てとてと さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
藤子・F・不二雄原作の明るい宇宙冒険もの。アニオリの良回多し
宇宙人と交流が盛んな時代に、貧乏旅館の跡継ぎな主人公が宇宙人接待したり宇宙を冒険する。
※作品データベース様より転載
【良い点】
レトロフューチャーな東京で宇宙人のお客と交流する、独特な世界観。
程良いSFと現代(90年代から今でも)と地続きな日常感のバランスが絶妙で親しみ易い。
未来SFでありながら、昭和の古き良き懐かしさを覚える雰囲気。
キャラデザ含めた作画は申し分なく、声優陣もゴンスケの龍田直樹氏が絶妙。
ルナちゃんとか原作より断然可愛い。
主人公の21エモンが実家の零細ホテル立て直しと宇宙冒険への夢の挟間でひたむきにがんばる姿勢。
藤子主人公の中では優秀で、原作より自立した強い主人公で好感持てる。
主要キャラ含めて概ね原作より良改変されていて、アニメ版の方が親しみ易い。
横柄な芋厨ロボット・ゴンスケと、ドラえもんポジだがテレポート一辺倒のモンガーとの掛け合いが良かった。
特にゴンスケのコメディーリリーフとしての存在感は大。終始作風が明るくコミカル。
モンガーの異能を3キロのテレポートに限定したのもミソ、ドラえもん程の万能感は無く、適度にピンチを脱する塩梅が丁度良い。
かなり危機一髪な局面で「モンガー!」の連発でギリギリ脱するかどうか!?でハラハラドキドキさせられるシーンが多い。
その他、アニメ版オリキャラのハルカちゃんや、老冒険家ガトミックなど、アニオリの良キャラも多い。
多様な異星人との交流で、価値観の多様性や相対化視点が面白い。
環境や寿命が違えば価値観も常識もまるで異なる、接客する中でエモンが翻弄される過程がコミカルなコメディーになりつつ、未知に対する興味や憧れ(視聴者視点でも)に巧みに繋げている。
(的外れを承知で2020冬の「異種族レビュアーズ」の先例的な面白さ)
異種族間の誤解から騒動に発展する話もいくつかあり、本作はコミカルに緩和されているが、結構深いテーマ。
そんな多様な異星人たちと真摯に接して分かり合い、友情を結ぶ話が多くて後味が良い。
多様な生態があっても、信頼や友情などの良き関係性は普遍的である。
前半の異星人ホテル業でのドタバタ劇で宇宙冒険への憧れを高めつつ、少しずつ努力したり、交流の成果が宇宙船購入に繋がる因果応報な流れも分かり易くて納得感。
オリキャラのガトミック氏関連は良エピソード、原作よりも面白い。
29話以降の宇宙冒険も印象的な話が多く、31話「ゼロ次元の恐怖」は1話完結のSF奇譚としてかなり良かった。
29話以降はモンガーとゴンスケとの三人組で完成されたトリオ、未知と危機の連続で飽きさせず、しかもコミカルで前向きで楽しい。
続く32話など、風刺的な話が多く、前半のエモンが宇宙客と交流して積み上げた普遍的な良識を土台にしてアンチテーゼが分かり易い。
最後まで緊張感途切れず、ラストは余裕をもってハッピーエンド、後味良し。
【悪い点】
1話完結が殆どで、展開やオチがやや安直に感じる話も多々。大事になってる割に解決がアッサリ気味で拍子抜け(特に終盤)。
また前半の良さは改めて熱心に見返して気付くものの、当時の自分が殆ど内容を記憶してなかった辺り、多分あまり印象に残ってない。
全編通して見るとコミカルとピンチのバランスは良いが、1話1話を見ると微妙に盛り上がりに欠けた感が。
良い点な価値観や知識の偏りによる誤解展開も(いや、宇宙時代なんだからネットワークとかで調べろよ)な無粋な疑問が脳裏をよぎる。
宇宙人には危険な疫病も地球人にはただのインフルエンザでした、な話も、地球が辺境とはいえ宇宙規模の行政機関が把握してないのは不思議。
ここら辺はネット時代の無粋な視点で、当時の未知に満ちている浪漫かもしれない。
エモンと冒険する仲間がモンガーとゴンスケのみで層が薄い。
前半などの日常回も、ルナちゃんとリゲルは賑やかし程度で基本エモン一人+モンガーとゴンスケだけで話を回している。
ルナちゃんとリゲルも加わった展開もあったけれど、あんまり役立ってないような。
【総合評価】8~9点
ドラえもん等の陰に隠れがちな不遇な名作。原作漫画よりもアニメ版の方が好き。
評価は最高には届かない「とても良い」
放送当時あまり刺さらず、久方ぶりに見返しても正直(超面白い!)とまではいかず、地味な名作という感じ。