蒼い✨️ さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
母娘の日常。
【概要】
アニメーション制作:STUDIO 4℃
2021年6月11日に公開された97分間の劇場版アニメ。
原作は、作家の西加奈子による同名の小説。
監督は、渡辺歩。
【あらすじ】
肉子ちゃん(見須子菊子)は、太ったブサイクな38歳の女性。
男運最悪で騙されてばっかりだが、明るく純粋でパワフルな性格。
何人目かの彼氏の小説家志望の男と付き合っていたが、
その男が自殺の書き置きを残して去っていったのを追いかけて、
痩せっぽちでしっかり者で母に似ず容姿が整った小学生の娘の喜久子を連れて、
辿り着いたのが北陸のとある漁港。結局男は見つからなかった。
肉子ちゃんは、あまりにもふくよかな姿に「肉の神様が現れた」と、
年老いた焼肉屋の主人のサッサンに雇われて働き、その焼肉店は賑わっている。
肉子ちゃん親子がサッサンの持つ漁船に格安で住まわせてもらって3年。
物語は娘・喜久子が11歳になって、有名人な母親がちょっと恥ずかしいと思ったり、
女子同士のいがみ合いで悩みができたり、ちょっと気になる男の子ができたりで、
思春期らしい心の問題を抱えるようになっていったのだった。
【感想】
北陸が舞台ですが、やたら関西(吉本)チックなノリのコメディさが目立つ作品。
大竹しのぶが演じる主人公である肉子ちゃんが大阪の女ということもありますが、
明石家さんまプロデュースで、そのさんま氏が持つ原作へのイメージを、
アニメの中に落とし込んで演出しているとのこと。
主人公の肉子ちゃんの凄いキャラデザに、え?このアニメ大丈夫?かと思っていましたが、
心配御無用!ひとりひとりのキャラクターが役割を演じさせられてるのとは違っていて、
生命のある感情が宿っている人情劇。チック症という疾患を持っている者もいれば、
他人への嫉妬や怒りがあり、心があるからこそ悩みもすれば失敗もする者もいる。
若さゆえの過ちや人間同士の関係でのしくじりで後悔することもある。
沈んでばかりでなくて、反省したり謝ったりして行く先々がある。
小学生同士のいざこざのエピソードに、こういう仲違いってあるよねという感じで、
意固地になるのをやめて苦しさを吐露して素直になることも大事だよねという教訓が見えたりで、
苦い経験を経ても、感情を解きほぐしていく心理描写が秀逸というのが率直な感想。
現実だとイジメに関係が悪化して嫌い合ったままに卒業することもよくありますが。
リアルな部分がある人物描写の中で肉子ちゃんの存在が異質。
151cmで67.4kgという設定ですが見た目は100kgあってもおかしくない脂肪の塊。
最後に量った体重から長年更新していないままに正確な数値が不明という説を、
自分は採用してるのですが、本来ならば悲惨過ぎる人生を歩んでいる肉子ちゃんを、
その過剰すぎるまでにふくよかでコミカルなルックスで中和して笑いに変えている。
太ったブサイクな天使である肉子ちゃんのへこたれずに笑顔で明るく生きている姿に、
心の光を感じることができれば視聴者にとっては良作足り得るものかなっと。
ニコニコしてる感情豊かな肉子ちゃんは見た目どおりの能天気さだけなんじゃなくて、
人並みに悩んだり心の闇も持っている。ラスト近くで娘・喜久子に見せた優しい真顔だけで、
おバカな彼女なりに人並みに悩んでて、敢えて明るく振る舞っているのが見えていたりして、
一見コテコテの人情劇に見えて、思ってたより深い話に見えていたりします。
全く似てない母娘ですが、父親がいない事も含めてその理由も作中で明かされてたりします。
これは親子愛の物語であって普通にいい話ですが自分は全く泣けなかったですね。
肉子ちゃんの泣き顔があまりにもブサイク過ぎてもらい泣きどころじゃない(笑)
自分はアニメを見るのにルッキズムの傾向がある自覚を持っているのですが、
ただ、このアニメが肉子ちゃんがあの見た目だからこそ成立してるというのも理解しつつ、
やっぱり感じたことは自分の心に正直になってしまうなっと。
その肉子ちゃんの姿やキャラクターを受け入れることができれば普通に良作です。
と言いつつも若干人を選ぶ作風であることも否定できないと言ったところで、
これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。