れるびい さんの感想・評価
4.9
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
昔は良かったねといつも口にしながら生きていくのは本当に嫌だから
名作が多いと言われるクレヨンしんちゃん映画の中でも
特に評価の高い作品です。
このオトナ帝国の逆襲は、昭和の時代を生きてきた
世代ほど共感できるのではないかと思います。
「20世紀の匂い」を使って世界を20世紀に戻そうと企む組織が悪役です。
リーダーのケンとチャコ、見た目は完全にジョンレノンとオノヨーコ。
蛇足ですが、自分は全くビートルズ世代じゃないけど、音楽を学んでいる学生の時
3年くらいビートルズばかり聴きまくっていた時代があり、
とてつもなく影響を受けました。
あにこれでのハンドルネームのれるびいと言う名前も実は
ビートルズの名曲Let it beに由来しています。
古き良き20世紀を取り戻そうとするケン達と、未来を生きようとする
野原一家の戦いと言う構図です。
もちろん主役はしんのすけと野原一家なのですが、大人視聴者のほとんどが
実は、悪役であるケンにも共感してるのではないでしょうか。
「時代の匂い」って言う着眼点がすごく面白いと思っていて
飲食店や排気ガスや色んなものが混ざった匂いが
確かに昔は現在よりもした気がします。
この作品が名作と言われる理由と思われるシーンの一つに、
セリフが一切無い3分程のヒロシの回想シーンがあると思います。
あのシーンで泣かない大人は居ないんじゃないか
ってくらい何度見てもボロボロ涙が出てきます。
確かに、高度経済成長期の日本は景気も最高に良く、
誰もが明るい未来を信じられた勢いのある時代だったんだと思います。
実際、現在見事な程のシャッター街と化してしまった我が地元も、
僕が子供の頃は、毎日すごい数の人で賑わっていました。
頑張っただけ報われると言う様な勢いが、人にも町にもあった感じがします。
その時代からすると、現代はものすごく混沌としてきていて
未来には数えきれないくらいの不安がある様に思ってしまいます。
不安になると、つい昔のアルバムや画像や映像を見て
懐かしさに浸り、あの頃に戻りたいなんて考えてしまったりします。
年を取れば取るほど経験値と記憶は増え、昔は理解できなかった
色んな事に共感できるようになっていきます。
良い時も悪い時も必死に生きてきた大人だからこそ、
ケンとチャコの、良い時代に戻したい気持ちを理解しつつ
それでも泣きながら前を向くヒロシと野原一家に感動するのだと思います。
過去を懐かしんで、物思いにふけってしまう時僕は、
槇原敬之さんの「どんなときも」という曲の
「昔は良かったねといつも口にしながら生きていくのは本当に嫌だから」
と言う一節を脳内再生し、
何を弱気になってんだ。ダッセーな。
と、自分にツッコミを入れます。
今の時代も長い歴史の中ではきっと捨てたものではないと
思うので、楽しまなきゃ損ですよね。