waon.n さんの感想・評価
4.6
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
さんか さん家の れあ さんは、ちょっと冷たい
【First】
『さんかれあ』タイトルからは内容が全く想像ができない。昨今の異世界ものって長文タイトルでちょっと…って思うけれど、観る前にどんなものかそうぞうできるっていうのはやっぱり長所ではあるのかなって思いますね。良いとは思っていませんが…。
『さんかれあ』のタイトルはヒロインの名前です。
黒のロングヘア―を靡かせ、少し天然なお嬢様は好奇心旺盛。そんなヒロインとゾンビ属性大好きな主人公が出会うところから物語は始まる。
タイトル名だけは知っていていつか観てみようと思っていた作品で、特に情報がないまま、なんとなく見始めたわけだけれど、1~2話でだいたい気づく…シャフトっぽいコンテの切り方とか演出とかだなって思ってEDのクレジット確認してみたら制作会社はスタジオディーンで、気のせいかと思っておりましたが、3話まで一気に見たところで調べずにはいられない。
どうやら監督がシャフト系列の仕事をしていた…のでその時の影響をバリバリ感じずにはいられませんでした。とはいえ、シャフトほどの癖はなく程よいチューニングに感じます。
あと、キャラクターデザイン好きすぎるし、nano.RIPEも好きなんで当時に観ていなかったことを少し後悔し始めている次第です。
とにかく3話目までは観てみると良いです。きっと今の私と同じようにゾンビに恋する5秒前状態になること間違いなし!
【Staff】
原作 はっとりみつる
監督 畠山守(小俣真一)
キャラクターデザイン 坂井 久太
総作画監督 坂井 久太
日向正樹
制作会社 スタジオディーン
はっとりみつるさんの独特な絵をキャラデザの坂井さんが上手くデザインに起していて、それをこれまでシャフトで絵コンテと演出をやってきた畠山さんが作品の雰囲気に合わせてチューニングしているように感じました。キャラクターのデザインと世界観を見事にマッチさせてあります。
本当にこれマリアージュです。
プロデューサーがこれを狙っていたとしたらスゴイです。制作Pの人がクレジットで良く分からなかったので、名前をピックアップできませんでしたがいい仕事です。
少し作品と話がズレますが、シャフトといえば、物語シリーズでその作者と言えば、【西尾維新さん】。めっちゃ多作な方ですが、その中で『少女不十分』って本が出版されています。その漫画版を描いているのがこのはっとりみつるさんでした。本の方は以前読んだことがありまして、はっとりみつるさんを調べた時にこれを発見し、「あぁ、うん、そりゃ合うよね」って納得でした。
ちらっと漫画の表紙を確認して気づいたらAmazonでぽちっとしていました。気になる方は調べてみると良いかも…? 良いモノになっているかは読んでみないと分からないのであしからず。
【Review】
『三島由紀夫VS東大全共闘 50年目の真実』の中でフランスの哲学者ジャン=ポール・サルトルの著書から引用した言葉がありまして、どういうものかというと「一番猥褻なものは、縛られた女の身体だ」という話をしていました。
唐突になんの話をしてるんだこいつって感じだと思います。(私もどうしてこの切り口からreviewが始まってるんだと混乱中)
続けます。
少し言い換えれば、【縛られた異性】→【自由を奪っている他者】=【他者の自由を奪っている自己】とも言えるかと思います。
今回の作品を観た人はこれが誰と誰の関係を示しているかすぐにピンとくるのではないかと思います。
この作品の面白いのは、2重にしてこの構造が作られている点にあるかと思います。
れあさんとお父さん。れあさんと主人公。
れあさんを中心とした三角関係になっており、れあさんの主体性の奪い合いにもなっています。
主人公がなぜれあさんに惹かれるか、そして、なぜれあさんは主人公に思いを寄せているように見えるのか。
それはこの【誰に縛られたか】がポイント。
さんかさん家のれあさんは言う、「自由になりたい」と。
父親からの解放を望んでいるが、しかし実は主人公という存在に依存しなければ、その自由は担保されないという点で自由はあり得ないという構造になってしまっているんです。
