てとてと さんの感想・評価
4.4
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
国の対立と未来をラブロマンスに乗せて優しい物語にした感じの117分の良作映画
険悪な二つの国(停戦中)が、約定によりそれぞれ花嫁と花婿を送るが、和平する気が無い両君主が適当に送り、明るみに出たら開戦不可避なので、ニセコイカップルたちが頑張る感じのラブロマンス。
一見ロミジュリだが全然構造が違う。
【良い点】
西アジア?中央アジア?をモチーフにした独自のファンタジー世界観が魅力的。キャラ名含めて良き雰囲気
「アルスラーン戦記」とか「将国のアルタイル」とかが好きな人ならば、世界観と雰囲気の時点で魅力感じる。
金の国(ヒロインの国で経済大国だが水不足)の、イスラム王朝ぽいがエレベーターなどのオーバーテクノロジーなど独自の進化遂げた文明感が素敵。
終盤の王族の秘密通路の空中回廊のギミックは驚かされた。魔法一切無くても独自のファンタジー感出せていた。
キャラデザや物語の雰囲気が童話的な優しさありつつ、国家間の敵対感情に対する共存共栄平和への在り方、50年後まで見据えた長期的ビジョンなど、ダイナミックなテーマも素晴らしい。
それを童話調に簡略化、ラブロマンスで分かり易く親しみ易く描いた。
ふたりの愛が二つの国を結び平和をもたらすお話だけど、理想論だけではない現実的な説得力で共存共栄を示した。
愛するあなたの為に、50年後の繁栄を。視聴後じんわりと感動する。
非常に優しい作品で、少なくとも作中誰も犠牲が出なかった。戦争派の父王ともちゃんと向き合い和解する。
適度にハラハラさせつつ、非の打ちどころの無いハッピーエンド。
適度なシリアスと優しさ朗らかさの配分が理想的、終始心地良く堪能できた。
登場人物が軒並み賢明で有能かつ善良、捨てキャラが誰もいない。
キャラクターの魅力が高く、単純な物語でも飽きさせない。
ナランバヤルは一見頼りないお調子者と思わせて見識の高さと機転叡智が素晴らしく、非常におもしれー男。
何となくヤン・ウェンリーを軟派にした感じの賢者?
ヒロインの姉姫レオポルディーネ(悪役令嬢)や、お飾りのイケメンと思いきや国を動かす切れ者なサラディーンなど、普通の作品ならばありがちな悪役かカマセと思われたキャラたちが軒並み有能。
それにより、展開がスムーズでストレス感じさせない。
有能や知恵者たちがテンポ良くドラマを進行させる。
どのキャラも各々の信念や背負う想いあり、しっかり見せ場もあり確かな存在感ある。
悪役の大臣ですら、水の国侵略は50年後の祖国を想っての策なのと、国王に対する忠誠と感謝の念は真実であろうと思わせる。
目立たないがレオポルディーネの腰巾着的な姉たちも、ちゃんと姉の平和路線理解して従っていたり。
ヒロインのサーラちゃんはおっとりした中にも芯の強さあり、話が進むほどにナランバヤルが彼女の為に国を救おうと思うのも納得の良妻。
ナランバヤルは視聴者目線でもカッコイイ切れ者でサーラちゃんが惹かれるのも納得のイケメン、このふたりの素直なラブコメも大変良かった。
演出や会話劇もドラマチック。特にナランバヤルは賢いので台詞回しが小粋。
作画は派手に動くタイプではないが美術が非常に綺麗。
西アジアモチーフの金の国の高度文明や食事や風俗描写が綺麗で繊細、見ているだけで引き込まれる。
サーラちゃんのキャラデザは萌えないが、ちゃんと可愛いと思わせる丁寧な描写もあり。
声優陣は主役組は素人ながらキャラにちゃんと合っていて問題なし。
脇を実力派で固める良い布陣。
【悪い点】
特に無し。
強いて言えばやや予定調和であまり波乱が無い。
優しい物語の裏腹で、感情揺さぶられるような展開はあまり無くやや物足りない感はある。
【総合評価】9点
決して派手な作品ではないが、非の打ちどころが無い良作。
2023年のアニメ映画は「すずめの戸締り」や「かがみの孤城」も良かったが本作も全くヒケを取らず。
評価は最高でもいい気がする程高いけれど若干地味か?「とても良い」
【余談】
あんまりアニメにリアル持ち込みたくないけれど、ラスタバン三世(サーラの父王)の侵略動機とリアルの侵略指導者が奇しくも重なって見えた。
平和共存の方が実利的にも得策なのはリアルも同じだと思うが一筋縄ではいかない人類の愚かさか。