蒼い✨️ さんの感想・評価
3.3
物語 : 3.5
作画 : 3.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
もう少し美麗な作画で観たかった。
【概要】
アニメーション制作:エンカレッジフィルムズ
2023年1月7日 - 3月25日に放映された全12話のTVアニメ。
原作は、「小説家になろう」に連載し今では完結しているweb小説を改訂し、
講談社のKラノベブックスから刊行されている、岡沢六十四によるライトノベル。
原作イラストは、sage・ジョーが担当し、
『ヤングマガジンサード』→『月刊ヤングマガジン』にて、
漫画家の、るれくちぇのネーム構成と作画による改変されたコミカライズ版が連載中。
監督は、追崎史敏。
【あらすじ】
魔王軍に仕える暗黒兵士のダリエル・32歳は、
四天王補佐の役職を解任されたばかりか、魔王軍から追放された。
追放を命令したのは四天王「絢火」のバシュバーザ。
はるか昔から魔族が人間族と対立していて、双方の見た目には殆ど違いが無く、
物理攻撃特化で魔力を持たないのが人間族で、魔法を使えるが武器を使いこなせないのが魔族。
魔力の大きさが絶対の魔族のくせに魔法が使えないダリエルは無能だから必要ない!
とのこと。ダリエルを四天王補佐に任命したのは先代四天王でバシュバーザの父親である、
「業火」のグランバーザ。孤児だったダリエルを我が子のように育ててくれた恩人でもある。
『息子をよく助けてやってくれ』との約束を守り、
政務や軍略面で補佐していたダリエルだったが、それを果たせなくなった今、
『合わせる顔はない』とバシュバーザに挨拶せずに出ていくダリエルだった。
32歳になって魔王軍以外に何をやればいいのか今更さっぱりわからないダリエルは、
空腹で森の中を彷徨っていた。そこで、大きくて獰猛な猿のモンスターに襲われていた、
十代後半の少女を大猿を倒して助けたダリエル。少女マリーカはダリエルに惚れて、
彼女が住むラクス村まで、その怪力でダリエルを引きずっていった。
引きずられながら彼女なら自分で大猿を倒せたんじゃないか?と疑問に思うダリエルだった。
マリーカは村長の娘で、彼女の豊かな胸の谷間につられて村長の家にお世話になることを決めた、
ダリエル。村長は村のギルドマスターも兼任していて魔族では絶対に成功しない、
ギルド登録の儀式をダリエルに無理やり行ってしまう。
魔族のスパイ狩りにも使われる儀式にビビるダリエルだったが、
それでダリエルは実は人間族なのが判明して、魔族ではないので魔法を使えないのは当たり前だった。
魔王軍最下級の暗黒兵士だったダリエルは、魔族ではなくて人間の冒険者として、
スローなセカンドライフを、このラクス村で始めるのだった。
【感想】
なろう小説にもトレンドがありまして、異世界転生チート無双の他にも、
無能扱いされた主人公が勇者パーティーやギルドから追放されることによって、
実は有能だった主人公がいないと成り立たなくなった追放した側が破滅に一直線に向かって、
主人公は新たな環境で成功して英雄になったりする、ザマァ展開のジャンルが成立していますね。
この作品も、原作ではバシュバーザ様がとんでもないカス野郎で敵味方全員に見放されて、
自業自得とは言え哀れな死を遂げるという典型的なザマァなろうのですが、
漫画版ではキャラの人格が大きく脚色されていて。
話の大筋では原作小説をなぞっているものの展開が異なっていて、
名前のあるキャラクターにはできる限り救いのあるハッピーエンドを与えようという、
漫画版独自の改変が好評らしくて、その漫画版を原作にアニメ化したっぽいですね。
出自から、人間族と魔族と両方の立場がわかるダリエルが緩衝材となって、
両種族が融和するというのが本筋の話ではありますが、
原作 … バカは死んでも治らないから消えてもらって、穏健な人たちだけで話し合おう!
漫画 … 誠心誠意わかり合おう。敵対してても温情をかければいつかはわかってくれる。
話し合いが通じない奴は猶予を打ち切って見捨てるのが当然という原作の思想こそ現実的ですが、
原因を突き詰めて理解し合おう、最初は敵として登場したキャラもダリエルに感化されて、
まっとうな道に生き方を軌道修正していく。理想主義に偏りがありますが、
現実はあまりお綺麗ではないから、創作の中だけでもキレイな話が見たい、
そういう需要のもとに『イイハナシダナー』と思えれば、
多分この作品を好きになっていられるのかもしれません。
先述のバシュバーザにしても死んで当然のバカだからプチッと踏み潰しました!めでたしめでたし!
でジャギやアミバ様とメンタリティが大差ない悪党だった原作仕様から人格改造されて、
言葉足らずの家庭不和から来る、ただ父親から愛してもらいたかった寂しさが、
ダリエルが元凶であると思い込むことで憎しみを募らせた心の歪みに変わっていったと、
闇落ちの原因さえ解決すればきれいなバシュバーザに戻れるといったように、
原作小説と漫画(アニメ)では全く違う話になっていますね。
漫画でのバシュバーザは中性的な顔立ちの美形化をしていてゲスな表情が無いですしね。
小説の行間を読みすぎて、真面目なモノローグと同時にマリーカのおっぱいをガン見するダリエルの、
むっつりスケベさが本音と建前みたいなギャグになっていたり、
原作小説から脚色された男性キャラ陣の心が乙女になっていて、
ダリエル(彼自身は女性にしか興味ないですが)に手を握られて赤面して目線をそらすという、
パタリロみたいな男同士の感情のもつれを楽しむというコメディが漫画版の持ち味ですが、
それをベースにしながら男同士の怪しい関係とか漫画版の美麗な作画といった要素が、
アニメ版ではイマイチ再現力が高くはないかな?というのが最終回まで見た印象。
漫画版をベースにしているのだからこそ、表情や所作などにこだわってほしかったのですが、
予算的にもスタッフの映像の構成力の部分でも足りなかったかな?というのが惜しかったですね。
人情劇だからこそキャラクターや展開に感情移入するにはビジュアルの説得力が必要なのか?
アニメは映像コンテンツであるからこその、そこの重要さを感じさせる作品ではありました。
これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。