この一見可哀想に見えるヒロインを私達視聴者が萌えてしまうのか、それはもしかしたら、キャラクターの持つポジティブさと儚さの相反する性質からくるものなのかもしれないですが、その前に本質的に縛られたれあさんに対するエロティシズムにやられてしまっているのかもしれない。
その反証として母親は縛られず、放置され、相手にされない。このキャラが配置されているのはさんかさん家のれあさんの縛られをより浮き彫りにするための道具として機能していますね。だからエロい身体にデザインされているのかもしれないですな。
さてゾンビアニメと言えば、『HOTD』『これはゾンビですかあ?』『がっこうぐらし!』『ゾンビランドサガ』って思いつくだけで何作品かあるっていうそこそこに人気のジャンルですよね。
また、ゾンビと吸血鬼ってかなり近い性質があり、こちらのモチーフはもう数えきれないほどあります。
ただ、主体性があるのが吸血鬼で、主体性がないのがゾンビだとすると、この作品の最大の魅力、さんかさん家のれあさんをエロティックにするというのはゾンビである必要性があった…っていう事ですね!(強引)
ゾンビって映画とかも含めるとこのジャンルは常にプレイヤー側とエネミーの対立構造が否応なしにあって、逃げるなり戦うなりするっていう話がメインでした。
そんな中プレイヤー側がゾンビになってしまってどうしよう!っていう話が出てきたのがこの『さんかれあ』や『これはゾンビですか?』『ゾンビランドサガ』だったりしますね。正直この設計面白いです。
上記の当作品以外の2作品はかなりファンタジーよりでありまして、かなり雑なゾンビ設定になっていますが、この作品においては、ツッコミどころもありますが、死体としてちゃんと扱っている点は良いですね。
リアリティラインがその辺に設定してあるからギリギリでキャラの関係性に説得力が…ん~ギリギリ成り立っているのかなっていう次第です。
冷静に終わってレビューしてみるとちょっと…って思う所も出てきますが、観てる時に気になってなければもう関係ないっすっていう気持ちで見ないと全部つまんなくなっちゃいますよね!(自分に向けて)
作画というか演出面に特徴がかなりありますね。
制作会社がスタジオディーンとなっていますが、かなり監督の特色が出ているようで、冒頭にも書きましたが、シャフトの影響が強いですね。
監督が『まどかマギカ』の絵コンテ、演出を担当していたりしている影響が出ています。恐らく自分で切っていない絵コンテもかなり修正してチューニングされているんじゃないかと思われます。
あの独特のカットの切り方は単発で担当した人では出せないものに感じますね。要するに【新房昭之さん】の影を感じるので、化物語などの雰囲気も感じてしまいます。っていう感じで【西尾維新さん】に繋がりました。
とはいえ、あれほど強烈に異世界を創っているっていうことでもありません。なんせこの世界には怪異も魔法使いも魔女も出てこないのです。そう意識したのかは分かりませんが、リアリティラインを背景美術の中でも統一されているように感じました。
なので、結構この世界に入り込んで物語を楽しむことができたなと個人的には思っています。
ちなみに、アニメ未放送分が2話数あり、全14話です。
だからといって12話で全然終わってないじゃんっていうのが解消されるという事もなく、続きが気になって仕方ありません。
ここから先は漫画を読むしかないと思われます。ここまで時間が経ったらアニメ二期があるはずもなく…出版社で『さんかれあ』の特装版が出るとかになって、ついでに新刊が発売されるとかだったら分からんこともないですが…ないでしょう。
【あとに】
レビューを書いてみたら、自分の変態性をさらけ出していた…なんとも恥ずかしい。
AmazonプライムやNETFLIXに『三島由紀夫VS東大全共闘 50年目の真実』があります。三島作品が好きな方はチェックしてみると良いかも? ちなみにサルトルの事は全然知りません。
この頃やもう少し前くらいの文豪たちは人間とセットで本を読むと本当に面白くなりますよね。
アニメと関係なくなりましたが、ちょっと面白い視点でレビューできたんじゃないかな。書いていて途中で少し笑っていた自分に気が付いて気持ち悪し。