蒼い✨️ さんの感想・評価
3.1
物語 : 2.0
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 2.0
状態:観終わった
サブカル・キング
【概要】
アニメーション制作:サイエンスSARU
2022年5月28日に公開された97分間の劇場版アニメ。
原作は、作家の 古川日出男による小説の『平家物語 犬王の巻』
監督は、湯浅政明。
【あらすじ】
室町時代の南北朝時代の話。壇ノ浦の漁師の息子の友魚(ともな)の父親が、
将軍・足利義満の命令を受けた侍の依頼で、源平合戦の平家滅亡の戦で消失した、
三種の神器の天叢雲剣を壇ノ浦の海の底から引き揚げることになって、
海の底で見つかった宝剣を舟の上で鞘から抜いたら、
呪いで身体が上下真っ二つで父親は死亡。友魚は両目が切れて盲目になってしまった。
亡霊となった父親の声に従い、侍への復讐に京都に向かった友魚は、
途中で出会った琵琶法師の谷一の弟子になってニ年の間ともに旅をして、
自分も琵琶法師になり、谷一と同じく「覚一座」に所属して、
座のしきたりとして「一」の字をもらって友一(ともいち)と名乗ることに。
その、友一がある夜に橋の上で人間離れした異形の体つきの犬王と知り合い意気投合。
犬王は猿楽座の息子だが、その呪われた身体のせいで父親らから化け物と疎まれている。
平家の亡霊を成仏させるために、霊の声を拾って歌い踊る。
友魚が琵琶を弾いて犬王が踊る、ふたりの斬新な「平家物語」は、京都の民衆を熱狂させていく。
そして、犬王が「平家物語」の演舞の種類を増やすたびに徐々に人間の姿に近づいていく。
時代のトップスターに上り詰めつつある、犬王と友一改め友有(ともあり)の、
従来の猿楽者や琵琶法師と大きく異なる出で立ちや様式の違いに批難の声もあったが、
その人気は、足利将軍家すら無視できないほど大きくなっていったのだった。
【感想】
監督である湯浅政明氏はアニメ業界版の横尾忠則でも目指しているのか、
独特の世界観でアニメを作っていますね。
映像と音楽は良いと言えば良いのですが、漫画家・松本大洋氏原案のキャラデザが好みではない。
そこは重要な問題ではなくて、ミュージックビデオとしてはともかく、
一本のストーリーの映画としては、冗長でつまらなかったかな。
犬王の呪いの設定は、手塚治虫先生の「どろろ」のパクリでありますし、
演奏は映像には存在しないエレキギターやドラムなどの楽器の音が強めで、
パフォーマンスが洋楽ロックギタリストのものでありますし、
見世物がマイケル・ジャクソンのダンスやらフィギュアスケートの演舞そのまんま過ぎて、
要は現代からの引用だらけのパフォーマンスの寄せ集めを用いての能楽と琵琶へのマウンティングで、
やっていることは、なろう小説で知識チートで未開のナーロッパ人にイキる現代人まんま!
猿楽の描写に力を入れて素晴らしいものとして表現しつつも相反する芸術としての犬王たちではなく、
単にロックの引き立て役みたいに猿楽を扱っているのは、能楽ファンの人は怒っていいレベル。
能楽=権威で反権威=ロックですが、2023年の基準では既視感の有る曲ばかりであり、
内実はクイーンやジミ・ヘンドリックスをまた別の権威にして縋って盾にしているやり方。
それでいて、新しいロックが古くてカビ臭い猿楽を圧倒するみたいな描き方は、
描きたかったはずの因習打破と最先端芸術への賛美としては説得力不足ではないか?
日本の伝統武道の技術の継承や所作の美しさで惚れ惚れする別のアニメを知っているだけに、
不潔ったらしい汚い歯並びでベトベト糸を引いてる唾液を飛ばしながら絶唱する友有なんか、
かっこいいとか熱さが良いとか思えない、生理的嫌悪感が強めの作画でして、
伝統芸能を軽んじて600年後の時代のロックでイキるやりかたが、
若者キャラの情熱のほとばしり以上に、反権力・反権威のルサンチマンのために、
心身共にみすぼらしく卑なものがただ踊り狂ってるように見えて、
アニメの技術や演出の能力とは別に好きになれないアニメでしたね。
もうね、バイクやタバコや反体制が若者の象徴だった時代の価値観が既に時代遅れで、
おじさんが価値をアップデートしないままに若者を描いても、
ちっとも“新しく”は無いんですよ。
他人と同じことをやって何が楽しい?奇抜なパフォーマンスで魅了させればいい!という、
湯浅監督のアニメづくりそのまんまの思想の犬王と友有は、監督のアバターなのでしょうかね?
時代に抗おうとした挑戦的な芸術の表現者がファンを獲得しながら歴史に埋もれていく様子は、
メジャーに対するインディーズの自己賛美ですよね?
自分のやりたいことだけやる荒々しい作風が持ち味でファンの心を掴んではいますが、
そのうえで他人からの批評の目をやたら気にする。
賞を獲得することで権威に認められたい。これまでの湯浅監督の行動に裏付けられています。
自分の思想に共鳴して感動しろっていうドキュメンタリータッチの映像の物語に、
クリエイターとしての本音が濃く染み込んでいますね。
ストーリーは残酷なシーンもあり露悪かつ、人間描写も雑で深掘りもなくて、
単に自分の好みではないだけですが、個人的には楽しいと思えるドラマが無かったですね。
主人公コンビである犬王と友有ですら、二人の距離感や精神的な変化の過程に焦点がなくて、
もともと、感情移入とは無縁の作風なのでしょうけどね。
まあ、湯浅監督も万人受けを狙って作ってないでしょうし、好きな人だけが楽しめるように、
ご自分の好きなように作ってくださいとしか言いようがないですね。
単純に、音楽と映像をノリで楽しめれば良いだけの作品なんでしょうから、
脳内麻薬を出すには、迫力が段違いの映画館で五感でフルに味わうのが最も適切なのでしょうね。
これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。