てとてと さんの感想・評価
4.5
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
ショッキングな展開な割に綺麗に収まる、恋愛ゲーム原作青春劇の傑作
不幸なトラウマや家庭の闇を抱える少年少女たちの青春劇。
恋愛ゲーム原作で、動画工房初のTVアニメ作品。
※作品データベース様より転載
【良い点】
過去や現在に心の傷を抱える少年少女たちの友情や恋心、絆の物語として非常に完成度が高い。
6話までの学園青春劇がベタながら楽し気で良き関係を見せつつ、少しずつ丁寧に伏線を張り、シリアスが加速する後半以降綺麗に回収。
7話以降は衝撃展開の連続で引き込まれる。衝撃展開でありつつ、序盤からの丁寧な伏線が活き唐突感は少ない。
7話以降は本格的に重い話になるも、真摯に向き合っており、徒に不快感煽っていない。ちゃんと価値のあるシリアス。
前半の他愛の無い日常系の輝きを後半の高いドラマ性に活かせている他、話の密度が濃く、各々1〜2話で一気呵成に進行してダレない。
この手のシリアス作品にありがちな、無為に長引かせて不快感が尾を引くのではなく、濃密なドラマのまま疾走するのが良かった。
よって重苦しい作風の割には、不快なストレスを感じる前にカタルシスに持っていけている良脚本。
最終話のオチは急さは否めないものの、それまでの積み重ねが結実してハッピーエンドに説得力あり後味は良い。
彼らの心の傷や深刻な問題の本質は既にクリア出来ており、ここで時間を飛ばしても、ポジティブな結末だけ示せば十分であろう。
例えば少女ふたりが和解する直接的描写は無いが、文脈から十分察せられる、奥ゆかしい表現。
シリアスが各々のトラウマや家庭問題であり、少年少女同士のギスギスはほぼ無縁なのも清々しい。
序盤のデレる前のナナカと、後半アサミとシュリもあるけれど、無為にギスギスさせない。
男子ふたり特にシュウスケのここ一番でのドラマチックなセリフも大いに盛り上がった。
また、桜の花びらや、月明かりなど、ここ一番でドラマチックさをあざとく盛り上げる演出も上手い。
ヒロインたちが軒並み可愛いく魅力的。捨てキャラが誰もいない。
悲劇性の高いナナカとシュリもさることながら、生意気小学生ヒナコちゃん萌え。
ヒナコちゃん回も彼女の寂しさや幼い恋心に真摯に向き合う良エピソード。
アサミちゃんはとんでもない女だけど、即告白したり、2つの善行で一気に悪印象消してくる。
11話の切々とした告白は切なく、犯した過ちはともかく、愛の形として否定はしたくないと思った。
本心隠して振舞うのが得意ということも踏まえ、2回目以降の視聴で(実はこの時点からドロドロしてたのか!)と改めて見所になっている。
そして唯一暗い傷を持たぬ天真爛漫なアオイちゃんの存在感も大切。
巨乳眼鏡そして金朋ボイスが印象的なアオイちゃんの明るさは、暗くなりがちな本作の癒しだった。
12話のさりげない優しさ、奥ゆかしい想いの強さは、本筋のドラマに関われずとも、確かにヒロインの一人であった。
何気にアオイちゃんの母親も素敵、他が毒親ばかりな中で、アオイちゃんは愛されて育ったんだな…と。
サナ憧れのお姉さんであるユズキ先生も魅力的。彼女との関りでサナが成長し、ナナカを救える男に成長する過程も丁寧だった。
サナから見たら大人のお姉さんなユズキ先生も、まだ25歳と大人としては若い。
先生がより上の汚い大人たちから生徒を守れぬ葛藤もまた見所だった。
サナとナナカの幼馴染同士の王道なラブロマンスもかなり良いが、シュウスケとシュリのまさかの姉弟ヨスガ関係も尊し。
毒親に虐げられ涙流す姉に「今度は俺が姉貴の手を引いてやる!」→ぱっと嬉しそうなシュリちゃん、素晴らしい。
サナとシュウスケの男子同士の友情という軸も素晴らしかった。
作画は十分に綺麗、シュリちゃんとヒナコちゃんが特に好み。楽曲も良い。
OPの学生ライブは詐欺なんだけど、これもあり得た青春の一幕として印象は良かった。
声優陣は金朋ボイスが浮いているけれど、唯一闇から無縁という立ち位置に合っているし可愛いのでよし。
ヒナコちゃんはやや拙く聴こえるけれど、これはこれで萌えるのであり。(好意的)
子安武人氏の若い少年弟キャラも(2021年から振り返ると)新鮮味あり注目。
【悪い点】
汚い大人に虐げられる展開が続くので、やはり視聴に精神力が要る。
【良い点ではないが…】
汚い大人に因果応報な描写が無いので溜飲は下がらず。
とはいえ、ここはどうでも良いともいえる。
【総合評価】9点
重いのに不快感よりも絆の尊さ清々しさが勝る良作。
毒親作品は嫌いなのが多いが本作は例外的に大好き。
2007年作品だと本作と「ムシウタ」には特別な思い入れが…
評価は最高は付けづらいが「とても良い」
【余談?】
なんというか、大人も必死に生きてるのがこの年になると分からなくもないので…
ナナカの両親も、双子の父の悪徳議員や後妻も、ヒナコちゃんほったらかしの母親も、凶行に及んだ老婆も、
子供悲しませるダメ大人なのは間違いが無いけれど、皆悲しみ背負って生きてきたんだろうなぁ…と感情移入してしまったり。
その視点からも、10年後にポジティブに生きられた主人公たちの絆は尊いなぁと。
1話アオイちゃんの父「大家と店子は親子も同然」ジェネレイターガウル難民救済アニメでもあった。(1998年)
追記。
2022冬の「どぅー・いっと・ゆあせるふ」のタイトルから真っ先に本作を連想した。