「うる星やつら(TVアニメ動画)」

総合得点
68.6
感想・評価
208
棚に入れた
615
ランキング
2060
★★★★☆ 3.5 (208)
物語
3.2
作画
3.5
声優
3.6
音楽
3.4
キャラ
3.5

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ネタバレ

蒼い✨️ さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.8
物語 : 2.0 作画 : 3.0 声優 : 4.0 音楽 : 1.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

ボイスコミックで十分なやつら

【概要】

アニメーション制作:david production
2022年10月14日 - 2023年3月24日に放映された全23話のTVアニメ。

原作は、昭和末期に『週刊少年サンデー』にて連載されていた漫画作品。
著者は、高橋留美子。

監督は、髙橋秀弥/木村泰大。

【あらすじ】

4月13日の金曜日に生まれた男子高校生の諸星あたるは、女にふられてばかりのナンパ好きで、
肩身が狭い母親からは『産むんじゃなかった!』とまで言われるバカ息子。

それが、地球侵略にやってきたエイリアンを相手に、地球を賭けて、
異星人のコンピューターに選ばれた地球人代表として鬼ごっこをすることになった。
エイリアンは鬼であり、頭に角が生えていて空を飛んだりするが、
見た目は人間と大きな違いはない。鬼族の代表はラムという美少女だった。

諸星あたるは幼なじみの三宅しのぶからの、勝ったら結婚してあげるとの言葉を励みに、
ラムを毎日追いかけ続ける。最終日にラムを捕まえるのに成功したあたるであったが、
『結婚じゃーっ!!』とのあたるの言葉を自分へのプロポーズと勘違いしたラムは、
諸星家の押しかけ女房の地位を強引に認めさせてしまう。(同棲はしていない)

“宇宙一の浮気者”の諸星あたる、過激な電撃鬼娘のラムなど、
数多の個性的なキャラクターが織りなす、友引町を舞台にしたラブコメ。
それが、「うる星やつら」なのだった。

【感想】

過去に「うる星やつら」のアニメにガチった経験のある自分にとっては、
このリメイクアニメは、とてもつまらないものでした。

その理由を挙げていくと、演出能力の低さに尽きますね。

リメイク版は旧アニメの3倍のスピードで原作エピソードを消化してるのですが、
小気味良いテンポと言えば聞こえが良いのですが、
その実態は原作絵に色を付けてあまり構図とか工夫せずに動かして、
声優には旧アニメの物真似で喋らせているだけ。台詞や仕草の密度がスカスカ。

滝のような畳み掛ける台詞量と気持ち悪いセクハラじみた動きで笑わせてくるのが旧アニメですが、
リメイク版だと動きをはじめ全体的に淡白な作り。そこは原作準拠と言えなくもないですが、
自主規制だらけで原作の言葉の毒と暴力描写とサービスカットがかなり削られていますね。

「このすば」の身体全体で怒りを表現したりエアおっぱいモミモミしてたクズマさんのほうが、
この動きがつまらないリメイクアニメの主人公より遥かに諸星あたるしていました! 
個人的には、ぴえろ版の「うる星やつら」のバカバカしさと勢いを受け継いてるのは、
正しくは、「この素晴らしい世界に祝福を!」だと思っています。

『ちゅどどどどどどどん!』とかオノマトペを声にするのが寒いし音周りが最悪。
感動シーン?では韓流ドラマみたいな物憂げなひとつの曲だけをしつこく繰り返している。
キツネの登場回で7分間にその韓流ドラマみたいな安っぽい曲を3度も流すのはセンスが無い。

音響監督の岩浪美和氏はもっと出来る方と思ってたのですが、このアニメでは仕事が良くないです。
芝居のサジェスト的な意味でも旧作での斯波重治氏に軍配が上がりますかと。

原作から薄味にして、ただ動かしただけの何の深みもないリメイク版での、
第22話中盤の「愛がふれあうとき」をピックアップして比較すると、

昭和版の第145話「キツネのかた想い恋すれどせつなく…」では、
冬の出来事だった原作とは季節を変えて梅雨真っ盛りで雨に濡れた紫陽花が美しい背景美術、
セルアニメで、しのぶのピアノ演奏を魅せる高度なアニメーション技術、
ゆったりとした生活感のある情緒的な演出、仕草で感情の一つ一つを大事にした作画芝居、
仏滅高校の総番のギャグシーンでは過剰なアップテンポで他のシーンとの緩急をつける、
息遣いからはじまる声優の演技(特に、しのぶ役の島津冴子のキツネに話しかける演技が圧巻)
などなどドラマチックに演出されているのが何もかもが違いすぎてて、
同じ原作エピソードでも一本調子のリメイク版とここまで差がつくものかと。
ディーン版の、やまざきかずお監督は押井守監督よりユーモアという点では乏しいですが、
かなりの映画好きで、ドラマ向きの演出の引き出しをきちんと持っていたのですよね。
原作漫画の16ページのエピソードを膨らませて、日本の季節感が情緒たっぷりに表現されていて、
キャラクターの表情や声色が記憶に残って後を引く美しい日本映画みたいに仕上げています。
アニメ演出家が映画好きを自称するには、チェンソーマンの監督でしくじった、
中山竜氏みたいにただ映画のタイトルを並べれば良いというものではなく、
これまでに観た作品から何を学んで自分の血肉にしたか?が大事であると思います。
新旧の同じエピソードの同じシーンを比較すると演出家の観察力・想像力・教養の違いが明白。

