たつや さんの感想・評価
3.6
物語 : 3.5
作画 : 4.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 3.0
状態:観終わった
世間の評価は高すぎる、が心に刺さる良作ではある。
なんとも評価のしがたい作品であった。僕はあまり細田守監督の「サマーウォーズ」を評価していないのだが、それと同じく話がちょっとごちゃっとしていて、分かりにくいところも僕の中では結構あった。正直世間がここまで評価しているのはちょっと信じられない。失礼な言い方になるが最後の怒涛の伏線回収の展開やアニメチックな終わり方で浅い層は騙されているのかなと。それと「竜とそばかすの姫」のような、おおかみの正体そこ!?みたいなのもあった。
ただいじめをテーマに取上げたこと、それに対してどう向き合っていくかという過程に対しては良かったと思う。いじめで本当にきついのは「心が休まる時間がないこと」だと思っていて、学校ではいじめられ家が唯一の心を休める場だったのに、家まで押しかけてきてひどい仕打ちをされたのだから、そりゃ壊れてしまうというか、不登校になるよな。この見せ方がベタではないというか、本質を突いていて良いと思った。ただそれ以外の6人の過去エピソードについては、おそらく小説だと細かく書かれているのだろうが、映画で尺を短くしたのか少し浅いなと感じた。
伏線について、7人それぞれ時系列が違うという設定は僕も途中から気づいていたし、割と製作者側も気づいてくれるようにヒントを出してくれていたと思う。喜多嶋先生について、正体はアキであったのだが、喜多嶋先生が1回こころの家に来た時に「ストロベリーのティーバッグ」を渡していて、その時に「あれ、アキちゃんもこの先生の世話になっているのかな」と推察していたけれど、そのミスリードを誘って本当は同一人物だったっという伏線回収は見事だった。後から思うと1番そういうことかー、ってなった所でもあった。
最後の「大人になって」というメッセージについて、僕も噛み砕ききれていないのだが、おそらく喜多嶋先生が昔のアキに対して送ったメッセージであり、昔のアキによく似た境遇のこころちゃんが来たから、昔の自分と照らし合わせて呟いた言葉ではないかと考えた。
この作品のメッセージは、最後は学校に行けてハッピーエンドっていう締め方でそこは良いと思うが、「学校に行け」って事じゃなくて、「死ぬな」ってことだと思う。今がしんどくても、大人になったら楽しいこと沢山あるよってメッセージを今不登校の中高生達に伝えたかったのかなと思った。
声優面について、主人公初めみんなの声はあっていたように思うが、オオカミちゃんだけ、聞いた瞬間に芦田愛菜だ!と分かってしまうから、芦田愛菜にしか見えなくてキャラクターが薄れていたようには感じた。
アニメーション面についてはほぼほぼ文句なし。さすがA-1 Pictures。総合評価は84点。