猫好き さんの感想・評価
3.0
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
誰も欲しがってない物を作ってしまった感がぬぐえない
私はオリジナルアニメに熱中してた人たちより下の世代で、漫画はラーメン屋で、アニメは地方の4時頃の再放送で見てました。でも、実際にリアルタイムで見てた世代の人たちにいろいろ聞かされた話も含めてコメントします
オリジナルのうる星やつらは、視聴率的には原作に忠実だった最初の数クールが一番高かったはずです。でもアニメファンの記憶に残りはじめたのは、映画一作目オンリーユーの前後からだと思います
最初はアニメ一話で原作二話形式でしたが、このペースで話を消費していくと、漫画を追い越してしまうという問題が起こりました。そこで原作一話がアニメの一話になりました。結果、個々のエピソードで原作漫画になかった部分の掘り下げが必要になったり、オリジナルストーリーを追加するために脚本家を追加。また映画の同時作成のために、たくさんのアニメーターが必要になり、そのクリエーター達の管理がゆるくなってしまいます。それが結果として脚本家とアニメータの暴走と言ってもいいくらいにうる星やつらの世界を拡張させていきました
そして、原作者にこれは私のうる星とは違うとまで言わせてしまった映画二作目のビューティフルドリーマーがあってアニメ史に歴史を残す偉大なアニメとして記憶されるに至ったのだと思います
そんな作品を30年以上の時を超えてリブートで、どうなるか期待してました。結果として原作にかなり忠実に作っていたように思えます。実際、声優から作画まで含めてかなり丁寧で、昔懐かしい原作マンガをオリジナルそのままに頑張ってまとめ直した感じですね
でも、それが本当に良かったのは疑問です
もちろん、高橋留美子のマンガですから、昭和の時代には面白かったはずです。でも、それを今の時代にそのままやって受けるのか、と言われるとやはり設定が古臭く感じます。細かいところから言うと生活スタイル(スマホvs家電話)や、キャラ、ギャグのツボ等の違いがありますが、それよりも大きなものがあります
お話の基本は日本伝統のクズ亭主+押しかけ女房です。それ自体は今でも人気はあります。最近のアニメで思いつくクズ亭主はこのすばのカズマであたる以上のクズですが、その方向性が随分ちがうんですよね
昭和のあたるの願望はハーレムで、女の子には積極的に声をかけ、フラれてもフラれてもすぐ次を目指してアタック。でも、結局ハーレムはできずラムだけがなぜか好きでいてくれる、心を支えてくれる花があるからこそもっと前を目指して頑張る的なものです
これに対し、昨今のクズ亭主は、陰キャで女の子と自分からは話もできないのが、美人の女の子が些細なきっかけで自分と一緒にいてくれる話が主流。さらになんの努力もなしでチート能力を手に入れ、複数の女の子に向こうから言い寄られて、誰か一人を決めることもできずゆるいハーレムコミュニティになっていく。とにかく流行りのなろう物なんかほぼすべてそんな話で、自己表現が苦手なくせに承認欲求だけは強い現代少年たちはそんな話が欲しいのです
つまりは、原作自体が現状の物語世界のトレンドと大きくかけ離れてしまってて受ける要素がほとんどなく、作画や演出でどうなるものでもないってことかと思います
じゃぁ、昭和の時代のオリジナルアニメファンがノスタルジアとして消費してくれるかと言われると、これも難しいでしょう。お金がある世代だから記念として板は買ってくれるだろうけど、このリメイクを本当に愛してくれるかと言うとどうでしょうか?
当時のうる星やつらは、エピソードによってかなりの出来不出来のむらがあるのですが、青春時代の思い出補正ですべてがビューティフルドリーマーになってしまってる人たちを相手にしたら何を見せても無駄でしょう。なにより、昭和のアニメのクリエーター達が勝手にやっていた原作に存在しない部分で徹底的に比較されてしまうのが目に見えてます
結果として、アニメ単体としての出来は悪くはなかったものの、原作に忠実に作ってしまったがために、誰も欲しがっていない物に仕上がった感がぬぐえない作品になってしまったと思います