「映画大好きポンポさん(アニメ映画)」

総合得点
80.4
感想・評価
202
棚に入れた
630
ランキング
458
★★★★★ 4.2 (202)
物語
4.3
作画
4.3
声優
3.9
音楽
4.0
キャラ
4.2

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ネタバレ

蒼い✨️ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7
物語 : 3.0 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

監督讃歌。

【概要】

アニメーション制作:CLAP
2021年6月4日に公開された94分間の劇場版作品。

原作は、「pixiv」に投稿されていた+単行本描き下ろし+ジーンピクシブ連載の、
シリーズ漫画作品。
著者は、杉谷庄吾【人間プラモ】。

監督は、平尾隆之。

【あらすじ】

映画の都「ニャリウッド」の若き敏腕映画プロデューサー・ポンポさんは、未だ少女ながらも、
伝説の大プロデューサーである祖父・ペーターゼンの才能と人脈を受け継いでいる。

学生時代はスクールカーストの底辺だった青年のジーンは、
灰色の学生生活で友達が一人もいなく、映画を観ることが彼の青春の全てだった。

ジーンは映画監督になることを目指して、
ペーターゼンフィルム社に入社して、製作アシスタントの仕事をしている。
卑屈でおどおどした冴えないジーンではあるが、
だからこそリアルでの報われなさこそがクリエイターの潜在能力に必要だと断言する、
ポンポさんの目に止まって、彼女のアシスタントとして選ばれて、
映像の仕事を任されるようになる。そして、新作映画の「MEISTER」の、
ポンポさん自らが書いた脚本を渡されて読んだ感想でテストに合格したジーンは、
鶴の一声でこの作品の監督に任命される。

引退した世界一の名優のマーティン・ブラドックの復帰作となる主演作品。
磨けば光る原石の新人女優ナタリーや、そして様々なスタッフを交えて、
スイスでの映画撮影が始まるのだった。

【感想】

ポンポさんシリーズの単行本6冊とまだ未完の最新作「ニャリウッド」を読んだ上での感想です。

監督を務めた平尾隆之氏は、以前に亡くなられた今敏監督のお弟子さんだそうですね。

監督未経験な様々な才能ある人材やら女優の卵やらを発掘してポンポさんが面倒を見て、
んで映画を撮って大ヒットして終わるのが、いつものパターンでして、
クリエイター志望やワナビーにとって居心地の良い夢を見せてくれる作品。

かつてはエンタメの殿堂だったハリウッドが、ポリコレに振り回されていて、
多様性や人種構成に過大に配慮し過ぎてつまらなくなったと言われて久しい現実を観るに、

フィクションであるニャリウッドの中に未だ存在している、
純然と面白さだけを求めて映画づくりをしている、クリエイターの理想郷。
原作を映像化した部分で、その喜びを視聴者が感じられたら幸いである作品であると思っています。

アニメ化されたエピソードは原作の最初の話で、シリーズでもいちばん淡白なのですが、
実は映画の前半で1巻の原作エピソードをほぼ消化しきっていて、後半はアニオリです。

「MEISTER」の、クランクアップ後にジーンくんの要請で映画の追加撮影をすることになり、
交渉がまとまらなかったスポンサーが撤退してしまい、予算がつかず、
半沢直樹ごっこみたいな銀行の融資の話に物語を持っていきながら、
遂には自分の人生から絞り出すような情熱的な主張で人を動かしては、
夢を追うことは素晴らしい!応援しようじゃないか!!
みたいな、熱い感動風エピソードに追加エピソードがなっているのですが、
なにこれ?この三文芝居?で響くものが無かったですね。

実は、映画化部分では初監督であるためにまだ大人しかった彼なのですが、
ジーンくんは映画の才能と引き換えに人間らしい協調性など様々なものを失っている社会不適合者で、
ポンポさんみたいな才能至上主義に偏っていて、ジーンくんと波長が合っていて、
やれやれ言いながらも何でも許してくれる便利な彼女がそばに付いてフォローしてあげないと、
ジーンくんだけなら干されてあっという間に破滅してしまいそうな危うさ。

会社に迷惑をかけたり、湯水のように資金を使い映画づくりのためならいくらでも無節操になれる、
原作続編でのジーンくんの人格破綻した数々の行為を見せつけられていると、
アニメでは映画の主役にジーン監督の生き方を重ね合わせたメタな構造で、
きれいな話として纏めようとしてるのに違和感しか無いのですよね。
さんざん多くの人間の情熱と時間を対価にしながらも多くを切り捨てて完成させた「MEISTER」も、
過去の成功体験には興味の無い原作のジーンくんに言わせれば粗だらけの「失敗作」だそうです。

作者によって与えられた才能でなにをやっても栄光への道を舗装されているキャラって、
実はあんまり好きではない。傲慢で我儘で天才というキャラ。
映画では悩みながらも色々なものを切り捨てる監督道というきれいなジーンくん。
原作では無表情でトロフィを投げ捨てて過去作は全部出来損ないで処分したいと言い、
ニヤリと笑いながら次回作の話をするジーンくん。
アニオリで「MEISTER」に私心を入れて視聴者の魂に届く感動の名作にした話と、
その後の話である原作をつなげるなら、数々の成功体験でジーンくんが変わってしまったのか?
原作者と、脚本も兼任したアニメ版監督とのキャラの解釈違いなのか?
アニメ版で増量された映画が完成するまでの情熱的な物語も、
ジーン監督が後になって見てて恥ずかしくなる作品を作ってしまったと自己否定しまくっていますね。

ポンポさんシリーズには別のキャラを主軸に変えた面白い話が多々ありますが、
天才が才能でねじ伏せるワナビーの夢を擬人化したようなジーンくんはあまり見たくは無いなあ…と、
アニオリの追加部分のせいで余計にジーンくんの手のひら返しによる人でなし感が増してしまい、
印象がマイナスになってしまったと個人的には思っていますね。

プロデューサーはクリエイターを信じて全力で応援する。
それはそれで素晴らしいことかもしれません。

2022年度は監督初挑戦のヒット作品に恵まれた年ではありますが、しかしながら、

『アニメはギャンブルだ!』と公言しては、自らが至らない(監督の域に達してない)のを、
会社やプロデューサーのせいにし続けて無職に落ちぶれてしまった元アニメ監督がいたり、

放任主義で監督に好き勝手させた挙げ句に原作付きの作品を演出の方向性で作り変えてしまい、
ファンの期待を裏切ってヒットしなかった前例が最近出来てしまったように、

“作品は監督のもの!”“クリエイターの自主性にすべて任せる”といった理想主義には、
光と影が両方存在する。思えばポンポさんのシリーズでは成功体験しか描いてないなってことで、
名言っぽいものを度々出して監督とは、作品作りとはこうあるべし!
と視聴者を誘導しようとしながらも、
監督依存のリスクと挫折を直接描いてないために夢物語に終わってるなというのが、
見ていてすっきりしないところ。

本来はアニメそのものの出来や演出の良し悪しだけで語ったほうが良いとは思いますが、
原作既読者としてアニメの内容に共感しづらいものとして、何故そうなのかと思うと、
序盤で述べたようにワナビーに都合の良い夢を具現化した作品だということに尽きるでしょうね。

「フランちゃん」「カーナちゃん」「ペーターゼンとマーティンの若い頃」
そして、今連載中のマズルカとヴィヴィアンの話である「ニャリウッド」
のエピソードならアニメでも見たいですが、
映画モンスターと化してしまったジーンくんの話はもういいかな…。


と、かなり感情だけで書いていますがこれにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。

投稿 : 2023/03/12
閲覧 : 192
サンキュー:

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