薄雪草 さんの感想・評価
4.4
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
伝説と祭典の美味ムスメ
子どもの頃から馬は身近にいる存在でした。
観光用の牧場がご近所にあり、家の前の道路を毎日のように闊歩していました。
遠慮なしにウ●チを落としていくのにはさすがに閉口しましたけれど。
ですから競走馬を見たり、気持ちを入れて応援するのは、馴染みがあるんです。
休みの日には厩舎にも出入りさせてもらって、飼育員さんからたくさんのお話を聞きました。
今でも覚えているのは、馬の鬣(たてがみ)って、人間の頭髪と同じってことです。
一頭一頭に個別の質感があり、特有の個性を醸し出すものなんだと。
ですから、馬を判別するには、巻きのあるくせっ毛や、サラサラのストレートヘアなどが覚えの利くことらしいです。
つぶらな瞳は、感受性がとても繊細で、感情表現が役者さん並みに多彩でモノを言います。
ブラシをじょうずに掛けてあげると嬉しそうに目を細めるし、手綱さばきがへたくそだと下馬したときにジロリと睨みつけたりもします。
言葉を使わなくても、目力だけで十分に気持ちが通いあうようなふしぎな感覚になります。
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出会った馬たちは、レースとは無縁の世界の存在でしたが、それでも筋骨をたくましくし、飛ぶように疾走する四肢は、峻烈にイメージできます。
ゲートインする昂ぶりと誇らし気な勇姿に、高らかにファンファーレが鳴りわたって開幕を告げる。
一斉に大地を踏み鳴らし、芝を蹴散らしながら、ひたむきにゴールへと突き進んでいく精鋭たち。
必死にハミを噛み、鼻腔を全開にして、もうどうにかなってしまいそうなレース終盤の走りっぷりです。
一着だけを狙いすました強靭な意志と、口から吐き出される苦し気な泡が、思わず手の平を固く握らせます。
ゴールの瞬間にどよめく大歓声と、ざわめきの余韻に包まれるため息。
それぞれに尽くしたベストに、多くのうなだれた足取りに、エールの拍手を送るのが、レースを賑やかに盛り上げてくれた彼らへの感謝のお作法です。
その日、風を切って駆け抜けた優駿たちの名前は、翌日の新聞の見出しと幾多の優れた記事に、忘れられない記憶として刻まれています。
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そんななか、全く新しいバリューを与えるのが、本作の乾坤一擲の(それとも大穴的な?)面白さ。
歴史に名を遺した "ウマ娘" たちが、こぞってモニターを駆け抜けていくなんて、他に類を見ない珠玉の "美味ムスメ" たちですよね。
競馬愛好家はもとより、可愛い女の子を愛でたいアニメ愛好家にも、斬新なパイと、コアな大穴を埋める魅力とでみなぎっています。
それにしても、眼からウロコの設定と、どう転ぶか分からない展開もあって最後まで目が離せませんでした。
勝利をつかみ取った彼女たちが、祭典のステージに歌うアイディアにも、優駿へのリスペクトがあり、ファンと一体化したい歓びが感じられて、とても印象的です。
伝説的な逸話の持ち主たちをここまで一堂に会させ、しかも、思いの丈のままの女の子に擬(なぞら)えて、華やかに、凛々しく、清々しく魅せるとは・・・まぁ・・・どうにも・・・ウマすぎるってもんですよね。