薄雪草 さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
スカンジナビアン・リブートファンタジー
およそ終末的世界観を彷彿とさせる設定。
そのオリジンは、北欧神話にたどれそうな特異な雰囲気にあふれています。
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例えば・・・「大雪海」は "バルト海" に重ねられるかも。
露西亜のバルチック艦隊のネームルーツでもありますが、好戦国バルギアのネーミングにもそのセンスを感じます。
それに、"ヴァルハラ" にもつながっていそうな気配。
バイキングの合言葉と言えば「ヴァルハラで会おう!」です。
意味は、"死してあの世(天上の城)に導かれようぞ!" というもの。
物語世界の終焉に誘(いざな)うのは、戦(いくさ)の王か。
それとも古(いにしえ)の文字が、共生する世界線への道標となるのか。
今後、どのようなオマージュやリスペクトが織り込まれるのか、まだまだ目を離すわけにはいきませんね。
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例えば・・・「賢者」は "主神オーディン" が似姿に。
知識や情報に対して、極めてどん欲な神として描かれるオーディン。
手に入れるためには自らの目や命を代償に差し出すこともあったとも言われています。
その結果として、彼の呼び名は、50とも60とも、70ともあると言われています。
言うなら、知略に長け、創造に優れ、一騎当千の働きを持ち合わせる神。
まさに「賢者」と呼ぶにふさわしい北欧の主宰神です。
"大海も、地図も、文字も" 、共通するのは「知識」です。
リリハとカイナとが歩んでいくプロセスに、きっと太古の知識を出典とし、翻訳を深めていく冒険譚が展開されていくものだと希っています。
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例えば・・・「大軌道樹」は "ユグドラシル" に置きかえて。
"オーディンの馬" とも異名をとるそれは、天上世界と地下世界をつなぐ神なる木。
のちのキリスト教の聖書では "生命の木" とも称される "象徴的神髄" です。
あまりの偉大に、人の目には触れえないとされているのも、本作のモチーフとしては十分な存在性と、困難性を語るだけの説得力を持ち得ています。
また、その最下層には死者の国 "ヘルヘイム" があり、次いで根元には破壊神 "霜の巨人" が、そして上部の冷たい氷の国に "人間たち" が住んでいると伝承されているのも、なにかしらの共通項が本作に見つけられそうですよ。
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緻密なシナリオと、丁寧に描かれるストーリー。
そしてプリミティブな一面を見せるのも、先史的なラギッドさをゴリゴリ押し出しています。
個人的には "大長編三部作(3クール?)" と見立ててもグッときそうな期待感。
お願いだから、どうかどうか「全部見せ」してくださーい。
おまけ
{netabare}
なんだかんだで、一番印象に残っていて、ここは物語の心臓部で、絶対に欠かせないぞと思ったシーンがあります。
それは物語の前半、カイナとリリハが軌道樹を降りてくる途中の、とある出来事。
ついに生理現象が我慢できなくなったリリハが、カイナの視線を気にしながら、「聞こえませんように。どうか聞こえませんように。」と顔をくしゃくしゃにするシーンです。
国の危機を救うと大見えを切りながら、自分のプライバシーを若い男性と共にするリリハ・・。
私は、このシーンが、とても新鮮で斬新に感じましたし、嘘のない(嘘の吐きようのない)真っ当な人間性を表しているように受け止めました。
リリハが、サウナでカイナと自然体でスキンシップできたのも、こうした隠しようのない時間を一緒に過ごしてきたから、できたことなんじゃないかなと感じます。
とても良いシーンでした。
{/netabare}