リメイク版のほうが作画が良いと主張する方がいれば、
それは上っ面だけのイラスト的な意味でしか作画を観てませんね。
作画枚数と芝居の細かさが全く違っていて、リメイク版の殆どが安っぽい映像ですもの。

あと、リメイク版の作画が嫌いな理由として、
喋らないキャラを灰色の水玉模様トーンで塗りつぶして、
まるで石膏像のように棒立ちにして背景と同化しているのが白けますね。
旧作では背景モブにも表情があり意図を持った動きをしていた賑やかさとは対象的です。

また、旧アニメは、風戸慎介、安西史孝、西村コージ、星勝、ミッキー吉野と、
5人も作曲家がいてひとつひとつのレベルが本当に高い。
特に劇場版の「ビューティフル・ドリーマー」の星勝による劇伴は印象的な曲が多く、
「やすらぎ」(ラムが無邪鬼に自分の夢を語るシーンのBGM)が、
TVアニメ本編にフィードバックされていて、またその名曲だけに頼らずに、
シーンごとに様々な曲が使い分けられている点で、逆にリメイク版では、
曲数が極端に少なくて、使い方がワンパターン過ぎて耳がうんざりするのとは雲泥の差。

リメイク版も、「君待てども…」「君去りし後」は良かったものの、基本的に薄味過ぎるために、
それ以外が本当につまらなくて、昭和版より優れているポイントが全く思い浮かばないです。

従来のアニメでの「うる星やつら」を語るのに、押井守監督の話ばかりで、
原作者の高橋留美子先生や、後任のやまざきかずお監督もきちんと語れよ!と思ってた自分としても、
一部の感動エピソードを除いては退屈だと思ってたディーン版の良さを再確認させられる。
アニメの面白さは作画と演出の表現力で決まるという意味での、
反面教師的な失敗作がこのリメイク版だと思いました。

押井監督の分身で千葉繁の熱演が光る旧アニメで大活躍したメガネがリメイク版ではいなく、
サトシという目立たないキャラになっているとか、押井守監督じゃないからつまらないとか以前に、
笑えてアクの強いぴえろ版、叙情詩的なディーン版のどちらにしても、
演出の基礎的な部分からしてスタッフの技量がリメイク版とは大幅に違います。

原作が古いからアニメがつまらないというのとは少し違いますね。
仮に40年前のアニメのうる星やつらがこれならば、大ヒット作品にはなっていませんね。

昭和のうる星やつらとは、うる星ファンにとっては夢を包み込む巨大なテーマパーク。
無限に広がる宇宙の銀河系の太陽系第3惑星の日本という極東の島国の東京の友引町。

友引町とは、宇宙人・未来人(タイムスリップ)・超能力者・幽霊・妖怪なんでもありの世界。

あたるたち男性キャラが女性でラムやしのぶらが男性になってるなど、
無数のパラレルワールドが存在して、些細なきっかけで別世界に迷い込んでしまったり、
一つの非常識な行動から世界の法則が乱れて時間と空間がおかしくなってしまったりする、
デタラメな事件が当たり前のように起きる、たまらなく不思議な世界。

ウルトラマンとゴジラがコブラツイストと16文キックの応酬で町が崩壊して廃墟になっても、
それが許される。翌日には元通りの非常識極まるスケールの大きなゆるいSF世界。

呆れるような些細なきっかけで宇宙戦争が始まったりもする過激な世界。

子どもじみた夢がアニメの中では現実になってしまう世界が、昭和のうる星やつら。
対して、原作を工夫もなく無難に薄味にしてなぞってるだけの尺詰め詰めの令和のうる星やつらは、
スケールが全く感じられなくて夢が無いですね。
今の時代にうる星やつらというコンテンツがイマイチなのも、
情報過多の時代で、夢が無くなってることも関係あるのかもしれませんね。
少なくともクリエイターは夢を持って作品づくりに反映させて欲しいものですね。


これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。

投稿 : 2023/04/01
閲覧 : 179
サンキュー:

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