アジオフライ さんの感想・評価
4.8
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
これぞ「最高のアニメ」
今までそれなりの本数アニメを観てきましたが,これほど「最高のアニメ」に相応しい作品はないのではないでしょうか.コンセプトの明快さに始まり,設定考証が非常に行き届いていて,しかもアニメーションとしての完成度もずば抜けている,素晴らしい一作です.
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・恐怖のメタファーである「巨人」
{netabare} この作品のコンセプトは実に明快で,人間を襲って食べる「巨人」という敵に人類が立ち向かう物語です.そもそも,非常に巨大な生物の存在は,人類に潜在的な恐怖を掻き立ててきます.また,作中には「巨人には消化器官がない」という設定があり,彼らが食事目的で人間を食べているわけではないという点に,人類の尊厳に対する挑戦的な姿勢が伺えます.そして何より,「生き残った人類は,100年もの間壁に逃れてつかの間の平和を享受してきた」という背景は,戦後70数年間大きな戦争に巻き込まれることがなかった我々日本人の立場を想起させます.このようにこの作品は,特に日本人が潜在的に抱いている恐怖心を,「巨人」というたった一つのメタファーによって,ファンタジーとして表現することに成功しているわけです.それゆえ,単純明快なコンセプトでありながら,感情を強く揺さぶられる物語として成立していると感じました.{/netabare}
・アクションの要である「立体起動装置」
{netabare} またこの作品では,「巨人」を軸にした舞台設定が緻密に練り込まれています.その最たる例が,巨人の弱点であるうなじを切り取ることに特化した「立体起動装置」と「超硬質ブレード」です.人間よりもはるかに背丈がある巨人と渡り合うため,ワイヤーの巻取りを利用して擬似的に空中飛行を実現するこの装置は,独特の理論ながら説得力のあるデバイスとなっています.さらにその使用シーンは,ワイヤーの射出と巻取りの間にあるスピード感の違いから,非常にメリハリのついた緊迫感溢れるアクションが繰り広げられ,映像としての面白さにも寄与しています.漫画ではなかなか難しい臨場感あふれる表現を,アニメーションならではの特長として確立させたのも,この作品が優れたアニメたる所以だと思います.{/netabare}
・巨人の謎
{netabare} この作品の物語は,巨人が一体何者なのかという謎を追う形で展開されていきます.数少ない欠点としては,やはりエレンがグリシャからカギを託されるシーンが,彼の記憶喪失によって恣意的に謎として扱われてしまっている点が挙げられるでしょう.この辺りは,もう少しスマートに描くことができれば,と思います.
さて,エレンの巨人化を皮切りに,一部の巨人が人類の変身した姿であることが明らかになります.その際,調査兵団は女型の巨人=アニの捕獲作戦に移ることになります.これまで一方的に負けるだけだった人類が,エレン巨人を手中に収めたことで攻勢に出る様には,これまでのカタルシスもあり爽快感すら感じさせます.事実,我が国に『ゴジラ』『鉄人28号』『ウルトラマン』などがあるように,巨大な生物は単なる恐怖の対象であるだけでなく,一種のヒーロー性を見出すこともできるわけです.しかし一方で,巨人の力を受け入れていくエレンの姿には,得も言われぬ恐ろしさも感じます.「何かを得るには何かを捨てなければならない」がために,人間性を捨てるべきなのかどうか.この作品は,そんな自己批判的考察すら行き届いているのです.{/netabare}