キャポックちゃん さんの感想・評価
3.0
物語 : 3.0
作画 : 3.5
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 2.5
状態:観終わった
うまく料理すればもっと面白くなったのに
【総合評価☆☆☆】
SF的設定は壮大だが、登場キャラの人物像に深みがない。うまく料理すればもっと面白くなった素材なのに、なんとももったいない残念アニメである。
原作は、漫画『シドニアの騎士』でコアなSFファンを狂喜させた弐瓶勉の手になる(武本糸会が作画した漫画が、アニメに先行して発表された)。文明が崩壊した遠い未来なのか、水のない広大な「雪海」に点在する「軌道樹」からわずかな水を得て、人々が命をつなぐ世界。アニメ第1話では、軌道樹の上に広がる「天膜」の少年カイナが、水争いに巻き込まれ解決策を求めて雪海からやってきた小国の王女リリハと出会う。『風の谷のナウシカ』や『ケムリクサ』にも通じるワクワクする発端で、文明と自然の関わりを見据えたスケールの大きい物語を期待させる。
残念ながら、そこからの展開は平板。軍事力で水源を確保しようとする大国の動きが描かれながら、水不足に対する切迫感が指導層に乏しい。守る側の交渉もおざなりのまま、当たり前のように戦端が開かれる。そのプロセスに迫力があればまだしも、人々の対応があまりに状況に即してひねりがないので、予想通りすぎて楽しめない。終盤になると、ほとんど伏線もなしに事態が急転し、性急な幕引きとなる。放映半年後に公開予定の劇場版につなげるつもりなのかもしれないが、テレビ版だけを見る視聴者にはいかにも物足りない。
作画に関して言えば、背景は想像力をかき立てる見事な出来なのに、人物描写がなっていない。アニメでは、うずくまるときの体勢など脊椎の曲がり方を含めた体幹部の表現によって内面を描写するのが効果的。にもかかわらず、頭部や手足に無意味な動きが多く、漫画に比べても訴求力に欠ける。一部のキャラは口元を隠しており、体幹や眼が充分に描ききれていないせいもあって、心情が捉えられず人形のようで不気味。『シドニアの騎士』のアニメ化も行ったポリゴン・ピクチュアズが制作に当たったが、人物に関する作画技術は、むしろ後退したように感じられる。
設定と背景画が優れているので【総合評価☆☆☆】としたが、もう少し演出に力を入れてほしい。