waon.n さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
目を開けてみる夢なら今は傷付いても良い
【Review】
『N・H・Kにようこそ』は『日本引きこもり協会にようこそ』です。
タイトルだけみて、これ分かったらスゴイんですが、なかなか突っ込んだタイトルをつけたものだと感心してしまいますねw
この作品は小説から漫画からアニメへとメディアミックス展開されていった作品になっているようです。(Wikipediaさん)
監督は『ケロロ軍曹』『ヤマノススメ』『推しが武道館いってくれたら死ぬ』などを手掛けた山本裕介さんです。
ジャンルにとらわれず、作品に合った面白さを上手く表現する演出の上手い監督さんのイメージ。シリアスな展開もコメディな掛け合いも上手くこなす職人といった感じですかねー。個人的には、『推し武道(略)』が好きっすね。
まず、このアニメは当時の社会問題を取り上げた作品で、{netabare}主人公の引きこもりにはじまり、集団自殺、マルチ商法、家庭内暴力など。{/netabare}社会派と言っても良いかもしれません。
次にいつの作品なのかです。
アニメが2006年で原作小説が2001年になっています。2004年には大岩ケンヂの作画でマンガにもなっていますね。
何で年代を並べたのかというと、その時の空気感を知っているとより深く見る事ができると感じたからです。
2001年に連載されているという事は、2000年の時事ネタを思い出してみると面白いかもしれません。
2000年には流行語で【17歳】っていうのがノミネートされていました。これは当時、キレる17歳っていう標語が登場し、若者が犯罪を行ったり、準犯罪行為をするチームなどを結成して暴れたりして問題になっていました。
当時のドラマや映画では『池袋ウエストゲートパーク』『青の炎』『金八先生』などがこれらをテーマにしていた作品だといえます。
犯罪など外に向ける方向と、引きこもりなど内へ向ける方向とで、問題児とされるカテゴリーが表面化していました。
特に目立ったのが、家庭内での事件だったように思えます。
割と若者が殺伐としており、大学生は就職氷河期へ突入しました。所謂、ロスジェネ世代ってやつです。なにこの言葉怖い。
当時を体験していた方は思い出していただけたでしょうか、あの頃の雰囲気を。私はその世代よりもすこーし下くらいなものでしたので、直撃ではないにしろ余波をくらっている世代ともいえるかもしれません。
物語は、大学生が突然引きこもりになってしまい、自堕落にしているところへ、ヒロインの岬が宗教の勧誘の釣り餌として祖母に同行し現れたところからスタートします。
引きこもりを治そうとする岬と主人公。引きこもり脱出のために色々とするがいい方向へ行く事もなく、事件に自分から巻き込まれていく主人公の図をコメディタッチで描いていたのが今作でした。
キャラクターデザインが非常に良いです。大好きです。
線は少な目でシンプルなデザインで、デフォルメもそこまで強くないですね。昨今の作品と比べれば、リアル寄りといって差しさわりないと思います。
岬は可愛いし、先輩は美しい。後輩の山崎は面白い。キャラが魅力的でそれぞれの欠点や持ち味が表現できていると思います。
彼らの巻き起こす失敗にヒヤヒヤさせられたり、笑わせてくれたり、時には一緒に落ち込んだり。
色々と巻き起こっても結局何か変えられたのか…。いや、日常は変わらない。でも、それも良いか。そう思える作品です。
まさに、時代の空気感に呼応する形で作品が作られて行った感じでしょう。しかし、村上龍とは違い、ライトノベルの重すぎない作風という事もあり、見やすいものになっています。
というのも、恐らくアニメ化されたのが、その5年後ってことなので、やや客観的に当時の現象見ることができていたか、そもそもアニメヲタク達は自分の世界にいて、現実の世界とは若干の距離感を保っていたのか、のどちらかもしくくは両方か…。
今見ると当時は悲惨だったなと感じると共に、これらの現象は今もまだ解決されないままだったりしますね。
当時の宿題を思い出す。または、当時の雰囲気を思い出すアイテムとして機能していると思いますし、楽しめる内容にもなっているので是非興味が湧いたらご視聴をしてみるといいかと思います。
【おわりに】
この作品内でゲーム制作をしているっていうサブプロットがあります。
『冴えない彼女の育てかた』がこれをメインプロットとしてやっている感じがしますね。プラスαでハーレム主人公の属性を付与。主人公は今作では後輩の山崎ですね。
今作の岬が冴えカノの加藤だとするとデジャブな感じするのは私だけでしょうか。
元ネタはこれなのかもしれないなどと思って観ていました。『冴えカノ(略)』も好きな作品なので元ネタではないかもしれないですが、勝手にちょっと嬉しい気持ちで観ていました。
カルペ・ディエム (その日を摘め)社会では色々な事が起こっているけど、それよりも自分の日常を見よう、そんなに悪くないぜ。と言われているように思えます。
こういう、語りかけてくる作品って良いですよね。
では、よしなに~。