101匹足利尊氏 さんの感想・評価
4.4
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
人生を上書きするドでかい出会い
「紅華歌劇団」を目指す音楽学校100期生の少女らの青春群像劇を描いた連載コミック(未読)のアニメ化作品。
【物語 5.0点】
珠玉の回想劇が舞台劇に深みを与える。
全体構成は学校行事や音楽学校ならではの青春の悩み等が進行する中で、
ピックアップした群像の1話~数話完結エピソードが土台。
しばしば回想が話のメインになる。
ですが、振り返ってばかりで展開が遅いとか、しつこいとか微塵も感じません。
掘り下げられる予科生ら登場人物らには濃密に人生が敷き詰められており、回想の度に脱帽させられます。
特に第八幕「薫の夏」{netabare} 優秀な血縁がいる故、名前に押し潰されそうになっている少年少女同士のひと夏の恋の顛末{/netabare} が特大ホームラン級に大好きです。
そんな半生を背景にした彼女たちが舞台に挑む。
演技から味わいが滲み出るわけです。
役者がそれぞれ違う人生を経験してきたからこそ、
同じ演目、役を演じ継いでいく意義、それらを観客が見続ける意義がある。
当たり前のことを思い知らされる。これぞ王道青春劇。
【作画 4.0点】
アニメーション制作・PINE JAM
第一印象は、さらさデカいw
主人公・渡辺さらさは身長が頭ひとつ抜けている男役志望。
構図でも、さらさだけ、画面からはみ出してみたりw
強調されると否応無しにさらさに目がいきます。
さらさに惹きつけられてみると、演技中に見せる怖いくらい役に入り込んだ表情。
反面、幼子のように脆い純心な泣き顔。
様々な顔を見せる、さらさに翻弄される。
この多彩な表情描写が主要各キャラまで保たれている。
作画カロリーは潤沢ではありませんが要所は押さえています。
梅木 葵氏によるEDアニメーションも舞台衣装姿のキャラ等がきらびやかでハイセンス。
エピソードごとに変わる歌唱キャラにも構図を合わせて好対応。
『着せ恋』OPディレクターでもそうでしたが、氏はキャラを引き出す良い仕事をされます。
【キャラ 5.0点】
主人公・渡辺さらさが「オスカー」にちょっとオカシイくらい憧れている理由。
{netabare} 幼少期、歌舞伎で女は助六になれないと言われた挫折から。{/netabare}
もう一人のヒロインで娘役志望の奈良田愛。
元・国民的アイドルの選抜メンバーだったがファンに塩対応し卒業。
紅華音楽学校入学後も無気力だった理由。
{netabare} 幼少期の性的虐待から極度の男嫌いになり、男がいない世界へ逃避してきたから。{/netabare}
このようにキャラクター造形はネタではなく、
歩んできた人生から形作られた確固とした人格に根差している。
愛が、さらさと出会い前向きに変化していくメインストーリーも典型的ですが、
人生を目を背けたくなるトラウマまで忌憚なく描けている故の説得力があります。
周囲の人間の価値観を揺さぶり変化させてしまう。
愛にとって、さらさは身長だけでなく人間的にもドでかい存在。
異なる人生を抱えた人間に悲しみごと人生を上書きされる。
人と人が出会う意義を再認識させられます。
この人の運命に影響する&されるハイレベルな人物設定が、100期生の各メインキャラに用意。
さらに{netabare} 愛が塩対応した愛推しのドルヲタ(奈良の開国って(笑))や、上記の薫が恋した高校球児、
自信喪失から過食嘔吐に陥った山田彩子を励ますオネエ口調な声楽講師・小野寺{/netabare} など
エピソードの脇に至るまで人物が作り込まれている。
豊潤な群像が物語に王道の熱を供給する原動力です。
【声優 4.5点】
主人公・渡辺さらさ役の千本木 彩花さんを始め、特に男役志望の役には、
作中劇を中心に、低音域の活用という難題が求められますが、キャスト陣は好対応。
その上で、各キャラの背景を反映した繊細な心情表現も求められますが、そこもクリア。
松田 利冴さん&松田 颯水さん。
声優界を代表する双子声優が、沢田千夏&千秋の双子役を演じる。
ここも単にネタを狙ったキャスティングではなく、
一緒で仲が良いと思われがちな双子の複雑な感情という難エピソードを好再現する適材適所。
第九幕もこれまた良いんですわ。
【音楽 4.0点】
OP主題歌はsaji「星のオーケストラ」
“さあ 君の夢は 始まったばかりだ!”サビのフレーズを放送中から放送後も、街中で結構よく耳にした&残ったウキウキ青春ソング♪
この勢いに乗って本作も2期を!とはならないもんですかねw
劇伴担当は斉藤 恒芳氏。
『蒼穹のファフナー』などで見せる迫力のオーケストラが印象的な劇伴作家。
同氏は宝塚歌劇団にも楽曲提供しており、本作はうってつけ。
斎藤氏作曲によるED主題歌も歌劇用のアレンジ。
持ち回りで歌唱担当したキャスト陣もキャラソンにありがちな高音域は封印して、
音質を低めにコントロールし応える。