしないか」と思ったものですが、実際のオリジナルの方を見返してみるとこんな感じでした。ルビーはやや幼くなりすぎてる気もしますし、ピュラは美人が過ぎる気もしましたがこの辺はご愛敬でしょうか。
ワイスの夢の中で出てきたまるで7人の小人のようなのは元々シュニー家の執事であるクライン・ジーベン(Klein Sieben)自身が7つの人格を保持していることに由来しています。ワイスが白雪姫をモチーフにしているからことから彼もまたそのような性質を与えられたと考えられます。
そして特筆すべきはアニメオリジナルキャラであるザイデンのキャラ、及び周辺描写としてのデザインでしょう。本作の東洋系キャラは中国系が中心となっていますが彼/彼女に関してはまるで「霊幻道士」といった様相です。霊幻道士ってわかりますかね?かなり昔に流行った「キョンシー」を退治する人達のことです。ハングルらしき字も混ざっていたような気もしますのでおそらく日中韓の文化をごちゃ混ぜにしたように感じました。
ただ、さすがにバトルシーンに関しては本家RWBYの足元にも及びません。オリジナルは3DCGアニメなのですが、とてつもなくスピーディーで迫力満点です。自分はまるでゲームの戦闘シーンのようなスリリングな展開に虜になったクチなので、本編未視聴の方にも是非是非お勧めしたいです。
2023年4月現在「RWBY Volume 9」英語版が一部で先行公開されています。日本語版としてもVolume 8まで既に公開されているのですが、どういうわけかここ「あにこれ」に「RWBY Volume 8」が登録されてないんですよね……困ったものです。「あにこれ」さん、Volume 8のレビュー書かせてw
ちなみに、本作『RWBY 氷雪帝国』は2023年4月よりBlu-ray BOXの[ファイナル・カット]版映像でTOKYO MXとBS日テレにて再放送されるようです。興味ある方、またオリジナル版に納得いかなかった方も是非ご覧あれ。
……でも直すとこなんかそんなにあるかな?終盤のヤンちゃんのバイク戦闘シーンぐらいじゃね?
ともかく、次は「RWBY Volume 1」のレビューでお会いしましょう!